今回は大型のショッピングモールなどにはだいたい設置されているスプリンクラー設備について説明します。
消火栓や消火器など他の消火設備と比較してもその初期消火能力は高く資料によって数値は異なりますが初期消火の成功率はおおむね90%というところです。

スプリンクラー設備の概要
スプリンクラー設備の設置基準は消防法施行令第12条〈スプリンクラーに関する基準)に示されています。
おおまかに言ってしまうと消防法施行令別表の(4)項と(6)項イ(1)~(3)に分類される百貨店と入院することのできる病院は3000m2以上、(1)~(3)と(5)項イに分類される劇場、映画館、飲食店、旅館、ホテルは6000m2以上で設置が必要です。
その他に地下階や地下街は1000m2以上で必要、11階以上の階には必要となるなどがありますが詳細は建築関係法令集や建築消防アドバイスで確認してみてください。
ちなみにスプリンクラー設備の設置基準には消火栓設備のような耐火建築物の場合の面積を3倍や2倍で考えることができるような緩和はありません。
スプリンクラー設備の概略図を下に示します。

閉鎖型・湿式の例になります
湿式のスプリンクラー設備のオーソドックスな形になります。
スプリンクラー設備は水源となる水槽、スプリンクラー用のポンプ、呼水槽、圧力チャンバー、制御盤、各階に設置される流水検知装置、スプリンクラーヘッド、末端試験弁、屋上に設置される補助高置水槽などで構成されます。
補助高置水槽は補助加圧ポンプが設置される場合以外は設置します。
スプリンクラー配管の内部を充水しておくために必要になります。
また、ヘッドが感熱開放して(ヒューズがはじけて)しばらくは配管内の水が放出されるので、その減水に対する補助という意味合いで補助水槽が設置されています。
スプリンクラーヘッドから放水が始まると配管内の圧力が低下し規定値以下になると圧力チャンバーと圧力スイッチが反応してポンプが起動します。
スプリンクラー設備の分類
1.閉鎖型・湿式
配管内が常時、充水加圧されておりヘッドが感熱開放すると同時に放水が始まります。

2.閉鎖型・乾式
流水検知装置として乾式弁を設けています。
流水検知装置の二次側は圧縮空気で満たされており、火災時に感熱開放して圧力が下がるとポンプから水が圧送され散水されます。
寒冷地などの凍結の恐れがある地域で採用される方式になります。

3.予作動式
上記の乾式と同様に通常は流水検知装置の二次側は圧縮空気が充填されています。
火災時に火災感知器に連動して予作動式流水検知装置が開き二次側へ送水されます。
続いて、ヘッドが感熱開放すると散水が開始されます。
誤作動による水損事故があってはならない電算室やサーバールームなどに採用されます。
4.開放式
防護対象の区画ごとに一斉開放弁を設け、その一時側は充水加圧されています。
火災時にこの一斉開放弁を開きそれ以降の全てのヘッドから散水する多量放出方式となります。
開放型は舞台部などに採用されます。
スプリンクラーヘッドの配置
スプリンクラーヘッドの水平方向0.3mおよび下方0.45m以内にものがある場合は散水障害とみなされるためこの範囲には何もないようにしなければなりません。

スプリンクラーヘッドは下記表の半径の円で建物内を包含できるように配置します。

円と円は必ず重なり合わせて散水範囲から外れる箇所が無いように配置します。
スプリンクラーヘッドの性能
スプリンクラーヘッドの放水圧力は0.1Mpa以上とし放水量は一般のヘッドで80L/minとします。
事務室などの一般室には表示温度79℃未満のヘッドで最高周囲温度は39℃の設定になります。
厨房や湯沸し室には表示温度79℃以上121℃未満の周囲温度39℃以上64℃未満の設定のヘッドを取り付けます。
まだ話すべき論点はありますがスプリンクラーについてはいろいろと規定や種類が多くちょっと書ききれないのでこの辺にしておきます。
たまに既存利用の改修現場でスプリンクラーの配管内に充水されたまま工事を進める現場があります。
数年に一度、ヘッドにハンマーが当たってしまったり冷媒配管のロウ付けで使用するトーチの火で感熱開放してしまい水浸しになる現場があります。
80L/minというのは流しの水栓5個をほぼ全開したのと同じくらいの水量ですからあっという間に床一面水たまり状態になります。
スプリンクラーからの放水をくらった職人さんは一瞬で全身ずぶ濡れです。
置いてある資材への影響や下階への漏水による営業補償など大きな損害を出す可能性があります。
配管内に充水したまま作業をする場合はスプリンクラー注意などの札をヘッドから下げるなどして作業する際に近づかないように察知できるような対策が必要になります。