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制気口やフードの面風速について〜制気口はなるべくコンパクトサイズで選定〜

制気口や厨房内に設置されるフードなどの面風速はどのように考えて設定すればよいのか?

大きく取りすぎると風量も大きくなりダクトの納まりが悪くなるため換気設備の設計や施工に支障が出ることがあるので注意が必要です。

厨房のフード 筆者撮影

制気口サイズを風速から設定する

排気設備の吸込口あるいは給気設備の吹出口に取付ける制気口。

このサイズについては大きすぎるものを取付けるとコストの無駄なのと天井の納まりが悪くなるので最低限の大きさで設定します。

ではなにを基準に決めるかと言えば、吹出しあるいは吸込みの風速です。

4m/sを越えると風切り音が発生する可能性があるので基本は3m/s以下で考えます。

計算する時は2〜3m/sで考えればよいです。

制気口には様々な形状があります。

空調技研工業(株)のWEBカタログより

代表的なものとして上の写真のような制気口がありますがルーバーが横に付いている制気口をH、風量調整のシャッター付きのものをHSと呼んでいます。

縦横にルーバーが付いていればVH、さらにシャッター付きであればVHSです。

右上に開口率82%と書いてあります、これは制気口の大きさを決定する上で重要です。

開口率が半分になると制気口は2倍の大きさにする必要があるので。

では上記HSのサイズを求める計算例を下に示します。


風量400m3/hの吸込口として設置するHSのサイズをもとめます。

制気口の吹出し風速は3m/sで考えます。

まず制気口面積Sをもとめます。

S=400m3/h÷3600s/h÷3m/s÷0.82

最後の0.82は開口率です、メーカーカタログなどに書いてありますがわからない場合HSやVHSについては私は0.7として計算しています(今までそれで不具合が出たことはありません)。

よって S=0.0451m2

正方形の制気口だとした場合一辺の長さは平方根でもとめます。

√0.0451=0.212m

きりのよい大きさで選定するので制気口の大きさは250mm×250mmとします。


開口率についてもう少し補足します。

室内の制気口やガラリは開口率70〜80%程度に対して外部に面して取付けるガラリは雨風の侵入を抑えるため開口率は少なめで20〜40%程度です。

計算する前にカタログなどで開口率を確認する必要があります。

厨房フードの面風速はどう考えるか

厨房の換気量計算についてで説明したように火気使用室の換気量はV=40KQやV=30KQなどの式を用いて求めます。

しかし、例えば厨房器具のガス消費量をもとにV=30KQで求めた風量が700m3/hだったとしてもその厨房器具の上部に設置する厨房フードの風量を700m3/hとすることはほぼありません。

厨房フードの風量の大きさは面風速を基準にして決めることがほとんどだからです。

厨房フードの面風速は通常0.3~0.5m/sで設定します。

数字の根拠については厨房設計の知識やさしい局排設計教室などを確認していただければと思います。

参考書などによっては1.0m/sでの設定を推奨している場合もありますが風量が大きくなり過ぎるため実際の設計においてはほとんど採用していないのが現実です。

では面風速0.4m/sとしてフードの風量を求める計算例を示します。


フードのサイズが1500W×850D

面風速0.4m/sとする場合の風量は

1.5m×0.85m×0.4m/s×3600s/h=1836m3/h

設計風量として10%程度の余裕を考慮して

1836×1.1=2020m3/h とします。

フードの面風速をもとにして計算した風量とV=30KQで求めた法的に必要な風量700m3/hを比較します。

2020m3/h > 700m3/hより法的に必要な風量を満たしているので問題なし。


喫煙室の入り口は面風速0.2m/sで計算

東京都福祉保健局の資料に喫煙室の出入口で喫煙室の外から中に向かって0.2m/s以上の風速を確保することが書かれています。

リンク東京都福祉保健局 喫煙室出入口風速

神奈川県の資料に風の流れのイメージがあります。

神奈川県公共施設における受動喫煙防止条例分煙に関する基本的考え方より

喫煙室の入口が800W×2000Hの開口だった場合、0.2m/sの風速を確保したいときに必要な風量は

0.8m×2.0m×0.2m/s×3600s/h=1152m3/h

となります。

喫煙室を作る場合、思ったより大きな風量が必要になります。

なので一軒の店舗でも複数箇所喫煙室を設ける場合は客席の一般排気の何倍もの風量が喫煙室の排気として必要になることも実際にあります。

またこれは建築的な内容ですが喫煙室の出入口を開き戸で計画すると煙があおられて外部に出てしまう可能性が高くなるため引き戸で計画することが推奨されています。

0.2m/sの風とはどのくらいのものなのか疑問に思う方もいると思います。

言葉で説明するのが難しいですが、そよ風以下です。

気流検知器という煙を流して風の流れを調べるものがありますが、それを使ってやっと流れがわかるくらいで皮膚で感じ取れるレベルの風ではありません。

あるいは風速計で計測すれば風速の数値は測ることができます。

ちなみに人間がそよ風と感じているのは2〜3m/sくらいの風です。

今回は淡々と面風速の考え方と計算例などを紹介してみましたがぜひ参考にしていただければと思います!

屋内消火栓の概要〜非常時に消火栓を使いこなせるか?〜

屋内消火栓には1号消火栓と2号消火栓があります。2号消火栓は起動ボタンを押してホースを1人で伸ばすことが可能なので非常時でもなんとか使えそうな気がしていますが1号消火栓は非常時にうまく使いこなせるか?

