設備に関する仕事をしていると、メンテナンスの仕事もかなり舞い込んできます。
配管から水が漏れた、空調の冷媒が漏洩して暖房が効かない、など日々いろいろな話があります。
全ての依頼に私が対応することはできないので業者さんに対応していただくことが大半ですが、たまにちょっとこれは自分も見に行かないとだめだなと思えるようなシャレにならない事態もあり悲惨な状況を目の当たりにすることもあるわけですが。
配管からの漏洩についてもさまざまな原因がありますが、その中のいくつかについて考察していきたいと思います。

ソルベントクラックは意外とよくある
ソルベントクラックという言葉、設備屋さんであればかなりの方が聞いたことがあるかと思います。
塩ビ管などの樹脂管で起きるヒビ割れのことなのですが、塩ビ管の接着剤を多く塗りすぎた状態でかつ配管内にその接着剤が気化した状態のものが漂い続けると塩ビ管自体を劣化させてしまいビビ割れを発生させることがあります。
このように薬品などの影響で樹脂管に亀裂がはいるような現象をソルベントクラックと呼んでいます。
過去にいくつかこのソルベントクラックが起きた現場がありました、写真も撮ったのですが自分の手元に残っているものがない…のでクボタケミックスのHPから抜粋して紹介させていただきます。

私自身が経験したソルベントクラックの例は、接着剤の塗りすぎというものではありませんでした。
樹脂配管をシンダー内に埋設した結果、コンクリートがアルカリ性なのでその影響で劣化して割れてしまった例がひとつです。
ちなみに割れたのはポリエチレン管の継手部分です。
メーカーはどこか言いませんが、近年マンションなどの施工でよく使用される差し込むだけでOKの製品でした。
そもそもが、給水や給湯配管などある程度の圧力が常時かかる配管をコンクリート内に埋設するということ自体が最近の施工では禁じられていますが、その禁じ手で施工してしまっていることが問題です。
しかし、その現場では埋設するように設計者から逆に指示があったとのこと…細かい話は省きますが給水給湯管のシンダー内埋設配管はキッパリ断りましょう。
その他の例では露出部分の樹脂管に洗剤がかかった影響でソルベントクラックが起きた可能性が高いと思われる事故例もありました。
樹脂管は化学的な薬品による影響で劣化しやすいので注意が必要です。
ガルバニック腐食で鉄管がポキッ
ガルバニック腐食という現象を知っている方も多いと思います。
異種金属が接するところで金属間の電位差が原因で起きる腐食なのですが、特に20〜30年以上前に竣工したような古めの建物で配管を観察すると意外と見られます。

イオン化傾向が水素H2より大きい金属を「卑金属」と呼んでいます、酸素と結合して酸化物になりやすい傾向があります。
また、水素よりもイオン化傾向が小さい金属を「貴金属」と呼んでいてこちらは酸化しにくく安定しています。
貴金属の部類に入る銅でできているバルブ類と卑金属である鉄でできている炭素鋼鋼管が直接的に接続されている場合や一般的なイオン化列には記載されていませんがステンレス鋼も銅と同等以上にイオン化傾向は小さく、そのステンレスと炭素鋼鋼管の接続部分で炭素鋼鋼管の方が異様に腐食が進んでしまうという現象が起きます。
銅でできているバルブと炭素鋼鋼管が直接接続された状態でガルバニック腐食が進んだ結果、炭素鋼鋼管がポキッと折れて水がダダ漏れしてしまった現場がありました。
もうそれは、漏水したフロアとその下の階までが水浸しになるという惨状でした。



右上:折れてしまった鋼管のネジ部分のアップ
下:バルブに残された鋼管の残骸は酸化して完全に腐っている状態
銅と鉄が接触した状態でそこに水が存在する状態だと電子の移動が促されて腐食が進んでいきます。
配管内は水で満たされているわけですから腐食が進んでいってしまうのです。
これを防止するためには、絶縁用のフランジなどの継手を使用や、ライニング鋼管とコア入り継手を使用するなどで直接、異種金属が接触しないようにする必要があります。
配管をピックでつついてしまう
電線管のルート確保のために外部の地面の仕上げのコンクリートをはつっている時に埋設の給水管に電動ハンマーのピックの先端が当たってしまい塩ビ管が割れ漏水したということが昨年施工した現場でありました。

その他にも、床のハツリをコンプレッサーでしている時に埋設の活きているガス管をつついてしまいガス配管に穴が開くと同時に噴出したガスにつついた時に出た火花から引火して炎があがってしまったという現場の報告が以前ありました。
たまたま通りがかった近所の男性が燃え上がる炎を見てすぐ近くにあった消火器を手に取って消火してくれたために最小限の被害で済んだということでしたが、この近所の男性には感謝してもしきれないほどです。
古いビルだと何がコンクリート内に埋設されているかわからないので怖いですよね。
現場では何が起こるかわからない、安全第一での作業を心がけましょう。
長くなってしたまったので今回はここまでにします、次回も漏洩の原因についての話をしたいと思います!