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結露対策〜3〜空調配管の結露

夏場の結露について、前回は天井内ダクトの結露について話しました。

今回は空調の冷媒管やドレン管の結露について、発生する原因と解決方法などについて考えていきます。

saki.zaki さんによるPhotoAC からの画像

断熱材の施工不良による結露

天井内配管の冷媒管が夏場に結露してしまいメンテナンス依頼が来ることはある程度の頻度であります。

これまで、いろいろな現場を見てきましたが原因として頻度が多いものをいくつか以下に列挙します。

冷媒管の断熱不良

冷媒管の一部分、断熱材の継ぎ目などで隙間ができてしまい銅管が露出状態になっていることがたまにあります。

冷媒管は長い距離を配管する時は当然、単管を継いでいくのですが断熱材も同様に継いでいきます。

断熱の継ぎ目を接続用テープで巻くのですが人間のやることなのでたまに巻き忘れがあって見逃したまま引き渡して隙間ができたままになっていることがあるのです。

そんなに環境が悪い物件でもないのに冷媒管の結露でメンテナンスが入ったらまず、この断熱の不良を疑ってみた方がよいです。

冷媒管の断熱が潰れている部分で結露

躯体の開口部に冷媒管をまとめて何本も通した結果、断熱材が潰れてしまい断熱材としての機能が発揮できず結露してしまうことがあります。

貫通部付近が結露水でビショビショになっている現場をこれまでにいくつか見てきました。

100φの開口部に9.5×15.9の冷媒管2系統など開口の大きさに対してある程度余裕をもって計画した方がよいです。

また、冷媒管が束で配管されている場合も吊りバンドで支持された部分で束の下の方にある配管の断熱材が重さで潰れてしまうため、結露することがあります。

その他、ダクトなどと接触して潰れるなど、とにかく断熱材が潰れた状態になっていないかの確認は大事です。

ドレン管の断熱不良

ドレン管も冷媒と同様に断熱の不良で結露します。

やはり断熱材の継ぎ目などで隙間ができてVP管が直接湿った空気に触れる状態だと結露します。

ただ、ドレン管は冷媒管ほど低い温度ではないのと冷媒管のように束にして配管することはないため問題となる頻度は比較的低いです。

温度差が大きければ断熱材の表面でも結露は発生する

断熱材の施工不良が原因の場合は、結露の発生箇所は局所的です。

結露水が配管伝いに拡がって、断熱の不具合がある部分からかなり離れたところから結露水が出ている場合もありますが。

断熱材の継ぎ目の隙間や潰れている部分を発見してそこを直せば解決することがほとんどです。

しかし、天井内が高温多湿になるような現場で冷媒管全体が結露してしまう事例もあります。

断熱材の表面温度が天井内の露点温度より低ければ結露は発生します。

天井内が高温多湿のため冷媒管全体が結露してしまった例 支持材の全ネジが断熱材と接触している部分も気になります

断熱材の表面温度がいったい何度くらいになっているのか、いまいち想像がつかないと思います。

内部の冷媒温度が何度かにもよりますが外側の温度が30℃前後の時に表面が20℃前後になっていることはあり得ます。

断熱材の表面温度は計算式からある程度予測することはできます。


熱貫流量 q=(θ0r) / (1/α+x/λ)

断熱材の表面温度 θs=q/α+θr

q:貫流熱量[w/m2]

θ0:断熱材の内側の温度[℃]

θs:断熱材外側の表面温度 [℃]

θr:断熱材外側の気温 [℃]

x:断熱材の厚さ [m]

λ:断熱材の熱伝導率 [w/m・k]

α:断熱材の熱伝達率 [w/m2・k]

保温の場合(暖房時)はα=12 保冷の場合(冷房時)はα=8 とする


断熱材の内側の温度θ0を冷媒管温度と同等として3℃、断熱材外側の気温θrを天井内の気温30℃と想定して計算してみます。

断熱材はGW24K 熱伝導率は0.038とします(空気調和設備計画設計実務の知識より)。

断熱材の厚さは20mmとします。

このとき、各数値を上記の式に代入していくと

熱貫流量 q=(3-30)/(1/8+0.02/0.038) =-41.5[w/m2] ※保冷なので値がマイナスになります。

断熱材の表面温度 θs=-41.5/8+30=24.8[℃]

このように計算である程度表面温度が予測できます。

ちなみに、上記表面温度のときに天井内気温30℃で相対湿度80%だった場合に結露するかどうかですが、露点温度は26℃程度なので断熱材表面が24.8℃だとしたら結露してしまいます。

この場合の解決策としては断熱材の厚さをもっと厚くすることや天井内の気温と湿度を下げるために天井内を空調する、あるいは室内の空調された空気を天井内に循環させるなどが考えられます。

水分が含まれた断熱材の機能は著しく低下してしまう

断熱材に水分が含まれてしまうとその断熱機能は著しく低下してしまいます。

断熱材が水浸しの状態になっているとき、仮に水と同じ熱伝導率になってしまっているとします。

条件は上記と同様、断熱材内側3℃、天井内気温30℃とします。

水の熱伝導率は0.582[w/m・k]で代入していきます。

すると熱貫流量が-169.4[w/m2]

表面温度は8.8[℃]

という計算結果になります。

この温度ではもう結露はとまりません、断熱していないも同然の状態になってしまうことがわかります。

しかも断熱材は一度水分を含んでしまうとなかなか乾かないため、条件が悪い日があるとすぐに結露が発生するようになってしまいます。

今回はこのあたりまでにして、次回は露点温度を求める計算式やその他の結露事例などについて話したいと思います、たぶん次回で結露対策最終回になる予定です!

