カテゴリー別アーカイブ: 建築設備

建築設備に関する専門技術的なことから一般ユーザーのためになる情報まで

丸ダクトの静圧計算〜2〜

前回は継ぎ手部分などを直管部分の50%とする簡易的な計算方法を紹介しました。

最近の教科書にはこの計算例しか掲載されていませんがエルボとチーズ部分の静圧を別途算出して加算する方法もあります。

今回はその計算方法について説明します。

筆者撮影

エルボ部分と分岐部分の静圧

エルボ部分静圧の計算式があるのですがこの計算式はそのまま使うことはありません。

教科書見るたびに、あれ、こんな式で計算していたかなと思ってしまうのですが私の記憶力が悪いだけで、エルボの静圧計算はエルボ部分をその直径の何倍の長さの丸ダクト直管長に相当するかを計算するのみです。

なので、難しい式は書いてありますがやることは単純です。

エルボ部分の静圧⊿PTを具体的に求めるための資料が以下です。

いろいろ式が書いてありますが一番右のle/dを判断すればよいだけです。

例えば直径300mmの丸ダクトでエルボの曲がり具合を示すR/dの値が1.0の場合は le/d=17です。

つまり直管相当長はダクト直径の17倍ということなので

le=0.3×17=5.1[m]

ということになります。

次に、丸ダクト分岐部分の静圧計算についてですが以下の資料のようになります。

分岐方向と直流方向で係数ζ(ゼータ)の値の選び方が違うので気をつけます、ρv2/2の部分は動圧です。

具体的に計算

前回ブログと同じダクトルートで具体的に計算をしてみます。

条件:吹出口の風量はそれぞれ300m3/hとします

最遠のルートA-H間を計算していきます。

R/d=1.0として計算していきます。

A-H間の全長は49mです。

ダクトサイズはすべて1.0Pa/mとなるサイズで選定しているとして(前回ブログを参考にしてください)直管部分の静圧は

1.0×49=49Pa‥①

エルボBの静圧について、直管相当長はR/d=1.0よりle/d=17

A-C間は350Φなので 0.35×17=5.95m

よってエルボBの静圧は 1.0×5.95=5.95Pa‥②

同様にエルボEは 0.25×17=4.25mより4.25Pa‥③

エルボGは 0.175×17=2.975mより2.975Pa‥④

次に分岐Cについてv1=1800/3600/(0.175*0.175*3.14)=5.2m/s

v3=1800/3600/(0.15*0.15*3.14)=4.72m/s

v3/v1=4.72/5.2=0.9よりζ=1.3

分岐Cの静圧は ζρv32/2=17.4Pa‥⑤

次に分岐Dについてv1=1200/3600/(0.15*0.15*3.14)=4.72m/s

v2=600/3600/(0.125*0.125*3.14)=3.4m/s

v2/v1=4.72/3.4=1.39よりζ=0

分岐Dの静圧は ζρv22/2=0Pa‥⑥

次に分岐Fについてv1=600/3600/(0.125*0.125*3.14)=3.4m/s

v2=300/3600/(0.0875*0.0875*3.14)=3.47m/s

v2/v1=3.47/3.4=1.02よりζ=0

分岐Fの静圧は ζρv22/2=0Pa‥⑦

①~⑦を合計すると

49+5.95+4.25+2.975+17.4+0+0=79.6Pa

吹出しHの静圧15.0Paとしてこれを足して漸拡大および漸縮小の継手を無視しているなどのため安全率10%見込むと

(79.6+15)×1.1=104Pa

ファンを選定する場合は機器抵抗を考慮し200Paであればその数値を加えて最後に動圧分を差し引きます。

動圧は機器吹出し部分で7.0m/sの場合ρv2/2=29.4≒30Pa

よって 104+200-30=274Pa

ファンは1800m3/h 274Paで選定します。

丸ダクトの静圧計算〜1〜

空調や換気のためのダクトサイズや送風機の選定をする際に静圧を考慮しなければなりません。

静圧は配管で言うところの圧力損失のようなものと私は考えています。

店舗の設備設計においては静圧計算書の提出を求められることはあまりないのですが例えば設計図書で設定された風量が出ない場合などは静圧が大き過ぎないか確認しなければならなくなります。

