騒音を低減させる方法についてはいろいろあります。
騒音源と影響点の間に壁をたてて遮る、総音源となるダクト部材に消音材を取り付けて騒音を低減させるなど。
今回は遮音、回折、吸音について考察してみます。
遮音性能は透過損失で評価する
ある材料に対して入射した音のエネルギーがそれを通過後にどれくらい減衰するかを表したものが透過損失になります。

透過損失は一般的に音が入射する壁などの材料の質量が大きいほど大きくなります。
また、高周波の音ほど透過損失は大きくなり低い周波数の音ほど小さくなる、つまり低音になればなるほど透過し易くなります。
透過損失は周波数によって異なりますが平均透過損失を目安にすればよいです。
透過損失別 | 構造体種類 |
---|---|
透過損失25~30dB | ・ガラス6mm ・コンクリートブロック100mm |
透過損失30~35dB | ・石膏ボード両面12mm ・ガラス12mm ・軽量ブロック+片面プラスター |
透過損失35~40dB | ・軽量ブロック+両面プラスター |
透過損失40~45dB | ・石膏ボード両面12mm2枚貼り ・コンクリートブロック100mm +両面プラスター |
透過損失45~50dB | ・石膏ボード15mm+GW25mm 両面独立間柱 |
遮音する構造体が単層の場合はある特定の周波数において減衰効果が落ちる部分が存在します。
これをコインシデンス効果と呼んでいます。
単層ではどうしてもコインシデンス効果による遮音性能が劣る周波数帯が存在するため、異なる材料で複層にするなどを考慮して計画するのが望ましいと言えます。
回折減衰は経路差から求める
騒音源と影響点との間に遮音壁などを設ける場合の減衰値については騒音源から遮音壁の頂部までの距離A[m]と遮音壁頂部から影響点までの距離B[m]の和と騒音源から影響点までの直線距離d[m]の差が大きいほど大きくなります。


縦軸:騒音減衰値[dB] 横軸:経路差(A+B)-d[m]
減衰値については上記の前川チャートを用いて簡便に求めることができます。
吸音率は反射しないエネルギーの割合
ある材料に入射する音のエネルギーを1.0として、反射した音のエネルギーの割合が0.2だった場合材料に吸収されたエネルギーと透過したエネルギーの合計は0.8、この0.8が吸音率になります。

吸音率=(Ei-Er) / Ei という式が成り立ちます。
吸音材に入射した音のエネルギーが吸音材に作用して熱エネルギーに変換されるのが音エネルギーの吸収になります。
気をつけなければならないのは吸音材は吸音はしますが遮音の効果はまったく別物ということです。
例えば、吸音率1.0の状態は騒音源と影響点との間になにもない状態ということになりますがまったく遮音効果はありません、というかあるはずがないです。
外部からの音を低下させる、あるいは内部の音を外にあまり漏らさないようにするには吸音材に合わせて遮音材も考慮しなければまりません。
では実際の騒音対策はどうするのか?
と、ここまで遮音や吸音など騒音対策についての基本的な知識を書いてみたわけですが、じゃあ実際どうやって騒音の対策をするの?という話ですよね。
このような知識が大事なのはわかるけど知識だけではなんの解決にもつながらない、確かにその通りです。
過去に何度も騒音クレームをいただいてきた経験からの話をしておくと、騒音源となる室外機やファンを移設したという解決策がかなり多かったです。
1Fに設置した室外機の音がうるさいということで屋上まで移設したり、店内の天井内のシロッコファンがうるさいので屋上までダクトを延長して屋上設置にしてみたり…追加工事費用を満額はもらえないパターンがほぼ100%なのですが、やるしかないのでとにかく解決にむけて移設工事をするということになります。
お金の話は解決した後でお客様と交渉です。
その他に屋上に設置した室外機の周りに専門業者に依頼して防音壁を設置してもらって解決したり、発電機の騒音を遮音シートで囲ってもらって抑えたりなどいろいろな対策をしてきました。
次回はその具体的な内容まで紹介できればと思っています!