カテゴリー別アーカイブ: 防災設備

排煙設備について〜2~排煙口サイズやダクトサイズの選定

前回に引き続いて排煙設備の話をしていきます。

今回は機械排煙の風量設定、排煙口のサイズ選定、ダクトサイズ選定など。

排煙ダクト内の風速の考え方について過去の失敗から学んだことも紹介しておきます。

筆者撮影

排煙風量は1m2あたり60m3/h

排煙風量についてどのように決定するかですが簡単な計算で決めています。

排煙したい居室などの面積1m2あたり60m3/h(1m3/min)で計算して決めます。

100m2の居室に対して必要な排煙風量の計算については

60[m3/h ]× 100[m2] =6000[m3/h]

となります。

100m2に対して6000m3/hですから、かなり大きい風量です。

100m2つまり30坪程度の店舗などざらにあります、さらに60坪となると約12000m3hの排煙風量が必要ということになります。

ダクトサイズについてはダクト内風速を15m/sで考えた場合

ダクト断面積は 12000m3/h÷3600s/h÷15m/s=0.22m2

正方形の場合の一辺は √0.22=0.47m

よって470mm×470mm、切りよく現場では500×500のダクトサイズでしょうか。

10m/sで考えると同様の計算で580mm×580mm、現場では600×600など切りよい数字で図面に書き込む感じです。

納まりがきつければ逆に550×550にするかもしれません、むしろ実際の施工の際は納まりに加えて予算などの都合も絡んでサイズをギリギリまで落とそうとする傾向の方が大きいですから余裕をみることはなかなかできないかもしれません。

排煙口のサイズについては排煙口が解放した時の面風速8m/s程度で考えて選定します。

例えば6000m3/hの排煙口のサイズを検討する場合

排煙口面積は 6000÷3600÷8=0.21m2

排煙口が正方形の場合の一辺は √0.21=0.46m

切りよく450mm × 450mm を選定などします。

排煙ダクトのダクト内風速は8〜10m/sで抑えて計画した方がよい、最悪でも12m/sまで

排煙風量は計算するとかなり大きな風量になることはわかりました。

それに伴ってダクトサイズも大きくしなければならないのですが、現場での制約があり、大きなダクトサイズでの計画ができないことがかなりあります。

天井ふところに納まらない、外部を立ち上げたいが隣地境界が近すぎて大きなサイズを立ち上げるだけの余裕がないなど、このような問題がほとんどの現場で出てきます。

このような事情を知ってか知らずか、排煙ダクト内の風速は換気ダクトよりも速い風速で考えてよいことになっています。

風速が早ければダクトサイズは小さくなります。

ダクト内風速の許容値(低圧ダクト)空気調和設備計画設計の実務の知識より

上の資料はダクト内風速と静圧について でも紹介していますが表の下の方に排煙ダクトはダクト内風速20〜15m/sと記載があります。

私自身は換気ダクトについては6〜8m/s程度で考えて計画できればよいと思っています。

風速20m/sまで許容されればダクトサイズはかなりコンパクトにできます。

しかし、現実20m/sでの計画は避けた方がよいです。

若かりし頃、設計施工の改修工事で10F建の8F部分の排煙ダクトの改修工事を教科書に書いてある通りに20m/sで計画して工事したところ、試運転時に風量が予定の半分くらいしか出ていないということがありました。

冷や汗が止まらなかったですが。

この是正工事は困難でした。

天井に何回もぐったかわかりません。

バイパスでなんとかダクティングして、関係者のみなさんの協力を得ながらなんとかギリギリ風量確保することができました。

思い出したくもないですね、解決まで1年くらい引っ張ってしまった案件でかなり精神的にもやられましたからね…。

竹中工務店の設備担当の方と打合せをして、この建物の排煙ダクトの風速はどれくらいで考えて設計しているのか問い合わせたところ、あっさり「10m/s程度ですよ」と答えが返ってきたことはいまも覚えています。

