カテゴリー別アーカイブ: 建築設備

建築設備に関する専門技術的なことから一般ユーザーのためになる情報まで

給水ポンプの選定について

給水設備において受水槽から高架水槽までの送水、あるいは受水槽から直接各水栓などへはポンプによって送水されてます。

ポンプを選定するときにどのように考えればよいのか、建物の高さや配管の距離によって変わることは想像がつきます。

計算例を示しながら説明していきます。

croissant. さんによるphotoAC からの画像

直送ポンプの選定について

給水ポンプ選定をする際に能力を決定するために瞬時最大流量と揚程を確認する必要があります。

給水ポンプの送水量は瞬間最大流量以上とし、揚程は算出した揚程以上として選定します。

まず瞬時最大流量の求め方は以前のブログで紹介した給水の負荷流量計算を参照してください。

瞬時最大流量は210L/minとします。

次に揚程ですが下記に示す式で求めます。


H≧H1+H2+H3

H:直送ポンプの揚程[m]

H1:直送ポンプの吸水面から最高位にある器具までの実高さに相当する水頭[m]

2:管路における摩擦損失水頭[m]

H3:最高位にある器具や水栓の必要圧力に相当する水頭[m]


ちなみに揚程とは摩擦損失などを水柱の高さとして表現したものになります。

下に図示した系統について揚程の計算をしてみます。

また、計算を簡略化するために条件を下記のように設定します。

最遠の器具までの配管長は60mとし摩擦損失はその配管長の摩擦損失と同等とします。

単位当摩擦損失は0.35kPa/mとします。

以上の条件での計算例を示します。

H1は図より11.0m

H2については配管長60mで摩擦損失はその配管長の摩擦損失と同等という条件より配管長の2倍に対する摩擦損失をもとめればよい

2=60×2×0.35/9.8=4.3m

3については最高位かつ最遠の位置にある大便器洗浄弁の流水時必要圧力が70kPaより

H3=70/9.8=7.14m

これらの値を代入して計算していきます。

H≧H1+H2+H3

=11.0+4.3+7.14=22.44m

H≧22.44m という結果が得られます。

ポンプ選定図で品番を決定する

エバラポンプのカタログを参照します。

F1300型吐き出し圧力一定・並列交互運転方式で選定していきます。

下記の選定図で給水量210L/min を垂直にとり、揚程22.44mを水平にとって交わる点がどこに位置するかを確認します。

ポンプ選定時 エバラポンプのカタログより

ちょっと微妙な位置になりますが32-5.6Sの範囲に交点が記入されます。

次に下に示した仕様表から32-5.6Sの機種は 32BIPME5.6S となります。

この機種は単相100Vなのでもし三相200Vで選定したい場合は32BIPME5.75 を選定すればよいです。

エバラの給水ポンプユニットF1300型、交互並列運転方式の外観は下の写真です。

エバラポンプ F1300型

とりあえずはポンプの選定ができました。

本音を言うと配管経路の摩擦損失計算をもっと細かくしたかったのですが煩雑になるので今回は簡略化しました。

またの機会に挑戦したいと思います。

排水設備の機能について〜SARSはトイレから〜

コロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)は日本では2類に分類される指定感染症ですが現在は収束しています。

2002年の11月に中国の広東省で初の感染者が確認されてから2003年9月の収束まで30カ国で8098人の感染者と774人の死亡者が確認されました。

感染が広がる中で香港の高層マンションで排水菅の不備により321人が感染したという事例がありますが排水管の不備とはいったいどういうことなのでしょうか。

Alexas_Fotos さんによるPixabay よりの画像

便器から飛沫が飛ぶ可能性

大便器まわりにウイルスが多く存在するという話がありますが、あながち嘘でもなく、ダイヤモンドプリンセス号においてもトイレ周辺から新型コロナウイルスが多数検出されたという報告があったようです。

香港城市大学の研究によればトイレの水を流す際に1回あたり最大80万個のウイルスを含む飛沫が空中に吹き上がるとのこと。新型コロナトイレの糞口感染対策が盲点

つまり排水管に不備などなくとも飛沫は飛んでいるということですがSARSの感染拡大のひとつの原因となった高層マンションでの排水管の不備はさらに多くの飛沫を飛ばす状態になっていた可能性があります。

