前回は受水槽のサイズについて話しましたが、今回は高置水槽についてです。
高置水槽のサイズや水槽に水を送る揚水ポンプの揚程についても検討してみます。

高置水槽の有効容量
揚水ポンプと高置水槽の有効容量のは次式の関係があります。
Ve≧(Qp-Qpu)・T1+Qpu・T2
Ve:高置水槽の有効容量[L]
Qp:ピーク時予想給水量 [L/min]
Qpu:揚水ポンプの揚水量[L/min]
T1:ピークの継続時間[min]15~30分
T2:揚水ポンプの最短運転時間[min]10〜15分
一般に高置水槽容量Veは時間平均給水量の1時間分としています。
下の図のように、高置水槽の低水位部分は (Qp-Qpu)・T1
なのでピーク時に水槽が空にならないような考え方となっています。

また、低水位から高水位の間の水量は電極によるポンプの発停の間に揚水ポンプで汲み上げる水量を意味します。
揚水ポンプの揚程
揚水ポンプの揚程は次式となります。
H≧H1+H2+V2/2g
H:揚水ポンプの揚程[m]
H1:揚水ポンプの吸水面から揚水管頂部までの実高さ
H2:揚水管路における継手部などの摩擦損失水頭[m]
V2/2g:揚水管の吐き出し口における速度水頭[m]
g:重力加速[m/S2]
実際に数値を入れて計算してみます。
1日の水使用量120m3=120000L/日で使用時間9時間、ピークの継続時間は30分、揚水ポンプの最短運転継続時間は15分とします。
時間最大予想流量を時間平均流量の2倍として
120000/9 × 2=26600[L/h]
時間最大予想流量=揚水ポンプの揚水量として
Qpu=26600[L/h]=443.5[L/min]
ピーク時予想給水量Qpは時間最大予想流量を時間平均流量の3倍として
Qp=120000/9 × 3=39900[L/h]=665[L/min]
このとき高置水槽容量Veを求めるには
Ve≧(Qp-Qpu)・T1+Qpu・T2 に上記の数値を代入していきます。
Ve≧(665-443.5)×30+443.5×15=13298[L]=13.3[m3]
また、受水槽から高置水槽までの高さを50m、管路の長さを60m摩擦損失は配管長の2倍と仮定して、配管内流速1.5m/s 単位当たり摩擦損失0.34kPa/mの場合の揚水ポンプの揚程Hを計算すると
H≧H1+H2+V2/2g より
H≧50+60×0.34×2/9.8+1.5×1.5×/(2×9.8)=54.2[m]
※V2/2g の速度水頭部分は省略しても差支えはありません。
最近は高置水槽で計画する案件は少ない
私の知る限りでは、高置水槽で計画する新規案件はあまりないという印象です。
小規模から中規模の建築物の場合、まず検討されるのは増圧ポンプです。
増圧ポンプを設置するのがコスト面においても施工的にもメリットがあります。
わざわざ受水槽室を計画する必要もなければ、受水槽清掃などのわずらわしいメンテナンスもなくなります。
階段の下のスペースや外部の隣地との隙間などに増圧ポンプは設置できてしまうので計画の幅が広がります。
ある程度大きいマンションなどは地下ピット内に受水槽を設置してそこから加圧ポンプで直送するという方法が多いのではないでしょうか。
私の場合、店舗工事がメインであまり規模の大きい建築に関わっていないためそのあたりの事情はもっとわかる方がいると思いますので別途、確認していただければと思います!