ちなみに、この改修工事を進めるときに既存の排煙設備図面がないため全体が把握できずにかなり困っていて、仕方なく建築した会社に問い合わせた、という経緯になります。

この建物の4Fでも改修工事が少しずれた時期にあって排煙ダクト内風速を8〜10m/sで設計したところ、この階は問題なく風量確保できました。

要するに、言いたいことは排煙ダクトの風速は通常の換気ダクトと同程度かやや速いくらいの風速で計画するのが無難です。

そして、20m/sという風速を出そうとするのはシロッコファンの能力をあげても無理がある、というのが実感です。

いけて15m/sではないでしょうか。

設計するときは基本は8〜10m/sで考える。

最高でも12m/sで計算するというのが現実的なライン、というのが経験から得た感覚です。

排煙風量計算の例

話を風量計算に戻します。

排煙ファンの風量は以下の条件を満たすものとします。

1.1防煙区画のみを対象とする場合は7200m3/h以上でかつ防煙区画の床面積×60m3/h以上

2.2以上の防煙区画を対象とする場合7200m3/h以上でかつ最大防煙区画の床面積×2倍×60m3/h以上

計算例の図を以下に示します。

カラオケ屋さんなど小部屋がたくさんあるような業態で100m2以下不燃仕上げで逃げられない地下階で各カラオケルームに排煙口を設けることがあります。

この場合は10ルームまとめて同時開放で計画されたりします。

現場の状況によって排煙の計画もまったく違うので臨機応変に対応しましょう!

排煙設備について~1~排煙設備の設置基準と構造概要

火災が起きた時に火傷によって死亡するイメージがありますが、実は煙を吸い込むことによる呼吸困難からの窒息が原因で亡くなる方が多く存在することはよく知られています。

防災設備のひとつとしてその建築物の用途や規模によっては排煙設備を設置しなければなりません。

排煙設備の設置基準は建築基準法と消防法に定められています。

排煙窓を開けて煙を排出する自然排煙と排煙ファンで強制的に排出する機械排煙がありますが、今回は主に機械排煙についてその概要を説明していきます。

天井に設置された排煙口 筆者撮影

建築基準法における排煙設備の設置基準

建築基準法における排煙設備の設置対象については以下の表になります。

特定の人が使用する建築物や天井が高く広々としている建築物については設置が免除されています。

不特定多数の人の使用が見込まれる、ある程度の規模の建築物には基本的に排煙設備が必要だと考えたほうがよいです。

設置義務免除部分の要件①~⑩が下記の表になります。

建築基準法施行令126条の2、平成12年建設省告示第1436号より

消防法における排煙設備の設置基準

消防法においては用途と面積で設置するかどうか決められています。

劇場、集会場等は舞台部床面積≧500m2

キャバレー、遊技場、性風俗関連特殊営業店舗、カラオケボックス、百貨店、車庫、これらを含む複合用途施設、などは地階または無窓階床面積≧1000m2

この条件で排煙設備を設置しなければいけません。

消防法施行令より

不特定多数の利用が見込まれる建築物には設置が必要になると考えたほうがよいです。

排煙設備の設置については建築基準法と消防法の両方の条件を満たすようにしなければなりません。

地階(地下の階のこと)には用途によって排煙設備(地下なので機械排煙になる)が必要になるので気をつけたほうがよいです。

また、31mを超える室において準耐火構造の壁で100m2以内に仕切れない場合、経験上だいたいそれは設計計画上やらないか予算上やらないので31mを超える位置にある室については排煙設備の緩和が適用されず、何らかの排煙設備が必ず必要になると思っていたほうがよいです。

排煙設備の構造概要

排煙の区画は最大500m2で排煙垂壁などで区画します。

排煙垂壁は50cm以上(地下街の場合80cm以上)とします。

TEIJINのwebサイトより 不燃シート防煙垂壁

排煙口は歩行距離で30m以内をカバーするように設置します、30mを超える部分があれば排煙口をプラスしていきます。

排煙口は排煙ダクトに直結します、排煙ダクトは不燃材で作製し防煙壁を貫通する場合は隙間をモルタル等不燃材で隙間なく埋めます。

排煙口は通常閉鎖されていて開放装置により開放します。

開放装置は床から0.8~1.5mの位置に設置します。

排煙風量は1m2あたり60m3/hで計算しますが風量やダクトサイズの選定などについては次回説明していくことにします!