このSARSの話は「感染症の世界史」という本にあります。

マンションの排水管の不備で(感染源となった)男性の飛沫や糞沫に含まれていたウイルスがトイレの換気扇に吸い上げられてマンション内に拡散した可能性が高い、という記載です。

その事実は確かに書かれていますが排水管の不備というのが具体的にどのようなことだったのかまでは残念ながら書いてありません。

ネットで調べたら何か出てくるかと思いましたが探し方も悪かったのかもしれませんが何も出てきません。

そこで、どのような状態だったことが考えられるかのか予想してみました。

排水管内からガスが逆流

排水は立管から各階で枝配管を分岐させる形で配管します。

例えば最上階のトイレからSARSに汚染された汚物が流れたとした場合、排水立管が全体的に汚染されます。

そして、ここがポイントだと思っていますが、排気のための換気扇を作動させたのはよいが、給気口がない、あるいは給気口はあるが何らかの理由で閉鎖している状態だった場合、室内およびトイレ内は負圧になります。

室内およびトイレ内が負圧の状態になると排水管内のガスを引っ張って吸い上げてしまうことがあります。

マンションの排水管と
排水管内ガスが移動するイメージ

さらに大便器のトラップの封水が便器の不良などで破られ易い状態だったとしたら大便器から排水管内のウイルスを含んだ飛沫が大量に逆流してくる可能性はあります。

321人の感染者を出したという事実を見ると、このような不具合が起こっていたのではないかということが予想されます。

現在の日本国内のマンションの計画はそこまで杜撰なものはないので同じようなことが起きる可能性は低いですが、施工時に室内やトイレ内が負圧になり過ぎないか、各器具のトラップは問題なく機能するかなどは確認しておく必要があります。

たとえSARSウイルスの飛沫でなくとも、大便器からかなりの量の飛沫が飛んでくるとしたら、それはよくないので…。

ダクト内風速と静圧について

ダクト内風速はどう考えて決めればよいのか?入札のために用意された設備図を見ていてたまに風量に対してこれは細過ぎるのではないか、と思われるダクトサイズ選定がされていることがあります。

さすがにそのまま見積もりしてしまったら後からヤバいことになりそうなレベルの場合はダクトメジャーで確認しながらダクトサイズを修正して拾いをします。

適正なダクトサイズを選定するための風速と静圧の考え方とは?

Tama66 さんによるpixabayよりの画像

風速の許容値と静圧

ダクト内風速については用途によって許容値があります。

騒音の許容をどこまで受け入れられるかで決まっているようです。

ダクト内風速の許容値(低圧ダクト) 
空気調和設備計画設計の実務の知識より

私自身は店舗の設備設計をすることが多いですが、だいたい6~8m/s程度が許容範囲かなと思いながら設計しています。

上記の表でも一般店舗、食堂は 9.0m/sまで許容範囲となっています。

静圧というのは、全圧から動圧を除いたもので、ダクトの抵抗、あるいは圧力損失と思えばよいです。

この静圧については基本は1.0P/mで考えて、低圧ダクトでは0.8~1.5Pa/mの範囲で抑えます。

天井ふところがあまりないため、ダクトサイズを絞らなければならない場面があります。

2.0P/m超えてくるとちょっと風量確保ができるか怪しくなってきます。

ダクトサイズを絞った部分で抵抗がかなり大きくなりその先の風量がしっかり出ない場合もあるので注意が必要です。

もう一点、排煙ダクトは20~15m/sと記載がありますが、これはその施設によって設定が違うので確認が必要です。

経験上の話で言ってしまうと排煙ダクトも高圧ダクトとしてではなく低圧ダクトと同様に考えて設計している施設が多く、ダクト内風速を最高で10m/s程度の考えで設計した方が無難です。

現実的に20m/sというダクト内風速だとかなり抵抗が大きくなってしまい希望している風量が得られないパターンが多いです。

排煙ファンが700Pa以上の静圧で設定されているのになぜか計算通りの風量がでないという‥そんな経験もしました。

過去に風量確保ができず苦労した数件の現場が思い出されます。

ほんとうにこれは一度施工してみて風量測定するまで性能が出るかどうか確認しようがないこともあり注意が必要です。

ダクト圧力の分類とダクトの板厚

ダクト圧力の分類とダクト板厚は以下の資料のようになります。

ダクト圧力の分類
ダクトの板厚 角ダクト
ダクトの板厚 スパイラルダクト
すべて空気調和設備計画設計の実務の知識より

高圧ダクトの板厚は低圧に比べて1番手上を選ぶイメージです。

スパイラルダクトはハゼの部分の強度があるため角ダクトのような板厚は要求されていません。

潜熱負荷とは何なのか?

