消火栓用の消火ポンプの揚程計算は消防設備士甲種1類の試験で必ず問われます。消防設備士の方は消火栓やスプリンクラー設備に関する揚程計算をして届出をしているのでこの計算に慣れている方もいると思います。
考え方は以前のブログ給水ポンプの選定についてで紹介したものと基本的には同じです。
今回も計算例を示しながら説明していきます。

消火ポンプ揚程の計算式
消火ポンプの全揚程については下記に示す式で求めます。
H=h1+h2+h3+h4
H:ポンプの全揚程[m]
h1:消火栓ホースの摩擦損失m]
h2:配管の摩擦損失水頭[m]
h3:落差[m]
h4:ノズル放水圧力に相当する水頭[m]
計算用の系統図を以下に示します。

まずh1について、消火栓用ホースの揚程となります。1号消火栓の場合はホース長さ30mで単位あたり水頭が0.12m/mより0.12m/m×30m=3.6mとなります。2号消火栓の場合はメーカーやホースの材質により摩擦損失が異なるため確認が必要です。
h2は配管の摩擦損失になるのでちょっと別で計算が必要です。後で計算表で計算例を示します。
h3は落差、テスト弁からフート弁までの高さとなります。細かいことを言うとフート弁のシート面(内部の逆止弁が閉まった時に接する座面)までの高さを取ります。上記、計算用系統図の場合は
1+4+4+4+4.5+4.5+1.5=23.5[m] となります。
h4はノズル放水圧力に相当する水頭で1号消火栓、簡易操作性1号消火栓及び2号消火栓(ロ)の場合は0.17Mpa以上なので17m、2号消火栓(イ)は0.25Mpaで25mとなります。
h2摩擦損失水頭の計算
h2の配管の摩擦損失水頭だけ、やや計算が面倒なので別で計算していきます。
まず各継手の個数と形状を拾って、「継手類の相当管長」(直管とみなした時の長さ)の表を確認していきます。ちなみにテスト弁は表にありませんが相当長6mとしておきます。
65Aの90°エルボは表より相当長2mと読み取れます。その他の継手も表から拾っていきます。
あとは、直管部の長さも拾って配管径別で継手の相当長と足し算していきます。
その長さに「配管1mあたりの摩擦損失水頭」の表の数字を掛算すれば損失水頭が出ます。
これらの計算結果は表にまとめていくとわかりやすいです。まとめた表が「h2摩擦損失水頭計算書の例」になります。
種類 | 25A | 32A | 40A | 50A | 65A | 80A | 100A | 125A | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ねじ込み | 45°エルボ | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | 1.5 | 1.8 |
90°エルボ | 0.8 | 1.1 | 1.3 | 1.6 | 2.0 | 2.4 | 3.2 | 3.9 | |
リタンベンド180° | 2.0 | 2.6 | 3.0 | 3.9 | 5.0 | 5.9 | 7.7 | 9.6 | |
チーズまたはクロス | 1.7 | 2.2 | 2.5 | 3.2 | 4.1 | 4.9 | 6.3 | 7.9 | |
溶接式 | 45°エルボ | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.7 | 0.8 |
90°エルボ ショート | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.9 | 1.1 | 1.3 | 1.7 | 2.1 | |
90°エルボロング | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.8 | 1.0 | 1.3 | 1.6 | |
チーズまたはクロス | 1.3 | 1.6 | 1.9 | 2.4 | 3.1 | 3.6 | 4.7 | 5.9 | |
バルブル類 | 仕切弁 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.7 | 0.8 |
玉形弁 | 9.2 | 11.9 | 13.9 | 17.6 | 22.6 | 26.9 | 35.1 | 43.6 | |
アングル弁 | 4.6 | 6.0 | 7.0 | 8.9 | 11.3 | 13.5 | 17.6 | 21.9 | |
逆止弁(スイング) | 2.3 | 3.0 | 3.5 | 4.4 | 5.6 | 6.7 | 8.7 | 10.9 | |
フート弁 | 2.3 | 3.0 | 3.5 | 4.4 | 5.6 | 6.7 | 8.7 | 10.9 |
流量[L/min] | 25A | 32A | 40A | 50A | 65A |
---|---|---|---|---|---|
70 | 0.2215 | 0.0633 | 0.0300 | 0.0093 | |
90 | 0.3526 | 0.1007 | 0.0478 | 0.0148 | |
140 | 0.2280 | 0.1083 | 0.0336 | 0.0100 | |
150 | 0.1230 | 0.0382 | 0.0113 | ||
180 | 0.1724 | 0.0535 | 0.0159 | ||
300 | 0.1376 | 0.0408 |

管径別で算出した損失水頭を全て足算するとh2=2.41[m] という計算結果が得られます。
最後にh1からh4までを足算、そして選定図からポンプ選定
h1からh4までの数値を全て足算していきます。
H=h1+h2+h3+h4
=3.6+2.41+23.5+17=46.51[m]
ポンプ吐出量は1号消火栓は2箇所同時開放までを考慮するので150×2=300[L/min] です。
吐出流量300[L/min]で揚程46.51[m]の機器をテラルの消火ポンプから選定してみます。
選定図に上記条件を赤いラインで書き込んだのが下図。縦と横の線が交わったところのポンプを選んで
NXF-50×50-3-53.7-e あるいは NXF-65×50-3-55.5-e が選定されます。

消火ポンプの揚程計算については計算の手順をなんとなく覚えておくとよいと思います。消防設備士1類の試験勉強をしている方がいたら揚程計算の問題は必ず出てくるので参考にしてみてください!