スプリンクラー設備について

今回は大型のショッピングモールなどにはだいたい設置されているスプリンクラー設備について説明します。消火栓や消火器など他の消火設備と比較してもその初期消火能力は高く資料によって数値は異なりますが初期消火の成功率はおおむね90%というところです。

cellulaimpazzita さんによるpixabayからの画像

スプリンクラー設備の概要

スプリンクラー設備の設置基準は消防法施行令第12条〈スプリンクラーに関する基準)に示されています。

おおまかに言ってしまうと消防法施行令別表の(4)項と(6)項イ(1)~(3)に分類される百貨店と入院することのできる病院は3000m2以上、(1)~(3)と(5)項イに分類される劇場、映画館、飲食店、旅館、ホテルは6000m2以上で設置が必要です。

その他に地下階や地下街は1000m2以上で必要、11階以上の階には必要となるなどがありますが詳細は建築関係法令集や建築消防アドバイスで確認してみてください。

ちなみにスプリンクラー設備の設置基準には消火栓設備のような耐火建築物の場合の面積を3倍や2倍で考えることができるような緩和はありません。

スプリンクラー設備の概略図を下に示します。

スプリンクラー設備の概略図
閉鎖型・湿式の例になります

湿式のスプリンクラー設備のオーソドックスな形になります。

スプリンクラー設備は水源となる水槽、スプリンクラー用のポンプ、呼水槽、圧力チャンバー、制御盤、各階に設置される流水検知装置、スプリンクラーヘッド、末端試験弁、屋上に設置される補助高置水槽などで構成されます。

補助高置水槽は補助加圧ポンプが設置される場合以外は設置します。

スプリンクラー配管の内部を充水しておくために必要になります。

また、ヘッドが感熱開放して(ヒューズがはじけて)しばらくは配管内の水が放出されるので、その減水に対する補助という意味合いで補助水槽が設置されています。

スプリンクラーヘッドから放水が始まると配管内の圧力が低下し規定値以下になると圧力チャンバーと圧力スイッチが反応してポンプが起動します。

スプリンクラー設備の分類

1.閉鎖型・湿式

配管内が常時、充水加圧されておりヘッドが感熱開放すると同時に放水が始まります。

2.閉鎖型・乾式

流水検知装置として乾式弁を設けています。

流水検知装置の二次側は圧縮空気で満たされており、火災時に感熱開放して圧力が下がるとポンプから水が圧送され散水されます。

寒冷地などの凍結の恐れがある地域で採用される方式になります。

3.予作動式

上記の乾式と同様に通常は流水検知装置の二次側は圧縮空気が充填されています。

火災時に火災感知器に連動して予作動式流水検知装置が開き二次側へ送水されます。

続いて、ヘッドが感熱開放すると散水が開始されます。

誤作動による水損事故があってはならない電算室やサーバールームなどに採用されます。

4.開放式

防護対象の区画ごとに一斉開放弁を設け、その一時側は充水加圧されています。

火災時にこの一斉開放弁を開きそれ以降の全てのヘッドから散水する多量放出方式となります。

開放型は舞台部などに採用されます。

スプリンクラーヘッドの配置

スプリンクラーヘッドの水平方向0.3mおよび下方0.45m以内にものがある場合は散水障害とみなされるため何もあってはいけません。

スプリンクラーヘッドは下記表の半径の円で建物内を包含できるように配置します。

円と円は必ず重なり合わせて散水範囲から外れる箇所が無いように配置します。

スプリンクラーヘッドの性能

スプリンクラーヘッドの放水圧力は0.1Mpa以上とし放水量は一般のヘッドで80L/minとします。

事務室などの一般室には表示温度79℃未満のヘッドで最高周囲温度は39℃の設定になります。

厨房や湯沸し室には表示温度79℃以上121℃未満の周囲温度39℃以上64℃未満の設定のヘッドを取り付けます。

まだ話すべき論点はありますがスプリンクラーについてはいろいろと規定や種類が多くちょっと書ききれないのでこの辺にしておきます。

たまに既存利用の改修現場でスプリンクラーの配管内に充水されたまま工事を進める現場があります。

数年に一度、ヘッドにハンマーが当たってしまったり冷媒配管のロウ付けで使用するトーチの火で感熱開放してしまい水浸しになる現場があります。

80L/minというのは流しの水栓5個をほぼ全開したのと同じくらいの水量ですからあっという間に床一面水たまり状態になります。

スプリンクラーからの放水をくらった職人さんは一瞬で全身ずぶ濡れです。

置いてある資材への影響や下階への漏水による営業補償など大きな損害を出す可能性があります。

配管内に充水したまま作業をする場合はスプリンクラー注意などの札をヘッドから下げるなどして作業する際に近づかないように察知できるような対策が必要になります。

屋内消火栓の概要〜非常時に消火栓を使いこなせるか?〜

屋内消火栓には1号消火栓と2号消火栓があります。2号消火栓は起動ボタンを押してホースを1人で伸ばすことが可能なので非常時でもなんとか使えそうな気がしていますが1号消火栓は非常時にうまく使いこなせるか?