空調負荷計算〜3 すきま風熱負荷〜で書いた内容の中で外気を取り込んだときに顕熱負荷と潜熱負荷に分けて計算すると説明しました。

ところで、顕熱負荷そして潜熱負荷とはいったい何なのでしょうか。

潜熱負荷のイメージ

顕熱負荷というのは例えば外気温33℃の空気を27℃に下げる場合は温度差6℃を下げるための負荷ということになります。

では、潜熱負荷とは何でしょうか。

33℃の外気を27℃に下げる場合、空調機内の熱交換器は20℃程度となっていると想定したとき外気が熱交換器を通る際に外気に含まれている気体の状態である水蒸気が液体の水に変化します。

この状態変化のために熱が奪われています。

見かけ上に顕れる温度を下げているわけではないので潜んだ熱ということで「潜熱」と呼ばれています。

つまり、冷房する際は単純に33℃を27℃に下げる分の熱を奪えばよいのではなく、水蒸気が水になる状態変化のために奪われる熱の分もプラスして冷却しているのです。

ちなみに水蒸気が変化した水は空調機のドレンとして排水されています。

状態変化と熱のやり取りのイメージを以下に図示しておきます。

状態変化と熱のやり取りのイメージ 筆者作成

潜熱については中学校の理科でも話が出てきます。

氷⇒水⇒水蒸気という変化をする場合の時間と温度の関係を簡略的に示したグラフが以下になります。

 状態変化中の温度 中学理科のまとめ より

なんか中学校の時に勉強したかもな、となんとなく思い出す方もいると思います。

グラフが階段の踊り場のように水平になっている部分は氷が水へ、あるいは水が水蒸気へ状態変化してる最中であることを意味します。

この最中は温度変化はしません。

しかし加熱はし続けていて熱は移動しています、このとき移動している熱が「潜熱」です。

空気線図上で変化の動きをみてみる

夏期の空冷空調機による冷房時の温湿度の変化を空気線図上で追ってみると下図のようにななめ左下へ移動するような変化をたどります。

空気線図上で温湿度変化を矢印で図示 夏期の場合 

温度が下がると同時に絶対湿度も下がることがわかります。

また、気温が高いほどこの矢印の角度が急になります、つまり温湿度が高い時期の外気ほど少ない温度変化でも多くの結露水が発生することを意味しています。

次に冬期の温湿度変化をみてみます。

冬期は加湿機能のない通常の空冷の空調機では温度のみが変化して絶対湿度は加湿されないので変化しません。

よって相対湿度は下がることになります。

冬の室内の乾燥の原因のひとつがこの暖房によるものです。

加湿器を併用しなければかなり相対湿度が下がってしまうということになります。

室内の環境として相対湿度は最低でも40%以上にしておくべきです。

一般的な空調機で暖房する場合は室内の相対湿度が30%以下になっていることもあり得ますので冬場は加湿器の併用をしないと室内がかなりの乾燥状態になる可能性があります。

空調負荷計算〜4 内部発生熱負荷〜

仕事で負荷計算書が必要になったときに以前は教科書を見ながら手計算状態で作成していたので時間がかかっていましたが、今は負荷計算の書式をエクセルで資料として作ったので、と言うか作ってもらったのですが、とにかく書式が存在するので計算書作成が速くできるようになりました。