空調負荷計算〜1 貫流熱負荷〜

以前のブログで空調負荷を用途別、単位面積あたりで想定して簡易的に求める方法を紹介しました空調機選定の考え方〜1〜。しかしあくまで想定の数値であり、例えば壁の材質や厚さによって失われる熱量も違えば窓ガラスの面積が異なれば射し込む日射量も異なるので、あたりまえなのですが、単位面積あたりの負荷も建物ごと、さらには部屋ごとに異なります。

よって本来は個別に負荷計算をしなければなりません。

熱負荷をそれぞれの要素に分解して説明していくため説明は長くなります、3~4回に分けて説明になりそうです。

今回はその1として貫流熱負荷を説明します。

kscz58ynkさんによるphotoACからの画像

空調負荷をそれぞれの要素に分解

空調負荷を計算するときそれを要素ごとに分解して考えます。

主に以下に示す要素に分解します。

1.貫流熱負荷

2.透過日射熱

3.すきま風熱負荷

4.室内の内部で発生する熱負荷

機器発熱などは機器が多ければ負荷を追加して考えることになりますが厨房機器については熱量が多すぎて全ての負荷を空調機で処理することはできません、と言うかしません。

それをしようと思うと現実的に設置不可能な空調機の大きさになってしまうからです。

厨房は外気取り込み量が多いので、厨房機器からの熱は排気される空気とある程度一緒に処理されていると考え通常の負荷計算にプラスαで考え、ここは経験値になってしまいますが、おおむね400w/m2~500w/m2で考えて、スポット空調として作業者に向けてパンカールーバーなどで直接風をあてる考えで設計すれば問題になることはほとんどありません。

貫流熱負荷の基礎式

今回のテーマである貫流熱負荷というのは、壁や天井、床などから出て行く熱がどれくらいなのかを意味しています。基礎式は下記になります。


qn = A・U・ETD

qn:壁体の貫流熱負荷 [W]

A:壁・床・屋根などの面積 [m2]

U:その部位の熱貫流率 [W/(m2・K)]

ETD:実行温度差 [K]


熱貫流率が大きいほど出て行く熱が大きいということになります。

断熱がしっかりしている建物や部屋ほど熱貫流率は小さくなります。

上記の式自体は単純なのですがこれを求めるまでには手間がかかります。

Aの値は壁や床の面積なので、図面などから読み取ります。

Uの熱貫流率は壁の素材の厚みそれぞれの熱伝導率とその厚さを調べて計算していきますが、これが少しめんどうな作業かもしれません。

熱貫流率を求める式は下記になります。


U = 1/(1/h0+l11+l22+l33+ ‥‥‥ +l+1/hi)

U:熱貫流率 [W/(m2・K)]

0:室外側壁表面での表面熱伝達率 [W/(m2・K)]

hi:室内側壁表面での表面熱伝達率 [W/(m2・K)]

l:構造を構成する各材料の厚さ [m]

λ:構造を構成する各材料の熱伝導率 [W/(m・K)]


熱伝達率と実行温度差の値

具体的な値が示された資料が以下になります。

・外表面熱伝達率 (h0の値)

空気調和設備設計計画の実務の知識より

・室内側熱伝達率 (hiの値)

空気調和設備設計計画の実務の知識より

・熱伝導率 (λnの値)

・実行温度差 (ETDの値)

・壁タイプ選定表

以上の参考資料は全て空気調和設備設計計画の実務の知識より抜粋

貫流熱負荷を実際に計算してみる

以下の素材で構成される西側外壁の面積100m2の貫流熱負荷を求める。

吹付け硬質ウレタン 20mm

コンクリート 150mm

モルタル 20mm

タイル 8mm 以上で壁が構成されているものとした場合

qn = A・U・ETD より

Aの値は壁面積なので100[m2]

次に熱貫流率Uを求める。

U = 1/(1/h0+l11+l22+l33+ ‥‥‥ +l+1/hi)より

U = 1/(1/8.3+0.020/0.034+0.150/1.6+0.020/1.5+0.008/1.3+1/23)

= 1.16[W/(m2・K)]

次に実行温度差ETDを読み取る

ウレタン20mmコンクリート150mmより壁タイプはⅢ

西側の外壁なので実行温度差の表より3.8 6.4 8.8 12.0 となる。

最悪の条件である12.0[K]を採用する。

qn = A・U・ETD に値をそれぞれ代入すると

qn = 100・1.16・12.0 = 1392[W]

このような計算を各方向の壁と床、天井ごとでしていき、最後に合算して貫流熱負荷の値としています。