屋内消火栓設備の概要の紹介と合わせて考えてみます。

himawariinさんによるPhotoACからの写真

屋内消火栓の概要

屋内消火栓の設置基準は消防法施行令第2章第3節第2款第11条にあります。

消防法令別表に建築物の用途の種類分けがありますがその用途と面積によって消火栓設備が必要かどうかを判断します。

例えば(3)項に分類されている飲食店や(4)項の百貨店などについては延べ面積700m2以上の場合設置が必要ですがショッピングセンターなどの複合用途となる(16)項のイに分類される建築物になると150m2以上から設置しなければならないです。

不特定多数が利用することが想定される建築物では規制が厳しくなります。

主要構造部を耐火構造として壁および天井を難燃材料とした場合は面積を3倍の数値として読みかえることもできます。つまり700m2なら2100m2まで緩和されます。

詳細については建築消防adviceや建築関係法令集などの書籍で確認をお願いします。

屋内消火栓の概略図が下記になります。

屋内消火栓設備概略図 筆者作成

地下に水源となる消火水槽と消火栓ポンプを設置します。

ポンプには呼水槽がセットになります。

また起動装置と連動などをするために制御盤も必要になります。

各階に消火栓を設置し屋上に補助高架水槽を設置します。

1号消火栓と2号消火栓はどう違うのか

次に消火栓の種類について、1号消火栓と2号消火栓が存在します。下記がそれぞれの消火栓の外観などになります(能美防災㈱と㈱立売堀製作所の製品)。

能美防災(株)のHPより
(株)立売堀製作所のHPより

ショッピングセンターや中規模以上の事務所ビルなどでみかけたことがあるかと思います。

1号消火栓と2号消火栓の仕様をまとめた表が下記になります。

1号2号屋内消火栓の仕様 日本消火装置工業会の資料を参考に筆者作成

1号と2号の違いとして大きいのは1号消火栓が2人で操作することを前提としてしているのに対して2号消火栓は1人でも操作できることです。

易操作性1号消火栓の普及が進んでいる

消火栓は消防隊しか使用できないと思っている方もいるかもしれませんが一般の方が使用する前提のものです。

しかし1号消火栓は訓練を受けた人でなければなかなか非常時にとっさにその操作はできないというのが現実です。

1号消火栓は平ホースと呼ばれる布製のホースをいったん伸ばした状態にする必要があります。

そして起動ボタンを押してバルブを開ける。

バルブを開けるときにホースは伸ばした状態で先端のノズルは火元に向いていないとならない、そういう前提です。

実際、屋内消火栓がどれほど使われて効果を発揮しているのか?

調べてみたら初期消火器具等のユニバーサルデザイン化に関する調査研究会報告に参考になる資料がありました。

この報告によると実際の火災時の消火栓の使用率は平均すると消火栓の設置対象物のうち年間平均で2391件の火災がありそのうち328件で消火栓を使用したので使用率は13.7%ということがわかります。

そして、この数値はここで独自に計算しますが鎮圧に効果ありの件数が平均で57件なので2.37%ということになります。

初期消火器具等のユニバーサルデザイン化に関する調査研究報告より

なんとなく思っていた通り、消火についてそこまで大きな効果がある設備ではないが、ないよりはあったほうがよい設備というのが正直なところかなとは思います。

法的な設置基準があるので、そのようなことに関係なく条件に当てはまる場合は設置しなければならないのですが。

能美防災の消火栓の紹介にもあるとおり、現在は易操作性1号消火栓という1人でも操作可能なものも製品として販売されており設置の推奨がされています。

1人で操作できる消火栓の場合、効果を発揮する確率が15%程度は上がる傾向があります。

1人で操作可能な消火栓にはこのシールが添付されています。  筆者撮影

なかなか1号消火栓を非常時に使いこなすのは難しそうだけど易操作性1号消火栓や2号消火栓であればなんとかなりそう…な気がします!

空調機選定〜3~困った時はこのメーカーのこの機種で

空調の設計図を見ていると室内機から室外機までが遠すぎる図面がしばしばあります。機種によって室外機までの距離は決まっていて遠すぎると施工不可能の時があります。

また、これだけビジネスの先行きが不透明な状況だと現在どんなに利益が出ていても設備投資は極力抑えようとするお客様がほとんどです。空調設備について困った時の対処法とコストダウン提案について少し考えてみます。

スネーィルさんによるphotoACからの写真

家庭用ルームエアコンの配管延長は20mまで

高付加価値機種やハウジングエアコンなどは30m以上というものもありますが

家庭用ルームエアコンと言えば壁掛形、そして冷媒管延長は20mまでという機種がほとんどです。

正直言って制限された長さを多少超えても能力は出ます。

制限の倍の長さを延長した場合は話は別です、規定の能力は期待できません。

では、制限をちょっと超えて何が問題かと言うと何か不具合があった場合のメーカー保証が効かなくなることです。

冷媒の長さは関係ないのではないかと思われるトラブルでも、決まり事を無視した場合はなんやかんや言われて施工側の責任にされるパターンが多いのでメーカーが決めていることはできる限り守らなければなりません。

話がやや脱線しましたが、では制限長さを超えた冷媒配管長で設計されていた場合どうするか?

まず、考えるのは室外機をもっと近くに置くことができないか、ですが物件によってはどうしても無理ということもあります。

例えば設計図書に広めの事務所にダイキンの壁掛ルームエアコンS40XTFXPが選定されていたとします。冷媒管長の制限は20mです。

家庭用の壁掛ルームエアコンFXシリーズ    ダイキンのHPより

しかし図面を見る限り室外機置場がどう見ても室内機から40m程度離れている…

スケールをあてて確認してみても40m以上ある…これは設計ミスだ!というのは簡単ですが施工側として解決案を提示すれば仕事全体もスムーズに進むし追加金額もいただけるかも…。

ということでダイキンの店舗オフィス用エアコンSZRA40BFVへの変更を提案します。もちろん配管延長50mまでOKです!

