ポカホンタスからの大陸開拓のリアルについて

前回ポカホンタスを観た感想を書き始めたらアメリカ大陸の発見以降、西洋人がどのようにその勢力を世界中に拡大していったのかという話に脱線しました。

そのまま話が長くなってしまったので一旦中断、今回はその続きです、もうしばらくお付き合いください。

ポカホンタスがいたのは17世紀初頭

で、ようやくポカホンタスが登場する17世紀の初頭1610年頃の話です。場所はアメリカ大陸のヴァージニア植民地での話になりますが現実においては、ポカホンタスはイギリス人に捕われて人質として過ごしていました。そしてキリスト教へ改宗しイギリス人と結婚したそうです。この結婚は一時的にポウハタン族とイギリス人入植者との間に平和をもたらしたようで美談として現在も語られているようです。この話がポカホンタスの映画の元ネタということだと思います。この辺の話はWikipediaに書いてある話を参考にしました。

ポカホンタスはイギリスに来て夫のジョン・ロルフと共に当時の王室のジェームズ1世に謁見して1年間程度イギリスに住んでいたようです。またアメリカに帰る途中の船で病となり23歳という若さで亡くなってしまいます。天然痘、結核などと言われていますが資料により異なるようです。おそらく西洋人からの感染によるものと思われます。抗体を持たない新大陸の先住民は天然痘やチフスなど西洋人が持っていた感染症で死んでしまう確率は高かったものと思われます。

17世期の初頭はまだ入植者の数がそこまで多くなかったのか、イギリス人入植者を受け入れようと食糧を分け与えるるなどインディアン側の譲歩もあったようなのでポカホンタスのような美談(だいぶ美化されているのかもしれませんが)が生まれる素地はあったようです。

しかし、西洋人はインディアンを人質にとって食糧を要求するなどせっかくの好意を無駄にするようなこともしたようです。仁義というものがまったく通用しない仁義なき闘いですね…こういう負のエピソードは隠されてしまいがちです、全ての西洋人がそうではなかったとも思いますが。

植民地の拡大とアメリカの独立

そして、時は過ぎて18世紀。フランス人と争うようにアメリカ大陸への入植者を増やしていくイギリス人。ヴァージニアを皮切りに現地の先住民を虐殺、略奪し奴隷化していきます。カロライナではインディアン奴隷売買が一大産業となり盛んに行われるようになりました。イギリスはフランスとのアメリカ大陸における利権獲得のための植民地戦争に勝利します。世界中の植民地から得た潤沢な利益によりイギリスは技術革新を成し遂げ産業革命に至ります。

この産業革命は大量生産、大量消費の現代社会の形成の発端となりましたが、それまでよりもさらに多くの資源と製品消費地を必要とするようになります。イギリスはフランスとの植民地戦争には勝利しましたが多額の戦費が財政を圧迫します。このあおりを受けてアメリカ植民地への課税の増税が決まりましたが現地のアメリカ植民地の入植者達はこれを拒否、アメリカ独立戦争が起こります。そして1776年にアメリカは独立宣言をしました。

この頃、アフリカからの南北アメリカへの奴隷貿易が盛んに行われていました。船底にすし詰め状態で奴隷を乗せ糞尿はそのまま垂れ流しの劣悪な環境でした。疫病が流行って亡くなってしまう奴隷もいましたが亡骸は海に捨てられ、船主は積荷の保険金を保険会社に請求するだけでした。また、独立国となったアメリカ合衆国はインディアン保護のために300を超える条約や協定を結びましたが、現地の入植者達はこれをほとんどは守ることはなく民族の破壊は続きました。

19世紀、1820〜30年代に合衆国最高裁判所主席判事ジョン・マーシャルは合衆国憲法に定められた自然権を根拠にインディアンの土地権と自治の資格をある程度認める判決を出しました。しかし当時のジャクソン大統領はこの判決を拒否し、ジョン・マーシャルが判決したのだから彼に判決の執行をさせてみようではないかとうそぶきました。さらにインディアン強制移住法が制定されインディアンは人間の住めないところと言われたミシシッピーの西の保留地へ移住させられます。

こうあれば良かったという理想形

フロンティアの男達はそんな人の住めないと言われている土地でさえ金鉱が発見されるとすぐに奪い取りました。彼らはインディアンの土地を奪って西へ西へ進む、これこそ「マニュフェスト・ディスティニー」つまり天から与えられた明白な使命だと言ってこの行為を正当化しました。

大陸の開拓の歴史をざっくり書きましたが、これらの歴史をある程度知ったうえでポカホンタスを観たときに何を感じるでしょうか。インディアンがイギリス人をはじめとする西洋人に破滅の道をたどらされたことは間違いありません。

ポカホンタスの物語りでは殺されそうになる西洋人のジョン・スミスをポカホンタスが身を投げ打って守り、ポウハタン族の首長は西洋人との争いを避ける決断をしました。そして、西洋人はポウハタン族の土地から去っていきます。

しかし、現実において西洋人はヴァージニアから去っていません。ヴァージニアを起点にインディアンの土地を徹底的に奪い、民族を破壊してきましたから、この物語においてはせめて、こうあれば良かったという理想形を描いたのかもしれません。

ジョン・スミスはポカホンタスに一緒にイギリスにくるようお願いしますが、ポカホンタスはその地に残ると言います。ジョン・スミスとの恋愛よりも家族やその土地とのつながりを優先しています。

これは男女の恋愛ストーリーとしてはハッピーエンドではありませんがリアリティは感じます。ポカホンタスがイギリスに行って幸せに暮らしましたとさ、とはならないしそれをやってしまったら歴史をある程度知っていたらシラけるだけでしょう。そんな(西洋人にとって)都合の良い話ってあるの?ということです。

ポカホンタス2というのもあるようですが、まだ観ていません。ポカホンタスがイギリスに行くというストーリーのようで、これ観てしまったらせっかくの好印象が壊れそうな気がしていますがどうなのでしょうか。また観てしまったら感想書くかもしれません、そしてまた長くなるかも…。

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