空調や換気のためのダクトサイズや送風機の選定をする際に静圧を考慮しなければなりません。
静圧は配管で言うところの圧力損失のようなものです。
店舗の設備設計においては静圧計算書の提出を求められることはあまりないのですが例えば設計図書で設定された風量が出ない場合などは静圧が大き過ぎないか確認しなければならなくなります。
後から計算したのでは遅いので本来は設計時に計算しながらダクトサイズ選定していくのが理想ですが、まずは1.0Pa/mという静圧の目安を守って設計していればまずトラブルになることはありません。
今回は丸ダクトの簡易的な静圧計算方法について説明してきます。

静圧の簡易的な計算方法
下図のダクトサイズと静圧を求めます。

最遠のルートであるA-H間を計算していくことにします。
単位あたりの静圧は1.0Pa/mとして下に示したダクト流量線図を利用してダクトサイズを選定します。

選定したサイズを以下に示すと
A-C間 1800m3/h 350Φ
C-D間 1200m3/h 300Φ
D-F間 600m3/h 250Φ
F-H間 300m3/h 175Φ
となります。
次に静圧の計算ですが、エルボやチーズ部分の局部抵抗については簡易的にダクトルート全長の50%分とします、単純な経路の場合はこのように計算してかまいません。
ダクトルート全長を求めると
10+10+6+6+10+6+1=49m
よってダクトルート全体の静圧は
1.0Pa/m × (49m + 49m × 0.5)+ 6Pa =79.5Pa となります。
数字上静圧が大きくなくても風量確保困難の場合がある
静圧計算をいくらしっかりしても風量が確保できない場合があります。
と言うのは、ダクトルートの途中にダクトサイズが細すぎる部分があると、抵抗がかかり過ぎてその先は風量が全く確保できないということがあるからです。
例えば1400m3/hの風量が通過するメインダクトのサイズを350Φで施工するとしてこのダクトを途中で200Φに縮小するとします。
350Φのときは長さ単位あたり1.0Pa/mの静圧ですが200Φの場合は10Pa/mと静圧は10倍となります。
200Φの部分が2mあってまた350Φにもどせば計算上はその2m分で20Paを足せばいいのだから大丈夫だろう、という考えは間違いです。
ダクトルートの途中で急激にサイズを縮小した場合は、縮小部分で抵抗が大きくなり過ぎてその先へ空気がうまく搬送されなくなります。
つまり、誤って途中でおかしなダクトサイズ選定をしてしまうと計算上はそこまで静圧の数値は大きくならないが風量が確保できないということが起こり得るということです。
経験値の浅い設計者が以外とこのミスをしてしまいます、どこまでサイズを絞っても大丈夫そうかという勘が働かないからです。
まずは1.0Pa/mを目安に設計することです。
ちなみに低圧ダクトは0.8〜1.5Pa/mで設計することになっています。
なのですが、店舗の換気設備を設計する場合は、納まりが厳しい現場が多くダクトサイズを大きく取れないことが多いので1.5〜2.0Pa/mまでは許容範囲として計算しながらサイズ選定および静圧計算していけばよいです。
もし、その現場や施設において静圧に関する設計基準がある場合はそちらを順守してください。