店舗オフィス用の壁掛エアコン          ダイキンのHPより

家庭用ルームエアコンと見た目はほとんど変わりません。しかし備わっている機能が違います。

同じ壁掛けの機種でも室外機置場選定の自由度はかなり上がります。

ただし値段は店舗オフィス用の方がやや高額となる場合が多いと思います。

また電源ですがルームエアコンの場合、室内機側から電源を取る場合が多いですが店舗オフィス用は室外機から電源送りする場合が多いので電気の施工業者さんとも工事前に打合せをしてお互いに確認しておいた方がよいです。

室外機置場が狭くてレイアウトできない場合は

広めの店舗や事務所に複数台、例えば10台などの空調機の設置をしたいけど室外機置場が限られている場合、

マルチエアコンを選定すれば室外機は1台にまとめることが可能です。

また、配管延長距離もこの機種が最も長くとることができます。

室外機から最遠の室内機までダイキン、三菱電機など90mまで施工可能、高低差は50mまで対応できます。

ダイキン マルチエアコン RVR Aシリーズ   冷媒配管接続要領  ダイキンのHPより

このマルチエアコンの中でもさらにコンパクトな室外機として販売されているのがダイキンのmachiマルチや三菱電機のシティマルチSです。

ダイキン machiマルチ
通常のマルチエアコンの室外機がマッシブな形状をしているのに対してmachiマルチはスリムな形状をしているので狭小スペースにも納めることができます。
三菱電機 シティマルチS 
こちらもスリムな形状で狭小スペースに納まるのが売りですがダイキンのmachiマルチより能力選定のレパートリーが少ないのが難点

どちらのメーカーも同じようなラインナップだろうかと思いきや三菱電機が8.0kwから16.0kwまでの能力なのに対して

ダイキンは11.2kw〜33.5kwの空調能力までの機種が用意されています。

けっこう22.4kw〜33.5kwの室外機を選定する場面はあります。

ダイキンのmachiマルチの方が選択の幅が広いので正直、重宝しています。

冷暖同時仕様は2管式の三菱電機でコストダウン!

この仕事をするようになって初めて知りましたが、この世の中には冷房と暖房を同時にできる空調機が存在します。

どういうこと?と思った方のために簡単に説明するとカラオケ屋さんなど小部屋がたくさんある業態の場合

ある個室では若者が熱唱して汗をかいているので冷房運転をしているけどある部屋では年配の方がゆっくり過ごしていてちょっと肌寒く感じるから暖房運転をしている

冷暖同時のイメージ  ダイキンのHPより

このような使い方が可能な空調機になります。

通常の空調機を冷暖切替と呼ぶのに対して冷暖同時とか冷暖フリーと呼んでいます。

冷暖切替の室外機から延長する冷媒管はガス管と液管の2管式で配管します。

これに対してほとんどのメーカーの冷暖同時の室外機からは高圧液管と低圧ガス管そして高圧ガス管の3管式で配管します。

しかし三菱電機の冷暖同時だけは業界で唯一2管式です。

ダイキンの冷暖同時空調機は3管式
三菱電機の冷暖同時は業界唯一の2管式

ダイキンの配管模式図の赤丸で囲った部分、ここは室外機から室内の冷媒の流れを制御するBSユニットまでのメイン管です。

3管式になっています。

この部分、図面では短く見えますが室外機まで50m以上離れている場合もあります。

そのメイン管の部分が下の三菱電機の配管模式図では2管式になっているのがわかります。

配管が1本少ないだけでも以外とコストダウンの効果はあり、メイン管50mの延長だとしたら概算で20万円程度のコストダウンにはなります。

たった20万円と思うかどうかは人それぞれですが、数十万でもお客様にとっては大事なお金ですから同じスペックであれば少しでも安くできる方を選ぶべきです。

なので私自身が空調設備設計をしていて冷暖同時の機種を選ぶ場合、メーカー指定がなければ躊躇なく三菱電機をスペックしています。

蛇足ですが業務用エアコンについてはメンテナンスの対応が一番よいのはやはりダイキンです、その次が三菱電機です。

その他のメーカーのメンテンスの対応はあまり良くないという印象を私は持っています。

まず、現場にメーカーの人間が確認しに来るまでに時間がかかり過ぎます。

メンテナンスに割くことのできる人員が多くとれないのかもしれません。

ということで各メーカーの長所を確認して設計や施工に活かしてみてください!

住まいの換気をコントロール

朝晩が肌寒い季節になってきました。なぜかこの家のこの場所で寝ているとすごく冷える感じがする、という時は近くに給気口があるのでは?工夫をしながらある程度住まいの換気をコントロールする方法を考えてみます。

kscz58ynkさんによる写真ACからの写真 

冷たい風を感じたら給気口の開閉で調整してみる

冬場、家の中でレビを見ているときや寝ているときに妙に寒さというか冷たい風のようなものを感じる場合は給気口からの外気流入が影響している可能性があります。

ソファーが置いてあるすぐそばに給気口がある場合もあります。

ご存知かとは思いますが住居の給気口は下のカタログ写真のようなものとなります。

UNIXのHPより

上の四角い給気口はプッシュ式で開閉します。下の丸い給気口は真ん中の部分を回して開閉します、開き具合を変えれば風量の調整も可能です。

寒いと感じた時にはこの給気口を閉めてしまうか調整可能なタイプであれば風量を絞ってしまえばかなり寒さは緩和できます。寒ければ寒い日ほど閉めた時にその違いを感じると思います。

様々なメーカーのいろいろな商品があるので自宅に取り付けられている製品の可能な範囲で調整してみてください。

本来は24時間換気の給気の意味で開けておくべきなのですが、寒い日は仕方がないです。

空気のよどみを感じたら窓を開けて換気しましょう。

また、1ヶ所を閉じたとしても部屋が複数あって複数の給気口がある住宅の場合は他の給気口からは新鮮空気が入ってきます。

屋内側の結露を緩和したい場合は

紺色らいおんさんによる写真ACからの写真 

冬場は朝方に屋内側の窓面で結露することがあります。窓面の表面温度は外気温の影響でかなり低くなります。

例えば室内温度が20℃相対湿度50%の場合、露点温度は10℃程度なので窓面温度が10℃を下回ってくると結露し始めます。

外気温度一桁の朝などはかなり結露する確率は高くなってきます。

特に気密性の高い新築のRC造のマンションなどではこのタイプの結露が起こりやすいです。

では、この結露を緩和するにはどうしたらよいかですが外気温と室内温度の差が小さければ結露は起こりにくくなるので給気口を開けてなるべく外気を取り込むということになります。

