純文学というものをあまり読むことがなく、作家が繰り出す独特の言い回しなど理解しながら読むのがなかなか難しく感じたりもしますが、カミュのペストは読後感がさわやかでした。

都市封鎖の中で戦う人々
1940年代のフランス領アルジェリアのオランという都市が舞台です。読み始めたときは実話を元にしているかと思いましたがこの話は全編フィクションです。
ペストに襲われたオラン市は封鎖されます。家族や恋人との突然の別離を宣告され、日々死者が増加する中、希望を見失ってしまい自暴自棄になってもおかしくない状況の中で戦う人々の姿には凛々しさを感じます。
印象に強く残ったのは新聞記者ランベールの変化です。市が閉鎖された当初はどうやってオラン市から抜け出すかだけを考えている人物でした。彼はもとも市の外に住んでいて恋人と別離状態になってしまったため、なんとしても帰りたいと思うのは自然なことです。
公心を優先させたランベール
ランベールは市の外へ出られるよう便宜をはかってくれるという人物に何度も約束をすっぽかされて結局、市の外に出られないことを悟った時に主人公の医師であるリウー達の活動、ペストに罹ってしまった人たちの手当てを手伝うための保健隊と行動を共にすることを決意します。リウーを手伝ううちに彼の考えは変化していきます。彼の中にあった公心が明らかに大きな存在となっていく様が読み取れます。もし彼と同じ境遇になった時に彼と同じセリフが言えるかどうか…。
「もし自分が発って行ったらきっと恥ずかしい気がすることだろう。そんな気持ちがあっては向こうに残してきた彼女を愛するのに邪魔になるのに違いないのだ」
「自分一人が幸福になることは、恥ずべきことかもしれないんです。」
「僕はこれまでずっとこの町(オラン)には無縁の人間だ、自分には、あなたがたはなんのかかわりもないと、そう思っていました。ところが、現に見たとおりのものを見てしまった今では、もう確かに僕はこの町の人間です、自分でそれを望もうと望むまいと。この事件はわれわれみんなに関係のあることです。」
キン肉マンで悪魔超人が正義超人に鞍替えした時に、無性に嬉しくなるあの感じを思い出してしまいました。バッファローマンが正義超人に??のような。
その他にも、この人たちカッコいいなと思える人物、これはイカんなと思える人物、いろいろな個性を持つ人たちが登場する群像劇となっています。
次回ももう少し「ペスト」について語らせてください。