ただし、書式があるのをいいことに何も考えずに数字を代入するだけという考えで作成するとおかしな計算結果になります。

イレギュラーな要素がある場合もあるので、やはり案件に応じて慎重に計算書を作る必要があります。

室内で発生する内部発生熱負荷というものをどこまで考慮して計算するのがよいのか、よく悩みます。

結局、よきにはからうということになるのですがお客様への説明はできるようにしておく必要があるので、どのように考えて計算したかを明確にしておかなければなりません。

TicTac さんによるphotoACからの画像

人体発熱

人体からの発熱は人体表面からの対流と放射による顕熱(SH)と発汗により放熱される潜熱(SL)があります。

下の表のように作業状態や温度帯別で数値が示されています。

作業状態によって顕熱と潜熱の割合は異なりますが合計した全発熱量の数値は一定となることがわかります。

作用温度別人体発熱量
空気調和設備計画設計の実務の知識より

機器発熱・照明発熱

OA機器の発熱量と厨房機器による発熱量の資料が以下になります。

OA機器の発生熱量
空気調和設備計画設計の実務の知識より
厨房機器発生熱負荷原単位
空気調和設備計画設計の実務の知識より

照明発熱については照明器具の消費電力に遅れ係数を掛け算して求めます。

床単位面積あたりの冷房負荷qEは次式で求めることができます。


qE=W・rL

qE:単位床面積あたりの照明負荷[W/m2]

W:単位床面積あたりの照明の消費電力[W/m2]

rL:証明負荷遅れ係数

(露出型0.85 埋込型0.75 だが安全をみて1.0とする場合が多い)


早い話が照明器具の消費電力を調べて合計して遅れ係数を掛け算すればそれが照明発熱による負荷と考えることができるという意味になります。

遅れ係数を1.0で考える場合は照明器具の消費電力の合計がそのまま照明発熱の負荷の数値ということになります。

厨房機器から発生する熱

上記の資料で厨房機器発生熱負荷の表を示しましたが、この表をよく見ると厨房機器の消費電力に対する負荷の量は書いてあります。

なのですが、ガス機器についての表がありません。

結局ガス機器の場合は直火で焼いたり煮たりするわけで、その熱量についてはうまいこと数値化できないということなのかわかりませんが空調用の熱負荷に換算するような表がありません。

ガス機器の厨房機器から発生する熱を空調熱負荷に換算する方法が見当たらない、かつそれを本当にやろうとするとかなり大きな空調負荷になることが予想されます。

ということで、この空調負荷計算の話題になってから何回か同じことを書いていますが、厨房はそこで作業する人に直接冷気を当てるスポット空調で考えてパンカールーバーなどを配置します。

パンカールーバー 筆者撮影

また厨房に設置する空調機の能力は想定で400~500W/m2で考えて選定すればほぼ問題は起きません。

ということで空調熱負荷計算はこの第4回目でいったん区切って他の話題に移ります。

またの機会に熱負荷計算書の書式を紹介できればと思っていますがしばらく換気や衛生などの記事も書きたいのでいつになるかわかりませんが、すいません。

空調負荷計算〜3 すきま風熱負荷〜

居室や火気使用室は換気をするために必ず外気を取り入れる必要があります。

夏期に室内へ外気を取り込んで冷やす際に空気中の気体の状態で存在する水蒸気が液体の水へと状態変化するために熱がうばわれます。

この潜熱負荷が夏期の空調負荷が大きくなるひとつの要因となっています。

にこにこ** さんによるphotoACよりの画像

すきま風負荷の計算式

すきま風負荷には顕熱負荷と潜熱負荷があり以下の計算式によって計算します。


すきま風による顕熱負荷qs[W]を求める計算式は

qs = cp・ɤ・Δt・Qi / 3600

= 0.33 Δt・Qi

すきま風による潜熱負荷qL[W]を求める計算式は

qL= r・ɤ・1000・Δx・Qi / 3600

= 833 Δx・Qi

cp:空気の低圧比熱 1.0×103[J/kg・k]

ɤ:空気の比重量 1.2[kgf/m3]

r:水の蒸発潜熱 2500[J/g]

Δt:室内外乾球温度差 [k]

Δx:室内外絶対湿度差 [kg/kg(DA)]

Qi:すきま風の風量 [m3/h]


上記の式を使って実際に数値を代入して計算してみます。

外気温度34.7℃ 室内温度設定27℃で取り込む風量が3000m3/hの場合の顕熱負荷は

qs = 0.33 Δt・Qi より

qs = 0.33 ×(34.7-27.0)×3000[m3/h] = 7623[W]

となります。

外気の絶対湿度0.0186[kg/kg(DA)]で室内がの絶対湿度が0.01229[kg/kg(DA)] 取り込む風量が3000m3/hの場合の潜熱負荷は

qL = 833 Δx・Qi  より

qL = 833 (0.0186 – 0.01229)×3000[m3/h] = 15768.7[W]