後から計算したのでは遅いので本来は設計時に計算しながらダクトサイズ選定していくのが理想ですが、まずは1.0Pa/mという静圧の目安を守って設計していればまずトラブルになることはありません。

今回は丸ダクトの簡易的な静圧計算方法について説明してきます。

筆者撮影

静圧の簡易的な計算方法

下図のダクトサイズと静圧を求めます。

条件:吹出口の風量はそれぞれ300m3/h       吹出口の静圧抵抗を6Paとします

最遠のルートであるA-H間を計算していくことにします。

単位あたりの静圧は1.0Pa/mとして下に示したダクト流量線図を利用してダクトサイズを選定します。

ダクト流量線図 空気調和設備計画設計の実務の知識より抜粋

選定したサイズを以下に示すと

A-C間 1800m3/h 350Φ

C-D間 1200m3/h 300Φ

D-F間 600m3/h 250Φ

F-H間 300m3/h 175Φ

となります。

次に静圧の計算ですが、エルボやチーズ部分の局部抵抗については簡易的にダクトルート全長の50%分とします、単純な経路の場合はこのように計算してかまいません。

ダクトルート全長を求めると

10+10+6+6+10+6+1=49m

よってダクトルート全体の静圧は

1.0Pa/m × (49m + 49m × 0.5)+ 6Pa =79.5Pa となります。

数字上静圧が大きくなくても風量確保困難の場合がある

静圧計算をいくらしっかりしても風量が確保できない場合があります。

と言うのは、ダクトルートの途中にダクトサイズが細すぎる部分があると、抵抗がかかり過ぎてその先は風量が全く確保できないということがあるからです。

例えば1400m3/hの風量が通過するメインダクトのサイズを350Φで施工するとしてこのダクトを途中で200Φに縮小するとします。

350Φのときは長さ単位あたり1.0Pa/mの静圧ですが200Φの場合は10Pa/mと静圧は10倍となります。

200Φの部分が2mあってまた350Φにもどせば計算上はその2m分で20Paを足せばいいのだから大丈夫だろう、という考えは間違いです。

ダクトルートの途中で急激にサイズを縮小した場合は、縮小部分で抵抗が大きくなり過ぎてその先へ空気がうまく搬送されなくなります。

つまり、誤って途中でおかしなダクトサイズ選定をしてしまうと計算上はそこまで静圧の数値は大きくならないが風量が確保できないということが起こり得るということです。

経験値の浅い設計者が以外とこのミスをしてしまいます、どこまでサイズを絞っても大丈夫そうかという勘が働かないからです。

まずは1.0Pa/mを目安に設計することです。

ちなみに低圧ダクトは0.8〜1.5Pa/mで設計することになっています。

なのですが、店舗の換気設備を設計する場合は、納まりが厳しい現場が多くダクトサイズを大きく取れないことが多いので1.5〜2.0Pa/mまでは許容範囲として計算しながらサイズ選定および静圧計算していけばよいです。

もし、必ず国土交通省の設計基準に従わなければならない場合はそちらを順守してください。

換気方式と換気回数

感染症のこともあり、いま話題にあがることが多くなった換気についてですが今回取り上げるのは特別なことではなく設備工事や設備設計に携わるかたが知るべき基本的な換気方式の種類や換気回数の目安についてです。