屋内消火栓設備の概要の紹介と合わせて考えてみます。

himawariinさんによるPhotoACからの写真

屋内消火栓の概要

屋内消火栓の設置基準は消防法施行令第2章第3節第2款第11条にあります。

消防法令別表に建築物の用途の種類分けがありますがその用途と面積によって消火栓設備が必要かどうかを判断します。

例えば(3)項に分類されている飲食店や(4)項の百貨店などについては延べ面積700m2以上の場合設置が必要ですがショッピングセンターなどの複合用途となる(16)項のイに分類される建築物になると150m2以上から設置しなければならないです。

不特定多数が利用することが想定される建築物では規制が厳しくなります。

主要構造部を耐火構造として壁および天井を難燃材料とした場合は面積を3倍の数値として読みかえることもできます。つまり700m2なら2100m2まで緩和されます。

詳細については建築消防adviceや建築関係法令集などの書籍で確認をお願いします。

屋内消火栓の概略図が下記になります。

屋内消火栓設備概略図 筆者作成

地下に水源となる消火水槽と消火栓ポンプを設置します。

ポンプには呼水槽がセットになります。

また起動装置と連動などをするために制御盤も必要になります。

各階に消火栓を設置し屋上に補助高架水槽を設置します。

1号消火栓と2号消火栓はどう違うのか

次に消火栓の種類について、1号消火栓と2号消火栓が存在します。下記がそれぞれの消火栓の外観などになります(能美防災㈱と㈱立売堀製作所の製品)。

能美防災(株)のHPより
(株)立売堀製作所のHPより

ショッピングセンターや中規模以上の事務所ビルなどでみかけたことがあるかと思います。

1号消火栓と2号消火栓の仕様をまとめた表が下記になります。

1号2号屋内消火栓の仕様 日本消火装置工業会の資料を参考に筆者作成

1号と2号の違いとして大きいのは1号消火栓が2人で操作することを前提としてしているのに対して2号消火栓は1人でも操作できることです。

易操作性1号消火栓の普及が進んでいる

消火栓は消防隊しか使用できないと思っている方もいるかもしれませんが一般の方が使用する前提のものです。

しかし1号消火栓は訓練を受けた人でなければなかなか非常時にとっさにその操作はできないというのが現実です。

1号消火栓は平ホースと呼ばれる布製のホースをいったん伸ばした状態にする必要があります。

そして起動ボタンを押してバルブを開ける。

バルブを開けるときにホースは伸ばした状態で先端のノズルは火元に向いていないとならない、そういう前提です。

実際、屋内消火栓がどれほど使われて効果を発揮しているのか?

調べてみたら初期消火器具等のユニバーサルデザイン化に関する調査研究会報告に参考になる資料がありました。

この報告によると実際の火災時の消火栓の使用率は平均すると消火栓の設置対象物のうち年間平均で2391件の火災がありそのうち328件で消火栓を使用したので使用率は13.7%ということがわかります。

そして、この数値はここで独自に計算しますが鎮圧に効果ありの件数が平均で57件なので2.37%ということになります。

初期消火器具等のユニバーサルデザイン化に関する調査研究報告より

なんとなく思っていた通り、消火についてそこまで大きな効果がある設備ではないが、ないよりはあったほうがよい設備というのが正直なところかなとは思います。

法的な設置基準があるので、そのようなことに関係なく条件に当てはまる場合は設置しなければならないのですが。

能美防災の消火栓の紹介にもあるとおり、現在は易操作性1号消火栓という1人でも操作可能なものも製品として販売されており設置の推奨がされています。

1人で操作できる消火栓の場合、効果を発揮する確率が15%程度は上がる傾向があります。

1人で操作可能な消火栓にはこのシールが添付されています。  筆者撮影

なかなか1号消火栓を非常時に使いこなすのは難しそうだけど易操作性1号消火栓や2号消火栓であればなんとかなりそう…な気がします!