となります。

厨房に取り込む給気もすきま風負荷として計算

すきま風負荷という名前がついているため、あくまですきまから入ってくる風量を計算するイメージかもしれませんが厨房に給気として取り込む外気による負荷もこの計算で求めてしまいます。

上記の計算では風量を3000m3hとしましたが、これは喫茶店などのお店全体の風量を想定しました。

居酒屋などの飲食店の場合は厨房の換気量がもっと大きいため8000~10000m3/h程度にはなります。

さらにここに機器類からの発熱も考慮すると空調負荷がかなり大きくなり、空調機の台数が増えて厨房の天井が空調機だらけになるような設計になってしまう可能性もあります。

このため、厨房は作業員に直接風を当てるスポット空調という考え方で計画されることがほとんどです。

空調負荷計算〜2 透過日射熱負荷〜

空調熱負荷計算の中で方角による差がもっとも顕著に現れるのがこの窓ガラスを通ってくる透過日射熱負荷です。

夏場に西側の窓まわりが異様に暑くなるのはこの透過日射熱の影響によるものです。

ジグザグ さんによるphoto ACからの画像

透過日射熱とは何なのか

室外から室内に侵入する熱は以下の3つに分けて考えることができます。

1.ガラス面の内外温度差による貫流により侵入する熱

2.日射のうち一度ガラスに吸収されガラス温度を高めたあと対流と放射に分かれて侵入する熱

3.ガラスを透過して直接侵入する熱

この3つのうち、2と3を合わせた熱を透過日射熱と呼んでいます。

窓ガラスを通る熱 イメージ図

貫流熱負荷は外部と内部の温度差によって発生するものですが、日射は太陽からの電磁波が直接物体に作用して温度を上昇させます。

太陽光をルーバーなどで遮ることでその影響を抑えることができます。

透過日射熱負荷の計算式

透過日射熱負荷の計算式は以下になります


qG = A・Sn・SC

qG: 透過日射熱量[W]

A: 窓ガラス面積[m2]

Sn:窓ガラスからの標準日射熱取得[W/m2]

SC: 遮蔽係数


日射熱取得のデータを以下に示します。

ガラス窓標準日射熱取得
空気調和設備計画設計の実務の知識より

窓の遮蔽係数などの資料を以下に示します。

窓の遮蔽係数など空
気調和設備計画設計の実務の知識より

簡単にですが計算例を示します。

東京で時刻12時、南面の窓ガラスで透明フロートガラス8.0mm明色ブラインド、ガラス面積A=17.4m2の場合

Sn:ガラス窓標準日射熱取得の表より180[W/m2]

SC: 遮蔽係数は資料から読み取って0.48

各数値を qG = A・Sn・SCに代入すると

qG = 17.4×180×0.48=1503.4[W]

西の窓ガラスからの透過日射熱には気を付けたほうがよい

日射熱取得の表を見てわかる通り、西面と東面の直達成分が大きいことがわかります。

これは日が沈む時間帯と日が昇る時間帯に日射が窓ガラスに対して垂直に射し込むからです。

そしてたいてい問題になるのは西の窓ガラスからの日射です。

東側があまり問題にならないのは朝から午前中にかけてまだ空気が温まりきらない時間帯であることや、朝早い時間は出勤している人があまりいないから、など問題になりにくい要素があります。

西側から日射が射した場合、夏場14時くらいから16時にかけて窓際の温度はかなりの高温になっていき日が沈むまでその状態が続きます。

また躯体や部屋内の材料にこもった熱が室内に放出されるその影響によって暑さが夜まで続いたりすることもあり東側に比較して問題になることが非常に多いです。

ちなみにガラス窓標準日射熱取得の値は東京夏期、南面12時で180[w/m2]に対して西面16時で609[w/m2]なので西面の日射の値の大きさがわかります。

過去に西側の窓ガラスまわりの客席が夏場は暑くて座っていられないというクレームに何度か対応したことがあります。

西の窓際に温湿度計を置いて数値を確認したところ14時ころから温度が上昇し始めて15時から16時のピークにかけて40℃~45℃になる席もありとてもそこに座って過ごすことのできる環境ではありません。