筆者撮影

換気方式の種類

建築に関わらない方からは換気に種類などあるのか問われそうですが送風機を給気と排気どちらに使用するか、しないかなどで種類分けがあります。

建築関係の仕事をしていると換気方式については基本的な知識として知っているものとして打合せなどの会話で普通に出てくることもあるので覚えておいて損はないです。

換気方式の概要図を示します。

第1種は給気、排気とも送風機を用いる換気方式で換気量の設定によって室内の静圧を正圧にも負圧にも計画することが可能です。

ここで正圧と負圧の説明をしておきます。

正圧の状態は室内から空気が押し出される状態になります。

なので外部から汚染された空気を取り込みたくない手術室などは正圧にします。

負圧の状態は上記の逆で室内へ空気を引き込むイメージになります。

トイレの臭気など汚染された空気をその室から周囲へ漏らしたくない場合は負圧で計画します。

換気方式の説明にもどりますが、第2種は給気に送風機を用いる換気方式で室内は正圧になります。

第3種は排気に送風機を用いるので室内は負圧になります。

上記の3種に加えて自然換気も換気の種類としてあげられます。

給気も排気も送風機を用いずに自然の風圧や気温の差を利用して換気します。春や秋の気候が良いときは窓を開け放しで部屋の空気を入れ替えます、それが自然換気です。

建築的にボイドと呼ばれる空気の通り道を設けて風圧差と温度差で換気を促すのも自然換気の考え方です。

基準換気回数について

室の用途別で基準換気回数をまとめた表です。

換気設計風量基準換気回数 空気調和設備設計計画の実務の知識より             表中の×は一般的に採用されない方式を示す

上記以外の事務室の居室などは以前書いたブログ居室の換気量計算についてに詳細がありますがV=20Af/NとV=0.5Ahなどの計算で算出して決定していきます。

上記の表もあくまで目安なので居室あつかいになる室となる場合は必ず換気量計算をして必要な風量を確認する必要があります。

喫煙室の換気量はどうするか、度々問題になりますが最近は入口などの開口部で喫煙室の外側から内側に向けて0.2m/sの風速が確保できる風量で考えることが多いです。

入口ドアでW800 H2000の開口の場合は

0.8×2.0×0.2×3600=1152m3/h

という感じの計算になり、かなりの風量になることがわかります。

給水ポンプの選定について

給水設備において受水槽から高架水槽までの送水、あるいは受水槽から直接各水栓などへはポンプによって送水されてます。

ポンプを選定するときにどのように考えればよいのか、建物の高さや配管の距離によって変わることは想像がつきます。

計算例を示しながら説明していきます。

croissant. さんによるphotoAC からの画像

直送ポンプの選定について

給水ポンプ選定をする際に能力を決定するために瞬時最大流量と揚程を確認する必要があります。

給水ポンプの送水量は瞬間最大流量以上とし、揚程は算出した揚程以上として選定します。

まず瞬時最大流量の求め方は以前のブログで紹介した給水の負荷流量計算を参照してください。

瞬時最大流量は210L/minとします。

次に揚程ですが下記に示す式で求めます。


H≧H1+H2+H3

H:直送ポンプの揚程[m]

H1:直送ポンプの吸水面から最高位にある器具までの実高さに相当する水頭[m]

2:管路における摩擦損失水頭[m]

H3:最高位にある器具や水栓の必要圧力に相当する水頭[m]


