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ウイルス感染ルートと感染対策としての設備について〜その2〜

前回は新型コロナウイルスがトイレにおいて、ふん口感染している可能性が高いことを書きました。

しかし、一般に言われているのは飛沫感染と空気感染になります。

よって、感染対策として換気設備についての話はよくあがります。

感染対策をしたいので換気回数を上げてほしいという要望はあります、あるのですが実際にこれを実行する方は少ないのが実感です。

私自身、換気回数を増やしたいという要望を聞いた時にまず考えてしまうのが換気回数、つまり換気量をやみくもに増やすことが感染対策につながるのだろうか、ということです。

もちろん換気設備が無い場合は設置すれば変わることはあり得ます。

換気が必要であるにも関わらず換気設備がない場合は違法建築になってしまうので感染対策関係なく換気設備を設置しましょうと言わなければならないのですが。

換気量は30m3/h 換気回数は2回/hが目安

居室において必要とされる換気量は居室の換気量計算について で紹介したように

V=20Af/N

で計算します。

簡単に言ってしまうと居室を使用する人数に20m3/hを掛け算すればよいということです。

店舗の設計の場合、客席をなるべく多くとる計画となっていることから100m2の店舗で40席あれば20m3/h×40席=800m3/hは必要になる、という感じの計算になります。

さらに厨房の排気が少なくとも2000m3/h程度はあるので店舗全体で2800m3/hとなります。

平均天井高2.5mだとしたら店舗全体の容積は

100m2×2.5m=250m3より

何回換気しているか計算すると

2800m3/h÷250m3=11.2回/h となります。

厨房の排気量がかなり大きくなる場合もあり、店によっては30回/h換気を超えている場合もざらにあります。

これまで知事など政治家からやり玉にあげられている飲食店は特に換気回数が多く取れている業態になるということです。

空気調和衛生工学会誌によるとカナダで行われた医療施設の職員に対する結核のツベルクリン反応の有無を長年追いかけて調査した結果が示されています。

その結果によると気回数2回/h未満の場合、2回/h以上の場合より感染リスクが3.4倍高いことが示されています。

カナダの一般病棟の一人あたりの気積が24m3と言われているので2回換気の場合は1人あたり48m3/hになります。

新型コロナウイルスと結核の感染力が同等である証拠はないが空気感染する疾病の予防に有効な換気量を確保するという観点から厚生労働省では30m3/h・人と2回/hの換気の確保を推奨している、とのこと。

ちょっと難しい記述ですがとりあえず30m3/h・人で2回/h以上を確保がとりあえずの目安ということはわかります。

換気の現実的な運用

居室の換気はV=20Af/Nで計算しますが実際は余裕をみて30m3/h程度で計算することはかなりあり、飲食店においては厨房の換気量が膨大なので、これを加えると2回/h換気は大幅にクリアしている店がほぼ100%と思われます。

物販店では換気量が2回/hに届かないパターンもあると思いますが物販店の場合そんなに喋ったりしないので飛沫やエアロゾルがそこまで多く舞わないことを考えるとお金をかけて換気量を増やそうというところまでは考えないのではないでしょうか。

必要以上の換気量を求めても、結局、感染者がそうでない人間と近い距離で接触して飛沫を浴びせてしまう状況やトイレでのふん口感染の対策をしなければ意味がありません。

また、寒い冬に外気を取り入れるために窓を開け放している例もあるようですが利用者の体が冷えて体調を崩すなど逆効果になることも考えられるため気温を考慮して実施する必要があります。

