空調の設計図を見ていると室内機から室外機までが遠すぎる図面がしばしばあります。
機種によって室外機までの距離は決まっていて遠すぎると施工不可能の時があります。
また、これだけビジネスの先行きが不透明な状況だと現在どんなに利益が出ていても設備投資は極力抑えようとするお客様がほとんどです。空調設備について困った時の対処法とコストダウン提案について少し考えてみます。

家庭用ルームエアコンの配管延長は20mまで
高付加価値機種やハウジングエアコンなどは30m以上というものもありますが
家庭用ルームエアコンと言えば壁掛形、そして冷媒管延長は20mまでという機種がほとんどです。
正直言って制限された長さを多少超えても能力は出ます。
制限の倍の長さを延長した場合は話は別です、規定の能力は期待できません。
では、制限をちょっと超えて何が問題かと言うと何か不具合があった場合のメーカー保証が効かなくなることです。
冷媒の長さは関係ないのではないかと思われるトラブルでも、決まり事を無視した場合はなんやかんや言われて施工側の責任にされるパターンが多いのでメーカーが決めていることはできる限り守らなければなりません。
話がやや脱線しましたが、では制限長さを超えた冷媒配管長で設計されていた場合どうするか?
まず、考えるのは室外機をもっと近くに置くことができないか、ですが物件によってはどうしても無理ということもあります。
例えば設計図書に広めの事務所にダイキンの壁掛ルームエアコンS40XTFXPが選定されていたとします。冷媒管長の制限は20mです。

しかし図面を見る限り室外機置場がどう見ても室内機から40m程度離れている…
スケールをあてて確認してみても40m以上ある…これは設計ミスだ!というのは簡単ですが施工側として解決案を提示すれば仕事全体もスムーズに進むし追加金額もいただけるかも…。
ということでダイキンの店舗オフィス用エアコンSZRA40BFVへの変更を提案します。もちろん配管延長50mまでOKです!

家庭用ルームエアコンと見た目はほとんど変わりません。しかし備わっている機能が違います。
同じ壁掛けの機種でも室外機置場選定の自由度はかなり上がります。
ただし値段は店舗オフィス用の方がやや高額となる場合が多いと思います。
また電源ですがルームエアコンの場合、室内機側から電源を取る場合が多いですが店舗オフィス用は室外機から電源送りする場合が多いので電気の施工業者さんとも工事前に打合せをしてお互いに確認しておいた方がよいです。
室外機置場が狭くてレイアウトできない場合は
広めの店舗や事務所に複数台、例えば10台などの空調機の設置をしたいけど室外機置場が限られている場合、
マルチエアコンを選定すれば室外機は1台にまとめることが可能です。
また、配管延長距離もこの機種が最も長くとることができます。
室外機から最遠の室内機までダイキン、三菱電機など90mまで施工可能、高低差は50mまで対応できます。

このマルチエアコンの中でもさらにコンパクトな室外機として販売されているのがダイキンのmachiマルチや三菱電機のシティマルチSです。


通常のマルチエアコンの室外機がマッシブな形状をしているのに対してmachiマルチはスリムな形状をしているので狭小スペースにも納めることができます。

こちらもスリムな形状で狭小スペースに納まるのが売りですがダイキンのmachiマルチより能力選定のレパートリーが少ないのが難点
どちらのメーカーも同じようなラインナップだろうかと思いきや三菱電機が8.0kwから16.0kwまでの能力なのに対して
ダイキンは11.2kw〜33.5kwの空調能力までの機種が用意されています。
けっこう22.4kw〜33.5kwの室外機を選定する場面はあります。
ダイキンのmachiマルチの方が選択の幅が広いので正直、重宝しています。
冷暖同時仕様は2管式の三菱電機でコストダウン!
この仕事をするようになって初めて知りましたが、この世の中には冷房と暖房を同時にできる空調機が存在します。
どういうこと?と思った方のために簡単に説明するとカラオケ屋さんなど小部屋がたくさんある業態の場合
ある個室では若者が熱唱して汗をかいているので冷房運転をしているけどある部屋では年配の方がゆっくり過ごしていてちょっと肌寒く感じるから暖房運転をしている

このような使い方が可能な空調機になります。
通常の空調機を冷暖切替と呼ぶのに対して冷暖同時とか冷暖フリーと呼んでいます。
冷暖切替の室外機から延長する冷媒管はガス管と液管の2管式で配管します。
これに対してほとんどのメーカーの冷暖同時の室外機からは高圧液管と低圧ガス管そして高圧ガス管の3管式で配管します。
しかし三菱電機の冷暖同時だけは業界で唯一2管式です。


ダイキンの配管模式図の赤丸で囲った部分、ここは室外機から室内の冷媒の流れを制御するBSユニットまでのメイン管です。
3管式になっています。
この部分、図面では短く見えますが室外機まで50m以上離れている場合もあります。
そのメイン管の部分が下の三菱電機の配管模式図では2管式になっているのがわかります。
配管が1本少ないだけでも以外とコストダウンの効果はあり、メイン管50mの延長だとしたら概算で20万円程度のコストダウンにはなります。
たった20万円と思うかどうかは人それぞれですが、数十万でもお客様にとっては大事なお金ですから同じスペックであれば少しでも安くできる方を選ぶべきです。
なので私自身が空調設備設計をしていて冷暖同時の機種を選ぶ場合、メーカー指定がなければ躊躇なく三菱電機をスペックしています。
蛇足ですが業務用エアコンについてはメンテナンスの対応が一番よいのはやはりダイキンです、その次が三菱電機です。
その他のメーカーのメンテンスの対応はあまり良くないという印象を私は持っています。
まず、現場にメーカーの人間が確認しに来るまでに時間がかかり過ぎます。
メンテナンスに割くことのできる人員が多くとれないのかもしれません。
ということで各メーカーの長所を確認して設計や施工に活かしてみてください!