ちなみに揚程とは摩擦損失などを水柱の高さとして表現したものになります。

下に図示した系統について揚程の計算をしてみます。

また、計算を簡略化するために条件を下記のように設定します。

最遠の器具までの配管長は60mとし摩擦損失はその配管長の摩擦損失と同等とします。

単位当摩擦損失は0.35kPa/mとします。

以上の条件での計算例を示します。

H1は図より11.0m

H2については配管長60mで摩擦損失はその配管長の摩擦損失と同等という条件より配管長の2倍に対する摩擦損失をもとめればよい

2=60×2×0.35/9.8=4.3m

3については最高位かつ最遠の位置にある大便器洗浄弁の流水時必要圧力が70kPaより

H3=70/9.8=7.14m

これらの値を代入して計算していきます。

H≧H1+H2+H3

=11.0+4.3+7.14=22.44m

H≧22.44m という結果が得られます。

ポンプ選定図で品番を決定する

エバラポンプのカタログを参照します。

F1300型吐き出し圧力一定・並列交互運転方式で選定していきます。

下記の選定図で給水量210L/min を垂直にとり、揚程22.44mを水平にとって交わる点がどこに位置するかを確認します。

ポンプ選定時 エバラポンプのカタログより

ちょっと微妙な位置になりますが32-5.6Sの範囲に交点が記入されます。

次に下に示した仕様表から32-5.6Sの機種は 32BIPME5.6S となります。

この機種は単相100Vなのでもし三相200Vで選定したい場合は32BIPME5.75 を選定すればよいです。

エバラの給水ポンプユニットF1300型、交互並列運転方式の外観は下の写真です。

エバラポンプ F1300型

とりあえずはポンプの選定ができました。

本音を言うと配管経路の摩擦損失計算をもっと細かくしたかったのですが煩雑になるので今回は簡略化しました。

またの機会に挑戦したいと思います。

排水設備の機能について〜SARSはトイレから〜

コロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)は日本では2類に分類される指定感染症ですが現在は収束しています。

2002年の11月に中国の広東省で初の感染者が確認されてから2003年9月の収束まで30カ国で8098人の感染者と774人の死亡者が確認されました。

感染が広がる中で香港の高層マンションで排水菅の不備により321人が感染したという事例がありますが排水管の不備とはいったいどういうことなのでしょうか。

Alexas_Fotos さんによるPixabay よりの画像

便器から飛沫が飛ぶ可能性

大便器まわりにウイルスが多く存在するという話がありますが、あながち嘘でもなく、ダイヤモンドプリンセス号においてもトイレ周辺から新型コロナウイルスが多数検出されたという報告があったようです。

香港城市大学の研究によればトイレの水を流す際に1回あたり最大80万個のウイルスを含む飛沫が空中に吹き上がるとのこと。新型コロナトイレの糞口感染対策が盲点

つまり排水管に不備などなくとも飛沫は飛んでいるということですがSARSの感染拡大のひとつの原因となった高層マンションでの排水管の不備はさらに多くの飛沫を飛ばす状態になっていた可能性があります。

このSARSの話は「感染症の世界史」という本にあります。

マンションの排水管の不備で(感染源となった)男性の飛沫や糞沫に含まれていたウイルスがトイレの換気扇に吸い上げられてマンション内に拡散した可能性が高い、という記載です。

その事実は確かに書かれていますが排水管の不備というのが具体的にどのようなことだったのかまでは残念ながら書いてありません。

ネットで調べたら何か出てくるかと思いましたが探し方も悪かったのかもしれませんが何も出てきません。

そこで、どのような状態だったことが考えられるかのか予想してみました。

排水管内からガスが逆流

排水は立管から各階で枝配管を分岐させる形で配管します。

例えば最上階のトイレからSARSに汚染された汚物が流れたとした場合、排水立管が全体的に汚染されます。

そして、ここがポイントだと思っていますが、排気のための換気扇を作動させたのはよいが、給気口がない、あるいは給気口はあるが何らかの理由で閉鎖している状態だった場合、室内およびトイレ内は負圧になります。

室内およびトイレ内が負圧の状態になると排水管内のガスを引っ張って吸い上げてしまうことがあります。

マンションの排水管と
排水管内ガスが移動するイメージ

さらに大便器のトラップの封水が便器の不良などで破られ易い状態だったとしたら大便器から排水管内のウイルスを含んだ飛沫が大量に逆流してくる可能性はあります。

321人の感染者を出したという事実を見ると、このような不具合が起こっていたのではないかということが予想されます。

現在の日本国内のマンションの計画はそこまで杜撰なものはないので同じようなことが起きる可能性は低いですが、施工時に室内やトイレ内が負圧になり過ぎないか、各器具のトラップは問題なく機能するかなどは確認しておく必要があります。

たとえSARSウイルスの飛沫でなくとも、大便器からかなりの量の飛沫が飛んでくるとしたら、それはよくないので…。

ダクト内風速と静圧について

ダクト内風速はどう考えて決めればよいのか?入札のために用意された設備図を見ていてたまに風量に対してこれは細過ぎるのではないか、と思われるダクトサイズ選定がされていることがあります。

さすがにそのまま見積もりしてしまったら後からヤバいことになりそうなレベルの場合はダクトメジャーで確認しながらダクトサイズを修正して拾いをします。

適正なダクトサイズを選定するための風速と静圧の考え方とは?