対策としての設備は

ウィルスの大きさはどれくらいか?ものすごく小さいです。

新型コロナウイルスは0.1μm程度という大きさと言われています。

ちなみにμmという長さの単位ですが1mmの1/1000という長さです。

「クリーンルームのお話」日本規格協会 より

ウイルスを捕捉できるような家庭用の空気清浄機なんかあるのかな、と思っていたところダイキンが0.3μmのものを捕捉できるという商品を発売しました。

0.3μmの微小粒子を99.97%捕集して紫外線で滅菌するという代物で、家庭用の商品でそこまでの能力のものが出てきたのか、と思いました。

しかし、これが発売してから間もなく0.0146μmの微粒子を捕捉できるというAirdogというメーカーの空気清浄機が発売されました。

もう、ほんとかよ?というレベルなのですが、ガンガン宣伝してます。

おそらくかなり売れているのではないかと思います。

いやでも、フィルターの性能が高いと言ってもそんな小さいものがこれで本当に補集できるのかあやしいですが…だって部品と部品の隙間があれば0.0146μmのものなんて入り込めると思うんですよね….隙間から通過している粒子もあると思うんです…考えすぎ?

いつか、メーカーの人から説明を開いてみたいですね。

とりあえず信じるものは救われるということでお勧めしてみてもいいかもしれません。

よくコロナ対策という名目で全熱交換器を宣伝されることがありますが、あれは寒い地域で給気と室内の温度差を緩和する意味では良いと思いますが特に換気量がアップするわけでもないし空気清浄機能力があるわけでもないので(フィルターはついていますがそこまで高性能ではない)私は取り立てておすすめすることはありません。

換気については法律で決められた換気量が確保されていれば、それ以上増やしたからと言って感染対策としての効果が上がるとはあまり思えません。

換気が足りないと思う場合は定期的に窓を開放するなどの工夫で乗り切った方が得策と思われます、ただし寒冷地では冷たい空気が流れ込むのが問題になるので注意が必要ですが。

全く換気設備がない、という場合は設置した方がよいかもしれません、単純にそれは違法建築の可能性もありますから建築や設備に詳しい方に相談してもよいと思います。

あとは、カラオケ屋さんは飛沫が飛ぶ量はどうしても多くなりそうなので心配であれば換気量を増やして、それを宣伝して少しでもクリーンなイメージを伝えるという考え方はありだと思います。

ウイルス感染ルートと感染対策としての設備について〜その1〜

以前、排水設備についてSARSの感染ルートも絡めた話として記事に書きました排水設備の機能について〜SARSはトイレから〜 。

これは「感染症の世界史」という本に数ページ書いてある内容と自分自身の仮説をもとに書きました。

というのは、香港の高層マンションでSARSの集団感染が発生した話についてはその情報をネットで調べて補足すればよいと考えていたのですが調べてもこの話題がまったく出てこなかったのです。

あきらめて、自分の仮説、まあ、いわば妄想で補足しながら記事を無理矢理書いたので、いつもの駄文にさらに輪をかけてショボい文章になってしまったわけですが。

最近、空調衛生学会誌の切り抜きを先輩からいただいたら、そこに、この香港高層マンションのSARSの話題が書いてあり、目を皿のようにして読んだわけです。

丸岡ジョーさんによるphoto AC よりの写真

SARSはふん口感染していた

香港のアモイガーデンという高層マンションで2003年に集団感染が発生しました。

SARSウィルス(SARS-CoV)が排水管内から浴室の破封したUトラップを経由し換気扇を通じてライトコートへ排出され給気とともに各戸へ侵入して感染拡大していきました。

空調衛生学会誌 第95巻 第6号 に掲載の「トイレ空間におけるCOVID-19の感染リスクと防止に向けた研究動向と課題」(関東学院大学 大塚雅之)より資料をそのまま添付します。

図を見るとウイルスがどのように拡散したかよくわかります。

これは、ふん口感染と呼ばれるもので排泄物中に含まれるウイルスの一部が直接、あるいは手指を経由して体内へ取り込まれる感染ルートになります。

2020年2月、ダイヤモンドプリンセス号の船内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染が起きた際に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAが船内の各部所から検出されました。

浴室内トイレ床 13室 (39%)

枕 11室(34%)

電話機 8室(24%)

机  8室(24%)