すると、冬場の室内温度を下げたくないから給気口を閉じたいのに結露を緩和させたい場合は開けることになり相反する調整をどうすればよいのか、ということになります。

では、どう考えるかですが例えば夜中の間、人が過ごさないリビングは給気口を開けておいて寝室となる部屋は閉めておくという調整をするかです。

あるいは換気扇の強弱で風量の調整、タイマーで朝方の数時間は換気扇の電源をオフにして寒さ対策とするなどが考えられます。

給気口のフィルター掃除をして空気がよどまないようにする

給気口にフィルターが付いているタイプが多いですが、このフィルターも放置していると目詰まりします。

フィルターが目詰まりすると外気の取り込みがスムーズにできないため室内空気のよどみの原因になります。

簡単にですがフィルターなどの清掃方法を以下に紹介します。

以上、換気をコントロールするというより給気口の管理をどうするかという話に終始した感じになりましたが参考にしていただければと思います!

給水の負荷流量計算

ポンプの選定などをする際に給水の負荷流量として瞬時最大流量を算出する必要があります。

流量の確認をするために計算したい、だけど教科書をひっぱり出してきて思い出しながら計算するのがおっくうだと思う方、私もその一人です。流量計算の考え方を簡単にまとめてみます。

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像 

器具給水負荷単位による方法 まず給水負荷単位数の累計を算出

SHASE-S2009などに瞬時最大流量の求め方として4つの算出方法が示されていますがそのうちのひとつの方法、器具給水負荷単位とHunterの同時使用流量のグラフから簡便に求めることができます。

単純化した給水管ルートの図を下に示します。このモデルの給水負荷単位から同時使用流量をどのように求めるか説明しながら話を進めます。

図:給水配管ルートのモデル 事務所と考え公衆用として扱うこととする

次に器具給水負荷単位が示された表が以下になります。

表:器具給水負荷単位      
給排水・衛生設備計画設計の実務の知識を参考に筆者作成

図から器具数をひろい、上記表より器具給水負荷単位を確認して器具給水単位の累計を求めます。実際の計算手順は以下になります。


表より大便器、洗浄弁、公衆用3個所の給水負荷単位は1台当たり10なので

10 × 3 = 30

同様に小便器、洗浄弁、公衆用5台の給水負荷単位は5なので

5 × 5 =25

洗面器、公衆用5台の給水負荷単位は2より

2 × 5 =10

給水負荷単位の累計はこれらの合計なので

30 + 25 + 10 =65

給水負荷単位累計は65となります。


ちなみに洗浄弁というのはフラッシュバルブのことでタンクなしのタイプのハンドルやボタンあるいは自動操作で給水管から直接便器に大量に洗浄水を流すタイプの洗浄の仕方のことです。

グラフから同時使用流量を読み取る

下に示すグラフから器具給水負荷単位数65の時に同時使用流量の数値を読み取ります。

グラフ1:器具給水負荷単位数と同時使用流量を表すグラフ  R.B.Hunter
グラフ2:器具給水負荷単位数と同時使用流量を表すグラフ 器具給水負荷単位数の小さい部分を拡大

曲線1は大便器洗浄弁の器具が多い場合 曲線2は洗浄弁の大便器が多い場合に使用します

赤でマーキングしたように器具給水負荷単位65の位置から上にまっすぐ伸ばした直線と曲線1が交わる点でまっすぐ横を見ていくと同時使用流量は210l/minとなることがわかります。


流量がわかったら配管径や給水ポンプの選定ができるわけですが、そのあたりの話は次の機会にしたいと思います。

また、このグラフの曲線について計算式はないのか?疑問に思うかもしれませんが近似式はあるようですので興味のある方はさらに調べてみてください。

もっと簡易的に流量の概算値を知る方法

水栓をかなり大きく開いたときに流れる流量は15l/min程度です。おおよそ下の写真右から2番目の状態です(1000l/h≒16.7l/min)。

給水栓からの時間当たり流量比較 米子市のHPより(おそらくどこかの衛生器具メーカーカタログの抜粋)

例えば、ある店舗で同時使用する水栓が5個所だと想定した場合に1栓あたり15l/minですから同時使用流量の概算値は下記の計算になります。

15l/min × 5個所 = 75l/min  

上記の結果が得られます。この計算はシンプルですが申請などが絡まない現場において必要最低限の流量の概算値を予測する場合はかなり役に立ちます。

建築設備専門家の方には是非使っていただければと思います!

建築現場にどこまでAIが入り込めるのか?素人なりに考えてみる

建築設備の仕事をしていますが建築現場の仕事にどれくらいAIが入り込んで来ることができるのかよくわからない…。これからの時代AIが人間の仕事を奪うというのはわかるけど、いつまでに、どうなるのかいろいろ本を読みながらAIに関しては素人ながら考えてみました。

AIは建築図や設備図を読み取って見積ができるか?

昨今よく話題になるAI、現在の技術では人間と同じように考えて行動できるようなレベルのAIは実現できていません。しかし、AIには得意分野はあります。その得意分野においては人間の能力をしのぐ効果を発揮しています。

ディープラーニングの登場によって最近はAIによる画像処理技術(パターン認識)はかなりの進化を遂げました。と言っても人間とまったく同じように画像を認識できるわけではありません。でも、ある写真の中に存在する椅子やテーブルや猫や犬など特定の画像を探し出して認識するのは得意です。CTやMRIの画像をスキャンして疾患があるかどうかを判断するという作業は日々サンプル画像を得ることが可能で膨大なデータが蓄積されているためディープラーニングに向いておりAIは自律的に学習して仕事の精度を上げていくことができます。画像診断の仕事はAIが担う一歩手前まで来ているようです。ただしAIはなぜその画像を疾患があると判断したのか、その理由を説明することはできません。画像を何か「意味」があるものとして認識するということはないからです。なので医療の現場においてはあくまで補助的にAIに診断の手伝いをしてもらうという形をとり診断の最終判断は人間がして責任については人間が持つということになると思われます。

