今回は給水配管の配管径はどのように考えて決定するかを説明します。
わかりにくい部分もあるので私も苦手意識がありますが設備屋さんとしては避けて通れないテーマです。長めになりそうですが、なるべくわかりやすく説明していきます。
まず許容摩擦損失を求める
まず2F建ての建築物のイメージでの給水配管のモデルを以下に示します。
給排水・衛生設備計画設計の実務の知識を参考にしていますが、現在では採用が避けられがちな高架水槽の計算がモデルになっています。
たぶん、話をわかりやすくするための高架水槽のモデルだと思いますがそれでも教科書を読んで一回で理解するのは難しいので詳細の説明を追加していきます。

図示された給水配管の配管径を求めていきますが、まず許容摩擦損失の公式を示しておきます。
R=((H-P/K(L+l))×1000
R:単位長さあたりの許容摩擦損失(mmAq/m)
H:静水頭に相当する水圧(mAq)
P:器具の水圧または標準水圧(mAq)
K:局部損失を考慮した管路係数(2.0~3.0)
L:主管の直管長(m)
l:枝管の直管長(m)
高架水槽で給水する場合、最も条件が悪いのは最上階の最遠の器具です。
上記モデルの場合はGの大便器洗浄弁が最も条件が悪い水が出にくい器具です。
このGすなわち2Fの大便器洗浄弁までの配管径を考えるための許容摩擦損失を計算します。
G点の静水頭:HG=9.5+1.5-0.6-0.6=9.8mAq=96.1kPa
…9.8mは高架水槽からGまでの落差を意味します。最後にPaの単位に換算し直しています。
G点の必要静水頭:PG=7.0mAq=68.6kPa
…これは大便器洗浄弁自体の摩擦損失です。器具によって任意の摩擦損失になります、ここでは7.0mAqとするということです。
A-B間の距離 LAB=1+3+9.5=13.5m
B-G間の距離 LBG=0.5+1.5+1.5+1.5+1.0+1.0+1.5+1.0+0.6+0.5+0.6=11.2m
許容摩擦損失Rは
R=((HG-PG) / K(LAB+LBG) )×1000mmAq /m
で表されるので上記の数値をそれぞれ代入して
=((9.8-7.0)/2(13.5+11.2))×1000
=56mmAq/m = 549Pa/m これが2F部分の許容摩擦損失です。
同様に1F部分の許容摩擦損失を計算します。
R=((9.8+4.5-7.0)/2(13.5+4.5+11.2))×1000
=125mmAq=1226Pa/m これが1F部分の許容摩擦損失です。
瞬間最大流量を求めてから流量線図で配管径を選定する
次に瞬間最大流量を求めます。
これについては給水の負荷流量計算を参照してください。
2FのG-F間は110L/minになります。
この区間の配管径を流量線図で判断します。

2Fの許容摩擦損失は594Pa/mという計算結果だったので摩擦損失はそれ以下になる範囲で選定していきます。
110L/minの位置から右にまっすぐ線を伸ばして配管径50Aとぶつかったところのまっすぐ下をみていくと235Pa/mです(ウィリアム・ヘーゼンの公式より数値を求められますがここでは詳細を省略)。
そして流速は2.0m/sを超えないように選定します。これは大事です。
給水配管の流速はおおよそ1.0~2.0m/sの間で選定するというのは覚えておくとよいです。
594Pa/mなので配管径50Aは問題なし、ということになります。
1Fについては1226Pa/m以下の範囲でみていきます。
計算と配管選定の結果を以下の表に示しますので流量線図で間違いがないか確認してみてください。


1Fの摩擦損失で1箇所だけ許容摩擦損失を超えた1275Pa/mでの選定があります、水色で網がけしたところになります。
超えたらダメなのでは?と私も思いましたが流速が2.0m/sを超えていなければ多少許容摩擦損失は超えていても確かに大勢に影響はないのでこのような結果を教科書でも示しているのだと思います。
さらに言ってしまうとポンプで圧送する場合は2m/sを超えた設計となっている現場はかなりあります。
許容摩擦損失はあくまで目安であり、水がある程度の勢いで水栓などから出て問題なく使用できればそれでよいということです。
給水圧が足りなかった苦い経験
とは言っても、やはり基本にはある程度忠実に考えて設計や計画をしないと思わぬトラブルがおきるので注意が必要です。
まだ3年目か4年目の頃だったと思いますが既存で屋上に高架水槽が設置されている現場で最上階にお客様用のトイレを作った現場でのこと。
大便器から水が出ないと騒ぎになっだことがあります。
高架水槽との落差が無さすぎて圧力が確保できなかったのです。
大便器はサティスだったと思いますが最低使用圧力が静水圧で150kPaは必要です。
通常の考え方で高架水槽から最上階大便器までの落差は15mは必要ということです。
落差も足りないことに加えて配管長もやや長く分岐が多かったので摩擦損失も大きかったのだと思います。
新装開店するお店でトイレが使えないのはあり得ない、ということで急遽小さい加圧ポンプを発注して最上階のみ別系統で給水を配管し直して圧送するという処置をとりました。
これ言葉で書くと数行ですがお客様への説明から計画し直しの図面描いて承認とってとかなり大変な騒ぎでしたよ…。
しかも設計施工での受注だったので追加工事として認められることもなく利益を削って対応したという現場でした。
勉強にはなりましたが残せるはずの利益が残せなかったのは痛かったです。
と言うか、高架水槽は屋上に架台つけて高さ確保しないとダメなのではないか?と後で気づきましたが。
既存の利用者は最上階にトイレは設置していなかったのかもしれません。
高架水槽の現場では圧力が足りたないという事態がおきやすいので設備屋のみなさん気をつけてください! そんなこと知ってるか…。
やっと配管径まで選定することができました…次の衛生設備の回ではポンプの選定について説明したいと思っています!