Tama66 さんによるpixabayよりの画像

風速の許容値と静圧

ダクト内風速については用途によって許容値があります。

騒音の許容をどこまで受け入れられるかで決まっているようです。

ダクト内風速の許容値(低圧ダクト) 
空気調和設備計画設計の実務の知識より

私自身は店舗の設備設計をすることが多いですが、だいたい6~8m/s程度が許容範囲かなと思いながら設計しています。

上記の表でも一般店舗、食堂は 9.0m/sまで許容範囲となっています。

静圧というのは、全圧から動圧を除いたもので、ダクトの抵抗、あるいは圧力損失と思えばよいです。

この静圧については基本は1.0P/mで考えて、低圧ダクトでは0.8~1.5Pa/mの範囲で抑えます。

天井ふところがあまりないため、ダクトサイズを絞らなければならない場面があります。

2.0P/m超えてくるとちょっと風量確保ができるか怪しくなってきます。

ダクトサイズを絞った部分で抵抗がかなり大きくなりその先の風量がしっかり出ない場合もあるので注意が必要です。

もう一点、排煙ダクトは20~15m/sと記載がありますが、これはその施設によって設定が違うので確認が必要です。

経験上の話で言ってしまうと排煙ダクトも高圧ダクトとしてではなく低圧ダクトと同様に考えて設計している施設が多く、ダクト内風速を最高で10m/s程度の考えで設計した方が無難です。

現実的に20m/sというダクト内風速だとかなり抵抗が大きくなってしまい希望している風量が得られないパターンが多いです。

排煙ファンが700Pa以上の静圧で設定されているのになぜか計算通りの風量がでないという‥そんな経験もしました。

過去に風量確保ができず苦労した数件の現場が思い出されます。

ほんとうにこれは一度施工してみて風量測定するまで性能が出るかどうか確認しようがないこともあり注意が必要です。

ダクト圧力の分類とダクトの板厚

ダクト圧力の分類とダクト板厚は以下の資料のようになります。

ダクト圧力の分類
ダクトの板厚 角ダクト
ダクトの板厚 スパイラルダクト
すべて空気調和設備計画設計の実務の知識より

高圧ダクトの板厚は低圧に比べて1番手上を選ぶイメージです。

スパイラルダクトはハゼの部分の強度があるため角ダクトのような板厚は要求されていません。

潜熱負荷とは何なのか?

空調負荷計算〜3 すきま風熱負荷〜で書いた内容の中で外気を取り込んだときに顕熱負荷と潜熱負荷に分けて計算すると説明しました。

ところで、顕熱負荷そして潜熱負荷とはいったい何なのでしょうか。

潜熱負荷のイメージ

顕熱負荷というのは例えば外気温33℃の空気を27℃に下げる場合は温度差6℃を下げるための負荷ということになります。

では、潜熱負荷とは何でしょうか。

33℃の外気を27℃に下げる場合、空調機内の熱交換器は20℃程度となっていると想定したとき外気が熱交換器を通る際に外気に含まれている気体の状態である水蒸気が液体の水に変化します。