ここまでの話を参考に考えますが、では、ディープラーニングをすることによってAIが建築図や設備図を読み取れるようになるかどうか。建築図や設備図を何万枚とAIに読み取らせてもその図面全体の「意味」を読み取ることは現在のAIにはできません。でも、見積に必要な拾いであればかなりできるかもしれません。実際にCADで描いた図面はデータの入力をきっちりしながら描けば壁の面積や配管長さなどデータとしてすぐに出せます、これはAIと呼べるものとは違いますが。

ちなみに入札図面はCAD データではもらえません、なぜなら入札時点で図面データをいじられたくないからです。勝手に変更された図面が受注業者が決定する前の段階で出回ることはあってはならないので防衛手段としてデータを渡すということはされていません。なので、どうしても紙の図面あるいはPDFなどいじれないデータで拾いをすることになります。

よって、見積依頼でもらった図面をスキャンしたら配管長さや器具の個数などある程度拾って自動で見積してくれるAIがあったらいいなということになります。実際にある程度壁や床の面積を拾ってくれるソフトは今もあります。でも、これはAIではなく人間がかなり手をくだして成り立つというレベルのもので、そこまで劇的な作業効率のアップは感じません。

図面にはけっこう曖昧な表現があります。また、印刷がかすれていただけでも図面を読み取れないという事態が発生しそうです。AIが読み取れるように人間が図面を描き直すとしたら、それは効率が逆にダウンしていることになります。あとは図面上のこのシンボルが何なのかなど部分的にわかったとしても全体の意味がわからないとしたら結局、人間がこの図面は建築の平面図だよ、設備の給水設備図だよ、みたいなインプットからいちいちすることになるかもしれない。それなら最初から人間がやるのと変わらないじゃん、という話になりかねない。AIが人間と同レベルで図面の意味を理解して見積まですることは現在は難しそうです。

墨出し作業ができるロボットはすでに存在する

現場で墨出しという作業があります。これは例えば1/100スケールで描かれた図面があるとして、それを実寸で現場の床や壁などに描いていく作業になります、工程の初期段階においてかなり重要な作業になります。もう1年以上前ですが2019年の4月17日に竹中工務店から墨出しロボット実用化のめどがついたという情報がリリースされました。https://www.takenaka.co.jp/news/2019/04/03/index.html

OAフロアの墨出しができるとのことで、OAフロアの支持材の位置を現場の床にプロットしていくという作業ができる、というところまではできるようです。

では、店舗の内装のような複雑な間取りの墨出しをロボット単独でできるようになるのかどうかということです。OAフロアは決まった形のものを敷き詰めるイメージですから墨出しとしては比較的単純な作業になります。でも、店舗の内装はかなり複雑です。アールのついた壁がデザインされていることもある、図面で描かれた内容に従って部屋の大きさを確保しようと思っても躯体の歪みがあって微妙な調整が必要になったりします。お客様の要望をかなえるためにはどう墨を出すのがベストなのか悩む現場監督を何度も見てきました。AI技術を駆使してこれらの仕事はできないのか、と思いますが墨出しロボットがお客様の要望まで考慮しながら墨出しをすることはありません。そのような意思をAIは持っていませんし、それをインプットすることは現在の技術では不可能です。できたとしても遠い未来の話になります。そもそもAI自体が意志を持つことはありません。あくまでAIは人間が作り出した道具であってそれ以上でもそれ以下でもありません。

それでも単純な作業はできるところまで来ているとしたら、基準となる墨をザックリ出してもらうという補助的な仕事まではしてもらって複雑な部分や微妙な調整が必要になる部分は人間が行うという使い方をしていけば良いのかもしれません。うまく仕事の棲み分けをしていけば効率は上がる可能性がかなりある、だからスーパーゼネコンも開発に力を注いでいるのだと思います。

建築現場の作業は見た目よりかなり複雑だAIはこなせるのか?

セキスイハイムが住宅のユニット工法の組み立て作業においてにロボットを取り入れています。全ての作業をロボットでできるようになったわけではないようですが効率は上がった、そこにかけていた時間を付加価値の高い作業に振り替えることができるようになったとのこと。また、三和シャッターは壁などに使用するALC(軽量気泡コンクリート)にかわる施工支援ロボットで施工可能な耐火間仕切用耐火パネルを売り出している。これらは年々、現場作業従事者が減っていく中で人材不足を補うための解決策として開発されています。私など状況をただ手をこまねいて見ているだけの人間からは素晴らしいアイデアだと感心してしまいます。

一方、AIというものが現場に取り入れられているのかどうか、です。それができている状態とはAIを頭部に装備したヒューマノイドが人間や図面の指示に従って自立して複雑な現場作業をこなしている、そういうことになりそうですがこれは現在の状態からしたら到底無理なレベルの話だとわかります。

AIという言葉を聞くと、私などは人間に変わってなんでもできるものを想像してしまっていましたがAIに関連する本を何冊か読むと、それは妄想に過ぎないことがわかります。「東ロボくん」という東京大学受験に挑戦するAIを開発するプロジェクトを率いる新井紀子という方の著書に人間の知能と同等の機能を果たす人工知能はできるかどうかについての記述があります。コンピューターがしているのは四則演算なので人工知能を実現するには人間の知的活動を四則演算で表現するか、それができていると感じる程度に近づけることだとあります。そしてそれができるかどうかについては明確に、遠い未来はともかく近未来にそれができることはないと述べています。それはなぜなのか知りたい方はは「AI vs教科書が読めない子供たち」を読んでいただければと思います。

ということで結局、AIが現場で大活躍というのはただの妄想。ですが人間に変わって様々な作業の補助をしてくれる可能性はかなりある。建設業においては人手不足を補う一つの方法として真剣に取組んでいかなければならないのだろうなと、そう思います。

