騒音もかなり奥が深いというかわかりにくいというか、どこまで勉強すればいいのかわからなくなりますが今回は距離減衰について。
騒音源となるファンや室外機の近くにいるとかなりうるさく感じることがあります。
メーカーのカタログに騒音値が掲載されていますが、マルチの室外機などは意外と騒音が大きく、音圧レベルで70dB前後の値、最近は音響パワーレベルと呼ばれる数値を掲載しているメーカーが多いですがこの場合は機種によって80dB超えの数値が記載されています。
室外機などを設置したその近くに民家がある場合、問題になる確率はかなり高いです。
生活している場にそれまで感じたことのない騒音が響いてきたらクレームになるのはあたりまえと言えばあたりまえです。
しかし騒音源から遠くに離れれば離れるほど音も小さく感じるようになります。
騒音源から距離をとれば問題にならない可能性があるので、騒音が大きい室外機やファンはあらかじめ屋上など人が生活している場から離れた位置での設置を考えなければなりません。

距離減衰を計算してみる
空調機のカタログなどに掲載されている騒音値をもとに、どれくらいの距離の時にどれくらいの騒音値になるか距離減衰を考慮した騒音値の概算を計算によって求めることができます。
設計段階や騒音対策計画で騒音値の検討をするために使うことができます。
距離減衰を考慮した騒音値は下式により求めます。
SPL2=SPL1-20log10(r2/r1)
SPL2:距離減衰を考慮した騒音値[dB]
SPL1:音源から1mなど任意の距離で計測した騒音値[dB]
r1:騒音源から騒音測定位置までの距離[m]
r2:騒音源から騒音値を求めたい測定位置までの距離[m]

カタログで調べた音圧レベルが75dB、測定は音源から1mの位置の場合25m離れた位置での騒音値概算を計算してみます。
この場合 r1=1.0[m] 、 r2=25[m] です。
上式に代入すると
SPL2=SPL1-20log10(25/1)
=75-20×1.4 =75-28
=47[dB]
計算結果では、r2=25mの距離において騒音値は47[dB]まで落ちることがわかります。
3台以上の騒音値を合成
室外機が3台以上設置されていて測定点からそれぞれ異なる距離に設置されている場合を考えてみます。

上記の図のようなイメージの騒音値の合成値は下式で求めます。
SPL2(合成値)=10log10(Σ10(SPL2/10))
音源1の騒音値 SPL2-1 40dB
音源2の騒音値 SPL2-2 69dB
音源3の騒音値 SPL2-3 43dB
音源4の騒音値 SPL2-4 55dB
音源5の騒音値 SPL2-5 42dB とした場合のSPL2合成値の計算をします。
まずΣ10(SPL2/10)のそれぞれの値を算出します。
Σ10(SPL2/10)=10(SPL2-1/10)+10(SPL2-2/10)+10(SPL2-3/10) +10(SPL2-4/10)+10(SPL2-5/10)
=10(40/10)+10(69/10)+10(43/10)+10(55/10)+10(42/10)
=100000+7943282+19952+316228+15848
=8305312
上記をSPL2(合成値)=10log10(Σ10(SPL2/10))へ代入して
SPL2(合成値)=10log10(8305312)
=10×6.92=69.2[dB]
手計算ではこの計算は無理なのでExcelの関数計算LOG10やPOWERを利用してみてください。
この計算値ですが概算ということで実際に測定したら全く違うのではないかと思っていたのですが意外と実測値が近い値になりびっくりすることがあります。
騒音の規制値は地域によって違う
騒音の規制値はその地域によって違います。
住居専用の地域と商業地域では商業地域の方が規制は緩くなります。
また昼間よりも夜間のほうが規制値は厳しくなります。
騒音の規制基準について参考の表を抜粋したものが以下です。

室外機やファンの騒音に対して規制値が厳しくクリアするのが困難な場合があります。
防音壁を周囲に設置したり大掛かりな対策が必要になることもあります。
特に夜間の数値でひっかかってしまうことが多いですが空調機には夜間静音モードがついている機種がほとんどで、これをタイマー設定することによって夜間の規制値をクリアできることもあります。
いろいろ工夫して、できるだけ低コストで規制値をクリアするにはどうすればよいか考えてみましょう!