この状態変化のために熱が奪われています。

見かけ上に顕れる温度を下げているわけではないので潜んだ熱ということで「潜熱」と呼ばれています。

つまり、冷房する際は単純に33℃を27℃に下げる分の熱を奪えばよいのではなく、水蒸気が水になる状態変化のために奪われる熱の分もプラスして冷却しているのです。

ちなみに水蒸気が変化した水は空調機のドレンとして排水されています。

状態変化と熱のやり取りのイメージを以下に図示しておきます。

状態変化と熱のやり取りのイメージ 筆者作成

潜熱については中学校の理科でも話が出てきます。

氷⇒水⇒水蒸気という変化をする場合の時間と温度の関係を簡略的に示したグラフが以下になります。

 状態変化中の温度 中学理科のまとめ より

なんか中学校の時に勉強したかもな、となんとなく思い出す方もいると思います。

グラフが階段の踊り場のように水平になっている部分は氷が水へ、あるいは水が水蒸気へ状態変化してる最中であることを意味します。

この最中は温度変化はしません。

しかし加熱はし続けていて熱は移動しています、このとき移動している熱が「潜熱」です。

空気線図上で変化の動きをみてみる

夏期の空冷空調機による冷房時の温湿度の変化を空気線図上で追ってみると下図のようにななめ左下へ移動するような変化をたどります。

空気線図上で温湿度変化を矢印で図示 夏期の場合 

温度が下がると同時に絶対湿度も下がることがわかります。

また、気温が高いほどこの矢印の角度が急になります、つまり温湿度が高い時期の外気ほど少ない温度変化でも多くの結露水が発生することを意味しています。

次に冬期の温湿度変化をみてみます。

冬期は加湿機能のない通常の空冷の空調機では温度のみが変化して絶対湿度は加湿されないので変化しません。

よって相対湿度は下がることになります。

冬の室内の乾燥の原因のひとつがこの暖房によるものです。

加湿器を併用しなければかなり相対湿度が下がってしまうということになります。

室内の環境として相対湿度は最低でも40%以上にしておくべきです。

一般的な空調機で暖房する場合は室内の相対湿度が30%以下になっていることもあり得ますので冬場は加湿器の併用をしないと室内がかなりの乾燥状態になる可能性があります。

空調負荷計算〜4 内部発生熱負荷〜

仕事で負荷計算書が必要になったときに以前は教科書を見ながら手計算状態で作成していたので時間がかかっていましたが、今は負荷計算の書式をエクセルで資料として作ったので、と言うか作ってもらったのですが、とにかく書式が存在するので計算書作成が速くできるようになりました。

ただし、書式があるのをいいことに何も考えずに数字を代入するだけという考えで作成するとおかしな計算結果になります。

イレギュラーな要素がある場合もあるので、やはり案件に応じて慎重に計算書を作る必要があります。

室内で発生する内部発生熱負荷というものをどこまで考慮して計算するのがよいのか、よく悩みます。

結局、よきにはからうということになるのですがお客様への説明はできるようにしておく必要があるので、どのように考えて計算したかを明確にしておかなければなりません。

TicTac さんによるphotoACからの画像

人体発熱

人体からの発熱は人体表面からの対流と放射による顕熱(SH)と発汗により放熱される潜熱(SL)があります。

下の表のように作業状態や温度帯別で数値が示されています。

作業状態によって顕熱と潜熱の割合は異なりますが合計した全発熱量の数値は一定となることがわかります。

作用温度別人体発熱量
空気調和設備計画設計の実務の知識より

機器発熱・照明発熱

OA機器の発熱量と厨房機器による発熱量の資料が以下になります。

OA機器の発生熱量
空気調和設備計画設計の実務の知識より
厨房機器発生熱負荷原単位
空気調和設備計画設計の実務の知識より

照明発熱については照明器具の消費電力に遅れ係数を掛け算して求めます。

床単位面積あたりの冷房負荷qEは次式で求めることができます。


qE=W・rL

qE:単位床面積あたりの照明負荷[W/m2]

W:単位床面積あたりの照明の消費電力[W/m2]

rL:証明負荷遅れ係数

(露出型0.85 埋込型0.75 だが安全をみて1.0とする場合が多い)