悩ましい建築設計

新国立競技場の一悶着

 今年はオリンピックが日本で開催される予定でしたが来年になりましたね。6歳の子供がいるので競技を見せてもよいかなと思っていましたがチケットの抽選はもう終わっているようで、まあいいかなという気持ちになりつつあります。もともとオリンピックというイベントにそこまで興味があるわけでもなく、このような打上花火的なイベントを開催する予算があるのであれば違うことに使ったほうがよかったのではないかという考えが拭いきれない方なのでテンションがそんなに上がらない、というのが正直なところです。

 2013年9月に2020年のオリンピック開催国が日本に決まり国立競技場のデザインがメディアにもとりあげられました。もうすでに忘れ去られている感もありますが選ばれたのはイランの先鋭的な建築家、ザハ・ハディド氏の案でした。全体が甲殻類を思わせるようなデザインですごいなと思っただけで私自身はこのデザインが公表されて特に何か大きな問題を抱えた案だとは思っていませんでした。日本の多くの人は著名な建築家も審査員にいることだし、この案で進むのだろうなと思っていたはずです。しかし様々な情報を確認していくうちに自分の無知や見識のなさを自覚するとともに、ザハ氏の案がそのまま実現することはこの国にとって有益なことなのか、公的な資金を投入するに値する計画なのか疑問を持つに至りました。

 この案では建築に3000億円という多額な費用がかかるという試算がなされその他の問題も同時に表面化していきました。建物全体に架かる象徴的なキールアーチという梁の構造が現実的には施工不可能だという話も出てきました。キールアーチが巨大すぎて地下鉄にぶつかってしまうがどうするのか、その解決策は示されていませんでした。また、そもそもそのデザインが周囲の建築物やそれらが含有する歴史的な意味とマッチングしない、施設が大きすぎてオリンピック後に競技場を継続的に使用するにあたり、席を埋めるだけの大きなイベントは多くは存在せず維持費が財政を圧迫する可能性が大きいなど無視できない問題点がいくつか指摘され日本中で様々な議論がなされました。結局、2015年7月17日に安倍晋三首相によって新国立競技場のデザインは白紙撤回され再度コンペが行われた結果、建築家の隈研吾氏デザイン案が選ばれ、現在の新国立競技場が完成に至りました。 建築家の槇文彦氏はザ、ハ・ハディド案に対して2013年8月に異議を唱える論文を発表していました。彼の主張として注目すべきところは”外苑は当時の市民に広く解放されたスポーツ施設を持った地域であるが、主役は絵画館とイチョウ並木でありスポーツ施設は脇役に過ぎないことがはっきりわかる”という部分。そして異様に大きな新国立競技場とその脇にポツリと存在する絵画館のパースを提示してこの指摘をしています。大きすぎる、新国立競技場は周囲の建物、環境との調和を無視していることが一目でわかります。

ザハ氏の案 手前の絵画館とのミスマッチが指摘された

 このコンペ案はあたえられたプログラムに基づいてデザインされたものでありプログラムでは8万人の観客を収容する全天候型の施設が要求されていました。8万人もの動員をし得るイベントはロックコンサートくらいしか存在せず、それも年に何回開催可能なのかわからない。またプログラムによるとこの施設の総床面積は29万m2とされており国立代々木競技場の8倍、国際フォーラムの2倍以上の面積であり管理に必要な人員や消費エネルギーなどこれらをまかなう収入について十分に考慮されたものであったか疑問がもたれていました。問題の核心はザハ氏のデザインではなくコンペの募集要項であるプログラムの内容であったと言えます。建築エコノミストを自称する森山高至氏もその著書「非常識な建築業界 どや建築という病」で新国立競技場の一連の流れを見て、嫌な予感を覚えたと記しています。

 その理由は、それまでに森山高至氏が見てきた日本全国の公共施設に関する設計コンペの失敗例と酷似していたからだと述べています。要求がふくれあがる一方でそれらの要求の妥当性や実現性は検討、吟味されることなく設計の条件として提示される。審査する側もその建築物の歴史や地域との関係性や経済性、継続性などの深い考慮、検討なしにデザインのインパクトや著名な建築家のデザインであるかどうかをクローズアップして審査するのみで、失敗したとしても誰も責任をとるつもりもないという状況。このようなやり方が一過性のお祭り騒ぎのあとに莫大な維持費という負の遺産を地方の自治体などにいくつも残してきたと言います。

建築の設計者に求められるものとは

建築の設計者に求められるものは何なのか、それは昔から変わらないはずなのですが近代の歴史のどこかで歪んだ方向に建築関係者の考え方が変わってしまったのかもしれません。建築の設計者に求められるものは構造物として問題のないことや設備的に機能するものとすることなどは当然のこととして、それに加えてその建築物に求められる歴史的な意味における連続性を考えることや、地域性との融和、建物の使用者の利便性、その建物に関わる人たちの利益、発注者の意図の尊重、などそれらいろいろな思いを調整して形にすることであり、建築とは極めて公的な行為であり多くの制約のなかに成立しているものです。私的な芸術性の発露などは本来関係のないことのはずなのですが、いつからか表現建築家と呼ばれるような人たちの私的な自己表現を建築物に反映させることがまかり通るようになってしまったということなのかもしれません。ザハ氏は日本の神宮前の歴史や周囲の建築物についてどれほどの理解があったのかはわかりません。この周囲と調和しないデザインを斬新的だと褒めて予算が膨大になる試算があったにもかかわらず採用した審査員の側、しいてはこのコンペのプログラムを考案した役人達にも大きな責任があったはずです。ザハ氏はこのコンペに踊らされた一人の犠牲者とも言えます。