西に窓面が多くある場合は必ず、ブラインドやロールカーテンの設置を予め提案しておかなければいけません。

ロールカーテンを設置し日陰の状態にして、店内空調をしっかり効かせて温度を計測したら30℃以下になり、とりあえず席を使用できる状態にはなったのでお客様に納得していただけましたが。

建築士の製図試験でも西側の日射を考慮して窓の外側に鉛直ルーバーを描き込ませる問題があります。

たまたま通りがかった埼玉県ふじみ野の市役所の西側ルーバーの写真

上の写真のように西側全面に外付けで縦方向のルーバーがあるのが理想的ですが、なかなかこのような形で計画設計が進められる案件はないのが現実です。

その建物や状況に応じてでき得る限りで日射の対策を心がけたいです。

空調負荷計算〜1 貫流熱負荷〜

以前のブログで空調負荷を用途別、単位面積あたりで想定して簡易的に求める方法を紹介しました空調機選定の考え方〜1〜。しかしあくまで想定の数値であり、例えば壁の材質や厚さによって失われる熱量も違えば窓ガラスの面積が異なれば射し込む日射量も異なるので、あたりまえなのですが、単位面積あたりの負荷も建物ごと、さらには部屋ごとに異なります。

よって本来は個別に負荷計算をしなければなりません。

熱負荷をそれぞれの要素に分解して説明していくため説明は長くなります、3~4回に分けて説明になりそうです。

今回はその1として貫流熱負荷を説明します。

kscz58ynkさんによるphotoACからの画像

空調負荷をそれぞれの要素に分解

空調負荷を計算するときそれを要素ごとに分解して考えます。

主に以下に示す要素に分解します。

1.貫流熱負荷

2.透過日射熱

3.すきま風熱負荷

4.室内の内部で発生する熱負荷

機器発熱などは機器が多ければ負荷を追加して考えることになりますが厨房機器については熱量が多すぎて全ての負荷を空調機で処理することはできません、と言うかしません。

それをしようと思うと現実的に設置不可能な空調機の大きさになってしまうからです。

厨房は外気取り込み量が多いので、厨房機器からの熱は排気される空気とある程度一緒に処理されていると考え通常の負荷計算にプラスαで考え、ここは経験値になってしまいますが、おおむね400w/m2~500w/m2で考えて、スポット空調として作業者に向けてパンカールーバーなどで直接風をあてる考えで設計すれば問題になることはほとんどありません。

貫流熱負荷の基礎式

今回のテーマである貫流熱負荷というのは、壁や天井、床などから出て行く熱がどれくらいなのかを意味しています。基礎式は下記になります。


qn = A・U・ETD

qn:壁体の貫流熱負荷 [W]

A:壁・床・屋根などの面積 [m2]

U:その部位の熱貫流率 [W/(m2・K)]

ETD:実行温度差 [K]


熱貫流率が大きいほど出て行く熱が大きいということになります。

断熱がしっかりしている建物や部屋ほど熱貫流率は小さくなります。

上記の式自体は単純なのですがこれを求めるまでには手間がかかります。

Aの値は壁や床の面積なので、図面などから読み取ります。

Uの熱貫流率は壁の素材の厚みそれぞれの熱伝導率とその厚さを調べて計算していきますが、これが少しめんどうな作業かもしれません。

熱貫流率を求める式は下記になります。


U = 1/(1/h0+l11+l22+l33+ ‥‥‥ +l+1/hi)

U:熱貫流率 [W/(m2・K)]

0:室外側壁表面での表面熱伝達率 [W/(m2・K)]

hi:室内側壁表面での表面熱伝達率 [W/(m2・K)]

l:構造を構成する各材料の厚さ [m]

λ:構造を構成する各材料の熱伝導率 [W/(m・K)]


熱伝達率と実行温度差の値

具体的な値が示された資料が以下になります。

・外表面熱伝達率 (h0の値)

空気調和設備設計計画の実務の知識より

・室内側熱伝達率 (hiの値)

空気調和設備設計計画の実務の知識より

・熱伝導率 (λnの値)

・実行温度差 (ETDの値)

・壁タイプ選定表

以上の参考資料は全て空気調和設備設計計画の実務の知識より抜粋

貫流熱負荷を実際に計算してみる

以下の素材で構成される西側外壁の面積100m2の貫流熱負荷を求める。

吹付け硬質ウレタン 20mm

コンクリート 150mm

モルタル 20mm

タイル 8mm 以上で壁が構成されているものとした場合

qn = A・U・ETD より

Aの値は壁面積なので100[m2]