早い話が照明器具の消費電力を調べて合計して遅れ係数を掛け算すればそれが照明発熱による負荷と考えることができるという意味になります。

遅れ係数を1.0で考える場合は照明器具の消費電力の合計がそのまま照明発熱の負荷の数値ということになります。

厨房機器から発生する熱

上記の資料で厨房機器発生熱負荷の表を示しましたが、この表をよく見ると厨房機器の消費電力に対する負荷の量は書いてあります。

なのですが、ガス機器についての表がありません。

結局ガス機器の場合は直火で焼いたり煮たりするわけで、その熱量についてはうまいこと数値化できないということなのかわかりませんが空調用の熱負荷に換算するような表がありません。

ガス機器の厨房機器から発生する熱を空調熱負荷に換算する方法が見当たらない、かつそれを本当にやろうとするとかなり大きな空調負荷になることが予想されます。

ということで、この空調負荷計算の話題になってから何回か同じことを書いていますが、厨房はそこで作業する人に直接冷気を当てるスポット空調で考えてパンカールーバーなどを配置します。

パンカールーバー 筆者撮影

また厨房に設置する空調機の能力は想定で400~500W/m2で考えて選定すればほぼ問題は起きません。

ということで空調熱負荷計算はこの第4回目でいったん区切って他の話題に移ります。

またの機会に熱負荷計算書の書式を紹介できればと思っていますがしばらく換気や衛生などの記事も書きたいのでいつになるかわかりませんが、すいません。

空調負荷計算〜3 すきま風熱負荷〜

居室や火気使用室は換気をするために必ず外気を取り入れる必要があります。

夏期に室内へ外気を取り込んで冷やす際に空気中の気体の状態で存在する水蒸気が液体の水へと状態変化するために熱がうばわれます。

この潜熱負荷が夏期の空調負荷が大きくなるひとつの要因となっています。

にこにこ** さんによるphotoACよりの画像

すきま風負荷の計算式

すきま風負荷には顕熱負荷と潜熱負荷があり以下の計算式によって計算します。


すきま風による顕熱負荷qs[W]を求める計算式は

qs = cp・ɤ・Δt・Qi / 3600

= 0.33 Δt・Qi

すきま風による潜熱負荷qL[W]を求める計算式は

qL= r・ɤ・1000・Δx・Qi / 3600

= 833 Δx・Qi

cp:空気の低圧比熱 1.0×103[J/kg・k]

ɤ:空気の比重量 1.2[kgf/m3]

r:水の蒸発潜熱 2500[J/g]

Δt:室内外乾球温度差 [k]

Δx:室内外絶対湿度差 [kg/kg(DA)]

Qi:すきま風の風量 [m3/h]


上記の式を使って実際に数値を代入して計算してみます。

外気温度34.7℃ 室内温度設定27℃で取り込む風量が3000m3/hの場合の顕熱負荷は

qs = 0.33 Δt・Qi より

qs = 0.33 ×(34.7-27.0)×3000[m3/h] = 7623[W]

となります。

外気の絶対湿度0.0186[kg/kg(DA)]で室内がの絶対湿度が0.01229[kg/kg(DA)] 取り込む風量が3000m3/hの場合の潜熱負荷は

qL = 833 Δx・Qi  より

qL = 833 (0.0186 – 0.01229)×3000[m3/h] = 15768.7[W]

となります。

厨房に取り込む給気もすきま風負荷として計算

すきま風負荷という名前がついているため、あくまですきまから入ってくる風量を計算するイメージかもしれませんが厨房に給気として取り込む外気による負荷もこの計算で求めてしまいます。

