コロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)は日本では2類に分類される指定感染症ですが現在は収束しています。
2002年の11月に中国の広東省で初の感染者が確認されてから2003年9月の収束まで30カ国で8098人の感染者と774人の死亡者が確認されました。
感染が広がる中で香港の高層マンションで排水菅の不備により321人が感染したという事例がありますが排水管の不備とはいったいどういうことなのでしょうか。

便器から飛沫が飛ぶ可能性
大便器まわりにウイルスが多く存在するという話がありますが、あながち嘘でもなく、ダイヤモンドプリンセス号においてもトイレ周辺から新型コロナウイルスが多数検出されたという報告があったようです。
香港城市大学の研究によればトイレの水を流す際に1回あたり最大80万個のウイルスを含む飛沫が空中に吹き上がるとのこと。新型コロナトイレの糞口感染対策が盲点
つまり排水管に不備などなくとも飛沫は飛んでいるということですがSARSの感染拡大のひとつの原因となった高層マンションでの排水管の不備はさらに多くの飛沫を飛ばす状態になっていた可能性があります。
このSARSの話は「感染症の世界史」という本にあります。
マンションの排水管の不備で(感染源となった)男性の飛沫や糞沫に含まれていたウイルスがトイレの換気扇に吸い上げられてマンション内に拡散した可能性が高い、という記載です。
その事実は確かに書かれていますが排水管の不備というのが具体的にどのようなことだったのかまでは残念ながら書いてありません。
ネットで調べたら何か出てくるかと思いましたが探し方も悪かったのかもしれませんが何も出てきません。
そこで、どのような状態だったことが考えられるかのか予想してみました。
排水管内からガスが逆流か
排水は立管から各階で枝配管を分岐させる形で配管します。
例えば最上階のトイレからSARSに汚染された汚物が流れたとした場合、排水立管が全体的に汚染されます。
そして、ここがポイントだと思っていますが、排気のための換気扇を作動させたのはよいが、給気口がない、あるいは給気口はあるが何らかの理由で閉鎖している状態だった場合、室内およびトイレ内は負圧になります。
室内およびトイレ内が負圧の状態になると排水管内のガスを引っ張って吸い上げてしまうことがあります。

排水管内ガスが移動するイメージ
さらに大便器のトラップの封水が便器の不良などで破られ易い状態だったとしたら大便器から排水管内のウイルスを含んだ飛沫が大量に逆流してくる可能性はあります。
321人の感染者を出したという事実を見ると、このような不具合が起こっていたのではないかということが予想されます。
現在の日本国内のマンションの計画はそこまで杜撰なものはないので同じようなことが起きる可能性は低いですが、施工時に室内やトイレ内が負圧になり過ぎないか、各器具のトラップは問題なく機能するかなどは確認しておく必要があります。
たとえSARSウイルスの飛沫でなくとも、大便器からかなりの量の飛沫が飛んでくるとしたら、それはよくないので…。