次に熱貫流率Uを求める。

U = 1/(1/h0+l11+l22+l33+ ‥‥‥ +l+1/hi)より

U = 1/(1/8.3+0.020/0.034+0.150/1.6+0.020/1.5+0.008/1.3+1/23)

= 1.16[W/(m2・K)]

次に実行温度差ETDを読み取る

ウレタン20mmコンクリート150mmより壁タイプはⅢ

西側の外壁なので実行温度差の表より3.8 6.4 8.8 12.0 となる。

最悪の条件である12.0[K]を採用する。

qn = A・U・ETD に値をそれぞれ代入すると

qn = 100・1.16・12.0 = 1392[W]

このような計算を各方向の壁と床、天井ごとでしていき、最後に合算して貫流熱負荷の値としています。

スプリンクラー設備について

今回は大型のショッピングモールなどにはだいたい設置されているスプリンクラー設備について説明します。消火栓や消火器など他の消火設備と比較してもその初期消火能力は高く資料によって数値は異なりますが初期消火の成功率はおおむね90%というところです。

cellulaimpazzita さんによるpixabayからの画像

スプリンクラー設備の概要

スプリンクラー設備の設置基準は消防法施行令第12条〈スプリンクラーに関する基準)に示されています。

おおまかに言ってしまうと消防法施行令別表の(4)項と(6)項イ(1)~(3)に分類される百貨店と入院することのできる病院は3000m2以上、(1)~(3)と(5)項イに分類される劇場、映画館、飲食店、旅館、ホテルは6000m2以上で設置が必要です。

その他に地下階や地下街は1000m2以上で必要、11階以上の階には必要となるなどがありますが詳細は建築関係法令集や建築消防アドバイスで確認してみてください。

ちなみにスプリンクラー設備の設置基準には消火栓設備のような耐火建築物の場合の面積を3倍や2倍で考えることができるような緩和はありません。

スプリンクラー設備の概略図を下に示します。

スプリンクラー設備の概略図
閉鎖型・湿式の例になります

湿式のスプリンクラー設備のオーソドックスな形になります。

スプリンクラー設備は水源となる水槽、スプリンクラー用のポンプ、呼水槽、圧力チャンバー、制御盤、各階に設置される流水検知装置、スプリンクラーヘッド、末端試験弁、屋上に設置される補助高置水槽などで構成されます。