 設備設計者の目から見て建築の設計者の言うことは無理難題だと思われることがかなりあります。それでもできるかぎり設計者の意図を尊重して納まりを調整して、どうしても無理な部分は意匠的に妥協をしてもらったりします。私が関わってきた設計者はこういった面倒な調整事を一緒に考えてくれる、あるいは、こちらの考えをある程度尊重して調整してくれるまじめな設計者がほとんどだったと思います。まあ、中には設備の納まりなんか知らないよ、というスタンスの方もいらっしゃいます。その場合は、現場の監督や職人と打合せしながらなんとか納めるところは納めて、物理的にどうしても無理なところは、とにかく設計者に言って承認をもらうということでやってきました。各方面に対する調整事はやはり面倒な仕事だと思います。

 建築の設計は公的な意味合いの強い、私的な表現の入り込む余地は本来ないものと言いましたが、丹下建三が設計した代々木体育館のように公的な要求を満たしつつ設計した結果が芸術的にも高い評価を得る建築物となったという例もあります。そんな奇跡を起こすことを夢見ながら、明日からまたやっていきましょう。でも設備屋さんにも優しくしてね、というお願いもしつつ。

建築系資格の難易度

建築系資格の難易度について

 一昨年(2018年)の10月中旬から一級建築士の資格取得のために勉強を続けていました。例年10月の中旬に二次試験が実施されます。昨年は10/13(日)実施予定でしたが10/12に水害等の大きな被害をもたらした台風の影響で関東圏などでは試験が延期になり12/8(日)に再試が実施され、試験地が東京だった私は最近ようやく試験勉強から解放されました。1年と1ヶ月弱の期間、ずっと追い込まれた気持ちで過ごしてきました。今はまだ合否の結果は不明ですがとにかくゆっくり休めることがとてもありがたく思えます。

 世間一般的に一級建築士は難関資格であると言われています。受験した実感として難関と言えるかどうか、まずは私の肌感覚の話になりますが、かなり難しかったです。まさに難関資格と言われるに相応しい難しさでした。ではどう難しいのか、なぜ難しいと感じたか?建築設備士や一級管工事施工管理技士と比較しながらもう少し詳細を分析してみます。

合格率などの検証と受験した実感

 一級建築士 建築設備士 一級管工事施工管理技士の合格率などの数値の比較を簡単にまとめてみました。

一次試験
受験者数
一次試験
合格者数
一次試験
合格率
二次試験
受験者数
二次試験
合格者数
二次試験
合格率
総合合格率
一級
建築士
平成29年
26923494618.4%8931335637.7%10.8%
一級
建築士
平成30年
258782587818.3%9251382741.4%12.5%
建築設備士
平成29年
290784128.9%111258052.2%18.1%
建築設備士
平成30年
298393031.2%124264652.0%19.4%
一級管工事
平成29年
17132757944.2%10158642163.2%32.6%
一級管工事
平成30年
16473547133.2%7608401152.7%21.6%
一級建築士および建築設備士のデータは建築技術教育普及センターのホームページを参考に、一級管工事施工管理技師は総合資格学院のホームページを参考に筆者がまとめたものです。

 受験した実感から言っても一級建築士が最も熾烈な競争であることはわかっていましたが数字を見てもやはり一級建築士が最も合格しにくい資格であることがわかります。大雑把に言ってしまうと一級建築士は9~10人に一人、建築設備士は5~6人に一人、一級管工事施工管理技士は3~4人に一人が合格するという捉え方ができます。上位10%程度に入ることは例えば学生の頃に一学年が200人いたとして20位~30位以内程度の成績を修めることだと想像してみてもそんなに簡単なことではないとわかります。

 一級建築士試験の難しさの要素として私自身が感じたのは、一次試験の内容において特に言えることですが試験問題で問われるテーマが他の資格と比較して広範囲にわたっていて覚えなければならないことがとにかく多いということです。かつ、その知識はただ覚えただけでではなく確実に理解していないと対応できない問題が多いと感じました。建築設備士の試験も一級管工事施工管理技師の試験もあたりまえですが主に建築設備やそれに関する施工の知識を問われます。建築一般知識を問う問題もありますが一級建築士ほど広範囲の知識が問われる印象はありません。建築設備関係の仕事をしている人であれば仕事上の常識と身につけた知識にプラスして過去問題を反復練習すれば十分対応可能な知識が問われる印象です、だからと言って簡単だということではありませんので注意は必要ですが。一方、一級建築士で建築の一般的な知識を問うのは5科目に分かれた中の「計画」になりますが、この科目の問題で過去の建築作品について問われる問題が毎年5門程度出題されます。この類の問題は過去問題の反復練習でかなり対応はできるのですが、極論になるかもしれませんが出題者の考え方次第で世界中に存在する全ての建築作品を出題のネタとして使うことが可能です。勉強する側からすると、いったいどこまで勉強して、どこまで対応すればいいのか困惑します。ごく一部の建築関係者しか知らない建築作品を出題のネタにしてそれを知っているか知らないかを問うて意味があるのかどうか疑問に思ってしまいますが、受験する側はこういうものだと割り切って時間と記憶力の許す限り暗記するしかない、ということになります。試験当日は見たことも聞いたこともない建築作品が取り上げられていた場合、それはそれで置いておき、選択肢の中の自分が知っている内容を手がかりに正答肢がどれなのか判断することになります。

一級建築士の一次試験の科目はⅠ計画20問 Ⅱ環境・設備20問 Ⅲ法規30問 Ⅳ構造30問 Ⅴ施工25問 の5つに分かれていて合計125問 500選択肢。ちなみに建築設備士の場合は 建築設備50問 建築一般知識30問 建築法規20問 の3つに分かれていて合計100問 500選択肢 です。科目を見ただけでも一級建築士として学習しなければならない範囲の方が広いことがわかります。よく言われているのはⅡ環境・設備 Ⅲ法規 Ⅳ構造 の3教科は確実に点数を取らなければならないということです。Ⅰ計画とⅤ施工はその年によって時流を考慮した内容が出題されたり比較的出題内容が流動的で過去問題をやり込んでも対応できない問題が出題される傾向があります。Ⅲ法規は関係法令集を持ち込めるので確実に得点源にできる可能性があるのとⅣ構造は法改正の絡み以外は内容が流動的に変わることはほぼない、Ⅱ環境・設備も同様に最新の用語を問うような問題以外は過去問題の変形が出題されるのでこの3教科を確実に得点することが重要視されます。