上記のように浴室トイレ内での検出頻度が高い結果となっています( 空調衛生学会誌 第95巻 第6号 より)。

大便器洗浄をする際の洗浄水の飛沫による汚染も指摘されています。

洗浄水は便器から20cm以上の高さまで飛沫が飛びます

でも、コロナウイルスって感染者の肺炎による飛沫感染や空気感染によるものではなかったの?という疑問を持たれた方もいると思います。

コロナの受容体ACE2は腸内にもっとも多く存在する

ここからの話は井上正康教授(大阪市立大学名誉教授)の「新型コロナが本当にこわくなくなる本」などを参考にして進めていきます。

新型コロナウイルスは体内の受容体によって細胞内へ取り込まれることにより感染に至ります。

この受容体はそれぞれのウイルスによって異なります。

インフルエンザウイルスの受容体は気管支粘膜や肺胞細胞の表面に多く存在するシアル酸という糖タンパク質です。

インフルエンザは気管支や肺胞の内側から感染することで肺炎を誘発します。

では、新型コロナウイルスの受容体は何か。

アンギオテンシン変換酵素(ACE2)という酵素タンパク質です。

このACE2は人体中の小腸や大腸に最も多く存在します。

以下に示したACE2受容体の相対的組織濃度のグラフで組織濃度の比較を確認できます。

井上正康教授の講演資料より

新型コロナウイルスは、体内の腸からACE2受容体によって血管内表面の細胞内に取り込まれてそこでRNA遺伝子コピーを増産します。

さらに新たなスパイクタンパクと細胞膜をまとったコロナウイルスが細胞外へ飛び出します。

この時に血管壁の細胞を傷つけるためにその障害部位を覆うために血液が凝固して血栓が生じます。

その血栓は血液に乗って門脈を通って肝臓へ至ります。

血栓は肝臓で処理されますが、すり抜けるものもあります。

そのすり抜けた血栓が肺に集まり肺の血管に詰まります。

この状態で肺のCTを撮影するとスリガラス状の影が写りますが、肺の予備機能が大きいため息苦しさは感じずに無症状で経過します。

インフルエンザでもこのスリガラス状の影が観察されますが、この場合は肺組織での強い炎症反応が原因なので大半は高熱や息苦しさで大変な思いをされます。

もちろん新型コロナでも重症化しサイトカインストームと言われる状態になれば血栓が多くなり肺の血管に詰まるため呼吸が苦しくなってICUの人工呼吸器で酸素を取り込む処置が必要になります。

さらに、肺の血管が血栓で塞がれているため人工呼吸器でも効果が得られず、ECMOにより体外循環によるガス交換が必要になることもあります。

同じ肺炎でもそれに至るプロセスはインフルエンザと新型コロナでは違うということがわかります。

感染者の咳などによる飛沫感染や空気感染のイメージが強いですが、それはインフルエンザのイメージを引き継いでいるものであり新型コロナウイルスはトイレからの感染もかなり発生している可能性を考慮する必要があります。

感染対策として考えられること

新型コロナは小腸や大腸から感染が始まるのでウイルスは便と一緒に体外へ排泄されます。

つまり、トイレでの暴露も重要な感染ルートになっているということです。

すると、香港のアモイガーデンでの集団感染が排水設備の不備が原因だったこともダイヤモンドプリンセス号で浴室トイレ内におけるウイルスの検出頻度が高かったことも辻褄が合ってきます。

井上正康教授は手洗いうがいなどの対策に加えてトイレをこまめに消毒・洗浄することも対策のひとつに加えることをご自身の著書などで述べています。

感染対策となり得る設備についてですが、最新のPanasonicアラウーノ大便器には便座の蓋を閉じてから洗浄する機能が追加されています。

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この便器であれば洗浄水の飛沫による汚染は抑えることができます。

洗浄後に便蓋の消毒も忘れずに行っていただきたいです。

このような商品をおすすめすることがお客様の安心につながるのであれば積極的におすすすめするべきです。

もちろん、トイレ内の消毒・清掃についてもこまめに実施していただくことも説明に付け加えておすすめするとよりよい感染対策になるはずです。