上記の計算では風量を3000m3hとしましたが、これは喫茶店などのお店全体の風量を想定しました。

居酒屋などの飲食店の場合は厨房の換気量がもっと大きいため8000~10000m3/h程度にはなります。

さらにここに機器類からの発熱も考慮すると空調負荷がかなり大きくなり、空調機の台数が増えて厨房の天井が空調機だらけになるような設計になってしまう可能性もあります。

このため、厨房は作業員に直接風を当てるスポット空調という考え方で計画されることがほとんどです。

空調負荷計算〜2 透過日射熱負荷〜

空調熱負荷計算の中で方角による差がもっとも顕著に現れるのがこの窓ガラスを通ってくる透過日射熱負荷です。

夏場に西側の窓まわりが異様に暑くなるのはこの透過日射熱の影響によるものです。

ジグザグ さんによるphoto ACからの画像

透過日射熱とは何なのか

室外から室内に侵入する熱は以下の3つに分けて考えることができます。

1.ガラス面の内外温度差による貫流により侵入する熱

2.日射のうち一度ガラスに吸収されガラス温度を高めたあと対流と放射に分かれて侵入する熱

3.ガラスを透過して直接侵入する熱

この3つのうち、2と3を合わせた熱を透過日射熱と呼んでいます。

窓ガラスを通る熱 イメージ図

貫流熱負荷は外部と内部の温度差によって発生するものですが、日射は太陽からの電磁波が直接物体に作用して温度を上昇させます。

太陽光をルーバーなどで遮ることでその影響を抑えることができます。

透過日射熱負荷の計算式

透過日射熱負荷の計算式は以下になります


qG = A・Sn・SC

qG: 透過日射熱量[W]

A: 窓ガラス面積[m2]

Sn:窓ガラスからの標準日射熱取得[W/m2]

SC: 遮蔽係数


日射熱取得のデータを以下に示します。

ガラス窓標準日射熱取得
空気調和設備計画設計の実務の知識より

窓の遮蔽係数などの資料を以下に示します。

窓の遮蔽係数など空
気調和設備計画設計の実務の知識より

簡単にですが計算例を示します。

東京で時刻12時、南面の窓ガラスで透明フロートガラス8.0mm明色ブラインド、ガラス面積A=17.4m2の場合

Sn:ガラス窓標準日射熱取得の表より180[W/m2]

SC: 遮蔽係数は資料から読み取って0.48

各数値を qG = A・Sn・SCに代入すると

qG = 17.4×180×0.48=1503.4[W]

西の窓ガラスからの透過日射熱には気を付けたほうがよい

日射熱取得の表を見てわかる通り、西面と東面の直達成分が大きいことがわかります。

これは日が沈む時間帯と日が昇る時間帯に日射が窓ガラスに対して垂直に射し込むからです。

そしてたいてい問題になるのは西の窓ガラスからの日射です。

東側があまり問題にならないのは朝から午前中にかけてまだ空気が温まりきらない時間帯であることや、朝早い時間は出勤している人があまりいないから、など問題になりにくい要素があります。

西側から日射が射した場合、夏場14時くらいから16時にかけて窓際の温度はかなりの高温になっていき日が沈むまでその状態が続きます。

また躯体や部屋内の材料にこもった熱が室内に放出されるその影響によって暑さが夜まで続いたりすることもあり東側に比較して問題になることが非常に多いです。

ちなみにガラス窓標準日射熱取得の値は東京夏期、南面12時で180[w/m2]に対して西面16時で609[w/m2]なので西面の日射の値の大きさがわかります。

過去に西側の窓ガラスまわりの客席が夏場は暑くて座っていられないというクレームに何度か対応したことがあります。

西の窓際に温湿度計を置いて数値を確認したところ14時ころから温度が上昇し始めて15時から16時のピークにかけて40℃~45℃になる席もありとてもそこに座って過ごすことのできる環境ではありません。

西に窓面が多くある場合は必ず、ブラインドやロールカーテンの設置を予め提案しておかなければいけません。

ロールカーテンを設置し日陰の状態にして、店内空調をしっかり効かせて温度を計測したら30℃以下になり、とりあえず席を使用できる状態にはなったのでお客様に納得していただけましたが。

建築士の製図試験でも西側の日射を考慮して窓の外側に鉛直ルーバーを描き込ませる問題があります。

たまたま通りがかった埼玉県ふじみ野の市役所の西側ルーバーの写真

上の写真のように西側全面に外付けで縦方向のルーバーがあるのが理想的ですが、なかなかこのような形で計画設計が進められる案件はないのが現実です。

その建物や状況に応じてでき得る限りで日射の対策を心がけたいです。