建築設備の仕事をしていると、いろいろなトラブルに出くわすのですが騒音に関するトラブルは解決が難しい問題のひとつです。
なぜ難しいかというと、うるさいかうるさくないかは人の感覚によるものであることがひとつの理由としてあげられます。
また、どこからクレームが来るか予想しづらいということもあります。
施工した物件の向かいのマンションの505号室からクレームが入ったけど隣りの504や506号室からはクレームなしというようなことが普通におきます。
おきている現象を数量としてとらえてどこまでの数値に到達すればよしとするか模索するというのが解決のひとつの方法としてよいのではないでしょうか。

騒音レベルとは
例えば駅のホームでの案内アナウンスは利用者にとって聞き取らなければならない必要な音です。
それ以外の電車走行時のレールがきしむ音などは必要な音を聞き取りにくくする邪魔な音です。
これらの必要な音以外の不快な音や邪魔な音を騒音と呼んでいます。
騒音の程度を表現するために使用するのが騒音レベルですが、騒音計で音を測定するときに周波数補正回路をA特性にして得られるdB数のことです。

騒音レベルは人の耳に聞こえる最小音の2×10-5[N/m2]を基準にしています。
人間の耳は蚊の羽音からジェット機のエンジン音まで幅広い音を聞き取って認識することができます。
蚊の羽音とジェット機のエンジン音の音圧の差は前者が0.00002[N/m2]に対し後者が20[N/m2]と差が大きすぎ、そのままの数値を扱って比較することは不便なため騒音レベルは対数を用いた表現となっています。
例えば100[dB]と60[dB]は数値としては40[dB]の差ですが音の強さとしては10の4乗つまり10000倍の差となります。
合成音の計算
2台のファンが同じ場所に設置されてる場合などにその合成音を知る必要があります。
例えば75[dB]のファンと72[dB]のファンが設置されているとして単純にこの騒音値を足し算すればよいわけではありません。
騒音値の合成は下式にあてはめて求めます。
L=10log10(10L1/10+10L2/10)
L:合成騒音[dB]
L1 ,L2:各ファンの騒音値[dB]
ファン1の騒音値L1=75[dB] ファン2がL2=72[dB]のの合成音を求めたい場合、式に数値を代入すると
L=10log10(1075/10+1072/10)
となります。
手計算は無理なのでExeleで計算を進めます。
指数計算はPOWER、log10底の対数計算はLOG10をセルに入力すればできますので試してみてください。
1075/10=107.5=31622776
1072/10=107.2=15848931
上記合計 1075/10+1072/10=47471708
L=10log10(47471708)
L=76.76[dB]

ファンが3台以上の場合は2台ずつ大きい方から計算していきます、例えばファン3がL3=70[dB]であれば上の計算で求めたL1とL2の合成音76.76[dB]をまた上式に代入
L=10log10(1076.76/10+1070/10)
を計算して求めることになります。
実用上の合成と分解(暗騒音との)の略算
合成騒音の略算としては2つの騒音値の差をとってその差に応じて下に示した表の数値を大きい方の騒音値に加算します。

75[dB]と72[dB]の合成は差が3[dB]なので表から加算値は2[dB]と読み取れます。
よって略算値は 75+2=77[dB] となります。
また、2台のファンが同じ騒音値の場合はレベル差0ということで、表から加算値は3と読み取れます。
同じレベルの騒音値のものが2台並ぶ場合、その合成音は3[dB]アップすると覚えておくとよいです。
また、騒音値を計測するときには周囲の音も影響します。
ファンが運転していない時の周囲の騒音を暗騒音と呼んでいますが暗騒音と計測した騒音の差から対象物の騒音値を簡略に算出することができます。


計測した騒音値が64[dB]でファンが止まった場合の暗騒音が60[dB]の場合は差が4[dB]なので表から補正値-2[dB]と読み取れます。
よってファンの騒音値は 64-2=62[dB] と概算されます。