とは言っても人によって得意、不得意があるのでそんなにうまくはいかないのが世の常です。私は法規がどうにも苦手で試験直前の模試でも7割得点するのがやっとで本試験でも23点と8割に届きませんでした。結局、得意教科の点数を伸ばして不得意教科の失点をいかになくすかということが大事になります。Ⅰ計画やⅤ施工が得意な方も当然存在して、得意教科で得点を伸ばして総合の点数で合格ラインをクリアするというパターンもあるので自分の得意、不得意を把握して作戦を考えて試験にのぞむ必要があります。

 気をつけなければならないのは各科目毎で足切りラインがあるということです。平成30年の試験についてはⅠ計画11点 Ⅱ環境・設備11点 Ⅲ法規16点 Ⅳ構造16点 Ⅴ施工13点 でした。この足切りのラインはほとんど毎年変わらないと思うので受験する方はなんとなく頭の片隅で覚えておくとよいと思います。各科目半分超は得点しなければ総合で合格点をクリアしていても不合格となるので、結局のところバランスよく得点できるように全ての教科の勉強を合格ライン目指して勉強するはめになるという…楽に得点できる方法があればいいのですが、なかなかうまい話はないというのが現実です。

一級建築士試験の二次試験 製図の難しさ

 私は現在44歳です。建築士の資格取得のために本格的に勉強し始めた一昨年の10月の時点では42歳でした。40代の誰しもが当てはまると思いますが20代のころや30代の前半のころと比較して体力、記憶力、集中力などいろいろな機能が低下していることを実感していると思います。一番わかりやすいのは体力の低下でしょうか。通勤時に若い人の歩調が早く、追い抜かれることが多くなったことや子供と遊んでいても子供の走るスピードについていけないなど…目に見えてわかりやすいので体力が落ちているという事実はかなり実感しやすいと思います。

なぜ急にこのようなことを言うのか、その理由は一級建築士の二次試験の製図は体力勝負だとよく言われるからです。6時間30分の時間内で問題文の読み取りからプランニングをしてA3用紙にびっしり記述の回答を書き込んで図面も形にするところまでやりきらなければならない試験です。やってみるまではわからなかったのですが時間内で満足いくものを完成させることは至難の業です。図面の評価はランクⅠ~Ⅳの4段階に分けて評価されます。ランクⅠが合格ということになるのですが、私は資格学校で描いた図面はすべてランクⅣでした。正直に言ってこの製図という試験はかなり苦手だと感じています。当然ですが設備図を描く場合とも考え方は違うし、設備の絡みもあるのですが実務と違って試験用の図面のための約束事をとにかく守るという考え方がメインで試験においては実務での経験は、そこまで役に立ちません。言い訳になってしまう部分もありますが何よりも、体力、集中力、記憶力の衰えを実感する中でこの製図の試験を若い人達と同レベルでこなすことがそもそも困難であることを痛感しました。

 合格者の年齢別の割合も一次の学科試験においては40歳以上が20%に対して二次の製図試験では14.1%に下がります。一方、27歳~29歳および30歳~34歳の学科の合格者の割合は20%程度に対して製図は25%に上がる傾向となっており製図試験で最も合格者数の割合が高い年代はスポーツ選手が経験と体力を合わせた力がピークになる年代と重なって見えます。資格学校で6時間30分での模試の実施を何度か繰り返しますがどう頑張っても若い人達のスピードについていけない自分にもどかしさを感じ続けていました。隣で試験を受けていた若い女性の方がよほど私よりも容量がいいのは明白でした。年を重ねて良くなることもありますが、試験に関して言えば年をとって有利になることはほぼ何もないと言えます。特に製図試験という体力勝負にも近い試験においては年をとればとるほど不利なると考えていて間違いないです。でもだからと言って諦める必要性はまったくないですし、私も今年だめだとしても不利な条件の中でどう戦うかを再度考えながらあと2回、挑戦してやりきるしかないと思っています。

資格取得は30代前半までに済ませる方がよい

試験の難易度の話から少し脇道にそれた感はありますが、結局のところ資格取得は20代かあるいは30代の前半までのまだ体力、記憶力が衰えていない時期に済ませておくのがベターです。できれば勉強時間が自由にとれる未婚の時期での取得が理想的です。結婚している場合は子供ができるまえまでに取得したほうがよいです、子供が出来た場合思っている以上に自分で自由に使える時間は減ります。あとは資格学校に通うのも配偶者とよく話し合って合意のうえでなければ成り立ちません。勝手に自分で決めて申し込んで事後報告で済む家庭はそれでもよいですが、時間もお金もかかるものなので最低限家庭内で合意したうえでことを進めないと試験勉強自体が続けられない事態に陥る可能性はあるので注意が必要です。また特に一級建築士試験は勉強時間を多くとらなければ合格が困難ですから予想以上に配偶者をはじめとする家族への負担も大きくなると思っておいた方がよいです、特に小さい子供がいる家庭においては。言葉は悪いかもしれませんが資格試験への挑戦は一種の賭け事でもあると思っています。中毒性があります。自分の能力を超えた試験の挑戦を何年も繰り返して資格学校に多額のお金を注ぎ込むという方もいるようですが、それは資格への執着に他なりません。何回挑戦するか、時間的にどこまで許されるか、金額的にどこまで許されるか、自分で判断してここまではやるけど、この条件超えたら諦めるというラインは決めておいたほうがよいです。試験にこだわって時間とお金を無駄に使うよりも他の時間に使ったほうがよほどよい人生を送れる可能性は十分にあるので。

 お役に立つ情報かわかりませんが、自分が試験を受けようと思った時にネットを調べてみて、資格の難易度について実感のこもったコメントが意外と少なかったので書いてみました。