補助高置水槽は補助加圧ポンプが設置される場合以外は設置します。

スプリンクラー配管の内部を充水しておくために必要になります。

また、ヘッドが感熱開放して(ヒューズがはじけて)しばらくは配管内の水が放出されるので、その減水に対する補助という意味合いで補助水槽が設置されています。

スプリンクラーヘッドから放水が始まると配管内の圧力が低下し規定値以下になると圧力チャンバーと圧力スイッチが反応してポンプが起動します。

スプリンクラー設備の分類

1.閉鎖型・湿式

配管内が常時、充水加圧されておりヘッドが感熱開放すると同時に放水が始まります。

2.閉鎖型・乾式

流水検知装置として乾式弁を設けています。

流水検知装置の二次側は圧縮空気で満たされており、火災時に感熱開放して圧力が下がるとポンプから水が圧送され散水されます。

寒冷地などの凍結の恐れがある地域で採用される方式になります。

3.予作動式

上記の乾式と同様に通常は流水検知装置の二次側は圧縮空気が充填されています。

火災時に火災感知器に連動して予作動式流水検知装置が開き二次側へ送水されます。

続いて、ヘッドが感熱開放すると散水が開始されます。

誤作動による水損事故があってはならない電算室やサーバールームなどに採用されます。

4.開放式

防護対象の区画ごとに一斉開放弁を設け、その一時側は充水加圧されています。

火災時にこの一斉開放弁を開きそれ以降の全てのヘッドから散水する多量放出方式となります。

開放型は舞台部などに採用されます。

スプリンクラーヘッドの配置

スプリンクラーヘッドの水平方向0.3mおよび下方0.45m以内にものがある場合は散水障害とみなされるため何もあってはいけません。

スプリンクラーヘッドは下記表の半径の円で建物内を包含できるように配置します。

円と円は必ず重なり合わせて散水範囲から外れる箇所が無いように配置します。

スプリンクラーヘッドの性能

スプリンクラーヘッドの放水圧力は0.1Mpa以上とし放水量は一般のヘッドで80L/minとします。

事務室などの一般室には表示温度79℃未満のヘッドで最高周囲温度は39℃の設定になります。

厨房や湯沸し室には表示温度79℃以上121℃未満の周囲温度39℃以上64℃未満の設定のヘッドを取り付けます。

まだ話すべき論点はありますがスプリンクラーについてはいろいろと規定や種類が多くちょっと書ききれないのでこの辺にしておきます。

たまに既存利用の改修現場でスプリンクラーの配管内に充水されたまま工事を進める現場があります。

数年に一度、ヘッドにハンマーが当たってしまったり冷媒配管のロウ付けで使用するトーチの火で感熱開放してしまい水浸しになる現場があります。

80L/minというのは流しの水栓5個をほぼ全開したのと同じくらいの水量ですからあっという間に床一面水たまり状態になります。

スプリンクラーからの放水をくらった職人さんは一瞬で全身ずぶ濡れです。

置いてある資材への影響や下階への漏水による営業補償など大きな損害を出す可能性があります。

配管内に充水したまま作業をする場合はスプリンクラー注意などの札をヘッドから下げるなどして作業する際に近づかないように察知できるような対策が必要になります。

ガス配管サイズの選定について

ガス配管サイズも給水配管と同様に圧力損失を計算しながら決定していくのですが、この計算についてはガス会社が責任を持ってしてくれるのでこれについてはお任せしています。

ですが設計されてあがってきた図面の配管サイズが適正なのかある程度判断できなければチェックができません。

halfway さんによるphoto ACからの画像

ガスメーター接続配管サイズを利用して考える

そこで、ガスメーターへの接続配管サイズを配管選定の目安として利用しています。

本来、煩雑な計算が必要なのですがこの方法を使えばおおよその配管サイズを簡便に求めることができます。

まずガスメーターサイズとガス流量の関係の表とサイズを求めるガス配管のモデル図面を下記に示します。

ガス設備とその設計 を参考に筆者作成
ガス配管サイズモデル 筆者作成

では上記表の数値とモデル図面より実際に配管サイズの選定を考えていきます。


A-B間の配管サイズについて

使用機器すべての合計のガス消費量に対するガス流量となる

合計のガス消費量は

52.3+34.9+7.5+2.5+2.5+14=113.7kw

113.7kw × 860kcal/h/kw =97782kcal/h

ガス流量は 97782kcal/h ÷ 10250kcal/h/m3/h = 9.54m3/h

上記の表より9.54m3/hの時は10号メーターで接続配管径32Aとなり A-B間の配管サイズも32Aとなります。

B-C間は ガス消費量合計99.7kwより上記と同様の計算でガス流量に換算すると8.37m3/h となります。

表の設計流量6.01〜10.0以下の範囲なので32Aとなります。

同様に計算していくとFまで32Aとなります。

最後のF-G間が52.3kwなので流量に換算すると4.39m3/hより表の1.01〜6.0以下の範囲なので20Aとなります。


選定されたガス配管サイズがおかしいと思ったときは

このように簡易的な計算でおおよその配管サイズを判断していくことができます。

冒頭でも述べたように本来は圧力損失計算をして配管サイズを決めていくのですが設備工事全体を管理するような立場の場合はそこまでの計算はしなくてもよいです。

過去に一度だけ、ガス屋さんが選定してきた配管サイズが異様に大きいサイズで、見積も高額となってしまっていた現場があり自分で教科書を見ながら計算をしたことがあります。

ガス屋さんから配管サイズ選定の計算書を提出してもらい、自分の計算と比較しながらこんなに太いサイズになるわけがない、とツッコミを入れて結局、配管サイズを修正してもらいました。

でも、後にも先にもそのようなことはその1回だけです。

その時はたまたまレベルの低い担当者にあたってしまったのかもしれません。

そして、そこまでガチンコの計算はしなくても上記に示した考え方で計算した配管サイズで話をしても十分に打合わせはできますので、おおよその配管サイズを知りたいときには上記の方法を参考に計算してみていただければと思います!