店舗工事においては店内の排水管を新規で配管して既存排水管の立ち上がりなどへ接続することがよくあります。
新築工事の場合はそれなりに排水管サイズも考慮された計画がされているのですが、築何十年かの物件で立ち上がっている既存排水管を利用しようとする場合、そのサイズが細い場合がかなりあります。
この排水管使えますか、と現場調査依頼いただいたお客様から聞かれたりするのですがサイズによっては即答で「使えません」と答えざるを得ません。
今回のテーマは排水管サイズの判断基準としての排水負荷計算についてです。
簡単なモデルで計算してみる
まずは教科書にならって排水負荷単位数から排水管サイズを選定していく方法を以下に示します。

ここでは、図のような衛生器具が配置されたフロアが10フロアの10階建てと仮定して計算していきます。
表1:器具排水負荷単位数

表2:排水枝管および排水立管の許容最大器具排水負荷単位数

①の枝管について、表1より小便器の負荷単位数は4で2台設置されているので 4×2=8
表2より50Aだと負荷単位数6まで、65Aで12まで許容できるので65Aを選定します。
②の枝管については同様に大便器(公衆用)で6、2台なので12ですが大便器の接続が75Aなのでそれより細い管は使用しないので75Aで選定することになります。
③については洗面器の負荷単位数1より2台で2なので40Aとなります。
④について負荷単位数合計22になるので100Aとなります。
⑤について負荷単位数合計23.5になるので100Aとなります。
⑥について負荷単位数合計22+23.5=45.5なので100Aとなります。
⑦立管について45.5の排水負荷単位数のフロアが10フロアあるので合計で455となります。
表2の右側の3階を超える欄を確認すると立管100Aで500まで許容できるので立管は100Aを選定します。
また1フロアあたり45.5で1階分の負荷単位数合計が90を超えていないことも確認しておく必要があります(表2の一番右の欄を確認)。
最後に表3で排水横主管、敷地内への引き込み管口径について確認しておきます。
表3 排水横主管および敷地排水管に接続可能な許容最大器具排水負荷単位数

排水負荷単位数合計455より勾配1/100とるものとして150Aで700まで許容可能なので引き込み口径は150Aとします。
実際の設計をする場合は負荷単位数による計算よりも少し安全をみている部分があります
排水モデル図の②の枝管については排水負荷単位数をもとにした考え方では75Aにしました。
しかし、実際に設計する場合は大便器を2台以上受け持つ排水枝管については100Aで描いてしまいます。
とくに店舗の設備設計においては大便器2台が合流するのであれば、その枝管は100Aにしておいた方がよいです。
飲食店においてですが、事務所に比較して使用頻度が高くなり詰まりなどのトラブルの頻度も多いので。
店舗のトイレ詰まりメンテナンスで呼ばれて対応したことも何度かありますが、携帯電話はよく詰まっていることありますね‥ガラケーが多いイメージです。
あとはメガネもありました、まあこれらは配管径がどうこうの話ではなく大便器のトラップに引っかかっているのですが。
また、ここ最近は節水型の便器が主流ですがこれも排水の詰まりの一つの原因になっていますね、メーカーに言っても認めてはくれませんが確実にこのトラブルは増えています。
使用したティッシュなどの固形物の量に対して節水型の4Lや5Lという水量が少ないため固形物が搬送されずに配管の途中で留まってしまうという現象が起きています。
配管の横引き長さが長いとこのトラブルが起きる可能性は上がるのでなるべく横引きを短くできればよいですが、なかなかそうもいかない現場も多いです。
お客様の使用の仕方として、何回か流すようにしていただくという場合もあります、これはもう頭を下げてお願いをしている感じの最後の手段的な話になります。
あとは、節水型便器とは言ってもほとんどの機種で流量調整はある程度できるので7Lや8Lまで設定を変えて流量を増やすことも可能です。
これで解決してクレームが止んだ現場もあるので試してみていただければと思います!