空調熱負荷計算の中で方角による差がもっとも顕著に現れるのがこの窓ガラスを通ってくる透過日射熱負荷です。
夏場に西側の窓まわりが異様に暑くなるのはこの透過日射熱の影響によるものです。

透過日射熱とは何なのか
室外から室内に侵入する熱は以下の3つに分けて考えることができます。
1.ガラス面の内外温度差による貫流により侵入する熱
2.日射のうち一度ガラスに吸収されガラス温度を高めたあと対流と放射に分かれて侵入する熱
3.ガラスを透過して直接侵入する熱
この3つのうち、2と3を合わせた熱を透過日射熱と呼んでいます。

貫流熱負荷は外部と内部の温度差によって発生するものですが、日射は太陽からの電磁波が直接物体に作用して温度を上昇させます。
太陽光をルーバーなどで遮ることでその影響を抑えることができます。
透過日射熱負荷の計算式
透過日射熱負荷の計算式は以下になります
qG = A・Sn・SC
qG: 透過日射熱量[W]
A: 窓ガラス面積[m2]
Sn:窓ガラスからの標準日射熱取得[W/m2]
SC: 遮蔽係数
日射熱取得のデータを以下に示します。

空気調和設備計画設計の実務の知識より
窓の遮蔽係数などの資料を以下に示します。

気調和設備計画設計の実務の知識より
簡単にですが計算例を示します。
東京で時刻12時、南面の窓ガラスで透明フロートガラス8.0mm明色ブラインド、ガラス面積A=17.4m2の場合
Sn:ガラス窓標準日射熱取得の表より180[W/m2]
SC: 遮蔽係数は資料から読み取って0.48
各数値を qG = A・Sn・SCに代入すると
qG = 17.4×180×0.48=1503.4[W]
西の窓ガラスからの透過日射熱には気を付けたほうがよい
日射熱取得の表を見てわかる通り、西面と東面の直達成分が大きいことがわかります。
これは日が沈む時間帯と日が昇る時間帯に日射が窓ガラスに対して垂直に射し込むからです。
そしてたいてい問題になるのは西の窓ガラスからの日射です。
東側があまり問題にならないのは朝から午前中にかけてまだ空気が温まりきらない時間帯であることや、朝早い時間は出勤している人があまりいないから、など問題になりにくい要素があります。
西側から日射が射した場合、夏場14時くらいから16時にかけて窓際の温度はかなりの高温になっていき日が沈むまでその状態が続きます。
また躯体や部屋内の材料にこもった熱が室内に放出されるその影響によって暑さが夜まで続いたりすることもあり東側に比較して問題になることが非常に多いです。
ちなみにガラス窓標準日射熱取得の値は東京夏期、南面12時で180[w/m2]に対して西面16時で609[w/m2]なので西面の日射の値の大きさがわかります。
過去に西側の窓ガラスまわりの客席が夏場は暑くて座っていられないというクレームに何度か対応したことがあります。
西の窓際に温湿度計を置いて数値を確認したところ14時ころから温度が上昇し始めて15時から16時のピークにかけて40℃~45℃になる席もありとてもそこに座って過ごすことのできる環境ではありません。
西に窓面が多くある場合は必ず、ブラインドやロールカーテンの設置を予め提案しておかなければいけません。
ロールカーテンを設置し日陰の状態にして、店内空調をしっかり効かせて温度を計測したら30℃以下になり、とりあえず席を使用できる状態にはなったのでお客様に納得していただけましたが。
建築士の製図試験でも西側の日射を考慮して窓の外側に鉛直ルーバーを描き込ませる問題があります。

上の写真のように西側全面に外付けで縦方向のルーバーがあるのが理想的ですが、なかなかこのような形で計画設計が進められる案件はないのが現実です。
その建物や状況に応じてでき得る限りで日射の対策を心がけたいです。